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高校生達のかなりどうでもいい日常  作者: はんぺん
四月、卯月、April…
8/240

8.絶対の真理

今回は文字数がいつもの半分程です。

 高み。それを目指すのはもはや人類の性だと、僕は思う。他の人よりも少しでも上へ行こうとする。その“高み”とは、どれだけ上り詰めても見えることは無いだろう。しかしそれでもなお、人は高みを目指そうとする。


 それは僕も例外ではない。僕も同じ。


 僕だって“上”を目指している。常に、更なる高みへ向かおうと尽力している。


 僕が目指すはあの坂の向こう側。


 僕は急ぐ。誰にも先を越されないように。

 僕は急ぐ。全力で、息を切らしながら。


 僕は急ぐ。…否、急がなければならない。僕にはもう、時間がないのだ。


 だから、急ぐ。



 人は、言う。


 そんなに急いで何処へ行くと。


 決まっている。あの場所だ。僕には、僕達には、あの場所しかないのだ。



 人は、言う。


 急がば回れと。


 無茶を言うな。ここ以外に、道などないのだ。



 僕は、あの場所を目指す。

 僕達に、それ以外を求めても、それは“愚”としか言えない。


 それほどまでに、僕達はあの場所に執着している。


 それだけのものが、あの場所にはあるから。


 だから、僕はあの高みを目指し、険しい坂をかけ上がる。


 例え他人からとやかく言われても、ひたすらにあの場所へと向かう。


 例えあの場所へたどり着く過程に、大きな苦難が待ち受けていようとも。



 僕が悪戦苦闘していると、僕の横を一人の男が駆け抜けてゆく。


 彼はさして疲れた顔をしておらず、すっと走って行った。


 それが誰なのか確かめたくて、僕は目を凝らす。



 それは―――槙―――だった。



 普段の彼からは到底予想できないような、抜群に高い運動神経。


 そしてあれは、槙が僕達と談笑している時の顔。


 槙にとって、この程度の坂など全力を出すに値しないのだろう。


 僕がそう思案しているうちに、槙は更に遠のいてゆく。


 追いかけたい。追い付きたい。いつものように笑い合いたい。


 この苦難の嵐の中、ひとつだけ見つけた友達(オアシス)


 しかし、槙はなお速さを落とさない。遂には、見えなくなってしまった。


 

 追いかけよう。追い付いて、あの上で槙に会おう。


 

 ―――僕は走る。あの高みを目指して。


 ――あと少し、あと少しで今見える一番の高みへたどり着く。


 あと少し、あと少し、あと少し―――


 不意に、足が楽になる。

 足下へ目をやると、そこはもう坂ではなかった。


 たどり着いた。遂にここへ来た。


 目を前へ戻すと、そこには微笑をたたえた槙が静かに立っていた。


 そして、それは僕が自転車で坂を登りきった瞬間だった―――。


 さて、学校までもう少しだ。



樂「――っていう夢を見たんだ」


槙「起きろ」

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