77.誰か僕に猫を分けてください
※無理です
「ちっちっちっちっち………」
「…………」
放課後。懇談会の期間なので2時過ぎ。
僕は例の場所で猫を触ろうと奮闘していた。
「ちちちちちちちち……」
「…………」
かれこれ5分はこうして猫じゃらしを振り続けている(よく逃げなかったものだ)。探してみたら大量に生えていたのを一本失敬してきたものだ。……いつも思うんだけど、これなんでこんな形してるの?何が目的で?
「ちちちちちちちち」
「…………」
まぁ考えても仕方ないか。僕には分からないし。
それはともかく、猫はもうすでに前足を引いて逃げる体勢なのだ。どう見ても僕の事睨んでるし。
「そんな目で睨まなくても良いじゃないか……」
「…………」
……声に出ちゃったよ。うぅ、猫がどんどん遠ざかっていく……。
ところで思ったんだけど、この猫性別どっちだろう?槙に聞いたら分かるかな?
猫が更に一歩後退りする。警戒心が露骨過ぎて悲しい。なんで槙はあんなに懐かれているんだろうか?刷り込みか?刷り込みなのか?
「――」
「あっ」
猫が僕と反対側へ向かって走り出した。どうして動物はあんなに走るのが速いのだろう。四足歩行が関係してるのかな?
と、半ば諦め気味で思案していると猫の前方に人影が見える。槙かな?
「あ、猫」
「――!?」
柚だったようだ。猫は一旦急ブレーキをかけてから左側へ走り出した。明らかに逃げている。
「……行っちゃった」
「柚、半日だったの?」
「あ、樂。ボクのところは今日から夏休みだよ?」
「早いね」
「木工も金曜から夏休みだろう?そんなに変わらないさ」
「いや三日違うよね」
名残惜しそうに猫を見送っていた柚に話しかける。今日から夏休みとか羨ましい……。僕にも分けてくれ!……って、ムチャな話か……。
手に持った猫じゃらしを投げ捨てる。もういらんこんなモノ。ゴミだ。自分でむしっておいてアレだけど……。
「それにしても、どうしてあの猫は槙にばっかり懐くのかな?」
「刷り込みなのかなぁ……槙はかなり前からここに来てたらしいし」
「いや、もしかしたら槙の身体はマタタビの匂いがするのかもしれない……!」
「それは……可能性としては充分あり得るね」
「ねぇよ。俺はマタタビ喰わされて育ったんか」
「あ、槙おはよう」
「寝てねぇし昼過ぎだ」
肩に猫を乗せた槙が歩いてきた。噂をすれば何とやらってやつ?
「ていうかお前ら何したんだ」
「え?」
「コイツ、俺を見るなり飛びついてきたぞ。飛びついた勢いでそのまま登ってくるし、肩で落ち着くし。飛びついてくるなんて尋常じゃないぞ」
槙が手を猫の目の前に持っていくと、猫はてしてしと軽い猫パンチを繰り出して遊び始める。くそぅ、羨ましい……。
「……どうにか触れないか、猫じゃらしで釣ろうと奮闘してた」
「ボクは猫が逃げる先に偶然立ってた」
「なんだその程度か。コイツも臆病なんだな」
猫が槙の指先を甘噛みし始めた。くっ……。
というか槙は臆病だけで片付けようとしているが、多分別の要因もあると思うんだ。槙とか。
「それは良いけど、その引っ掻き傷はどうしたんだい?」
「ん?」
柚の視線を追うと、槙の左腕に長めの引っ掻き傷が見えた。
「あぁ、これか?昨日引っ掻かれた」
「え?なんで?」
「いや、昨日無性に猫もふりたくなってな。ここに来てしつこく撫でまわしてたら嫌がられた」
「えっと……うん」
「それは流石にね……」
「まぁ猫も変わらず接してくれるし、俺は気にしてない!」
「それはボク達への嫌味かな?」
「くそぅ……」
槙なんてそのまま猫に嫌われてれば良いのに……。
いや、不謹慎だけどさ。
樂「ところで槙、この猫性別どっち?」
槙「知らん」
樂「えぇ!?なんで!?」
槙「なんか失礼かなと思って」




