42.その猫を僕に分けろ
猫は分割できません
「うーん……涼しい……」
放課後。例の場所。
の、建物の中。なう。極めて快適な温度が保たれているこの室内で僕は仰向けに転がっていた。
「槙ー……は、外だっけ。元気だなぁ」
「別に元気な訳じゃないがな」
「うわぁビックリした!」
部屋の入り口(ドアは開けっ放し)から槙が音も無く入ってくる。例によって例の如く猫を抱えている。まったく羨ましい……。
「お前がなつかれないのは嫌われるような事ばっかしてるせいじゃないのか?」
「読心!?」
「コイツだって意味も無く嫌ってる訳じゃないだろうし」
「……だとしたらただの生理的嫌悪だよね」
「もしくは人見知り」
槙は部屋の隅に座る。猫は槙に抱かれてくつろぎながらも僕を警戒している。どんだけ信用無いのさ、僕は……。
「見掛ける度に追いかけ回されてたら信用なんて消え失せるだろうな」
「な、なんでそれを!?」
「猫に聞いた」
「嘘っ!?」
「嘘に決まってんだろ。何となくやってそうな気がしただけだ」
「気がしただけで正確に当てられると僕も困るんだけど」
「そんなに事情が複雑な訳でもないだろ。まだ予想の範囲内だよ」
……微妙だ。判断が微妙だ。槙はそもそも読心術が使える。しかもかなりの精度。この読心の対象が人間だけとは限らない。猫にも使えるかもしれないのだ。だとすると……。
「つまり槙は猫の心を読んで、そこから猫の嗜好を考えて、猫に懐かれるように行動していたという事だな!?」
「なんでいきなりそんな話に飛躍した」
「にゃー」
「だって槙には読心術が使えるじゃないか!それを使って猫を手懐けたんだろ!」
「ねぇよ」
「あれ、でも槙が読心術を修得したのは最近のはず……それだと、時間的なパラドックスが」
「……猫が寝始めてる」
「じゃあ槙は最近読心術が使えるようになった訳じゃなくて、読心術が使えるのを今まで隠してたんだな!?」
「お前はどんだけ俺をエスパーにしたいんだ?」
君は元々エスパーだろう!柚も!
「柚は知らんが俺は違うぞ」
「じゃあなんで猫がそんなに懐いてるんだ!」
「猫に懐かれてる人はみんなエスパーだとでも?」
「うっ……」
「いや弱すぎだろ。簡単に論破されてるじゃねぇか」
「……じゃあなんで懐いてるのさ」
「刷り込みじゃないか?多分。コイツのちっちゃい頃に先代は亡くなってるし」
「……まぁ良いや。槙がエスパーだとかどうでも。問い詰めても何の得にもならないし」
「そうだけど、なんかイラッとくるな」
「それはさておき、なんでココはこんなにキレイなのかな?」
「ん?」
少し壁が黒いが、それだけである。でなきゃ転がらない。
「僕達以外はココに来ないはずなのに。それとも、誰か管理人でもいるのかなぁ?」
「いや、あの、樂?」
「でも誰だろう?僕達と会わないって事は、夜中や早朝に来てるのかな」
「………」
「ん?どしたの槙、黙り込んで」
「まぁ、知られていないなら 別にいいけどな」
「え?何が?」
「いや、何でもないよ」
槙はそう言って会話を切り上げ、猫と同様に寝る体勢になった。
槙「ていうかお前の理論だと柚が懐かれないのはおかしいよな」
樂「気付かないフリしてたのに……」




