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高校生達のかなりどうでもいい日常  作者: はんぺん
四月、卯月、April…
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4.食べ物の恨みは恐ろしいなんとやら

中高生の燃費の悪さはおかしいと思います


「ああぁぁぁああああぁあぁぁぁぁああぁぁぁ…」

「槙。吐きたいならトイレ行きなよ?」

「なんで!?いや、台詞自体には俺も賛成だけれども!別に俺吐きたくねぇよ!?」

「槙…」

「ん?何だよ…」

「…無理、しなくていいんだぞ?」

「いや速水もそこで乗って来なくて良いから!なんで俺が吐きそうなのが確定事項なんだ!」


 昼休み。槙が机に突っ伏して呻いていた。愀と一緒に心配してやったらなんか否定された。


「またそうやって君は…あの時だって今みたいに我慢してぶっ倒れたんじゃないか。少しは自分の体を心配しなさい」

「あの時っていつだ。俺は倒れた覚えは無いぞ」

「とにかく、今日はもう良いから歯磨いて寝なさい。洗い物は僕がやっておくから」

「お前は俺の母親か!」

「僕は君の親になった覚えは無い」

「それだと性別が女ってのが否定できてないぞ」

「失礼な。僕は男だ」

「分かっとるわ!」


 遠慮会釈なく失礼なことを言ってくる級友。せっかく心配しているというのに。それよりも…


「それとも何だ。君は僕の事を俗に言う“僕っ娘”だとでも言うつもりか?」

「言わねぇし言ってねぇよ!それとお前は男だから“娘”じゃ無いだろ」

「はっ…もしかして君は僕の事をそういう目で…!」

「どうしてそうなった!?」

「…愛の形は人それぞれだ。何も言うつもりは無い」

「だから絶妙なタイミングで乗って来るなぁ!」


 いけない。友達が道を踏み外そうとしている…!早く連れ戻そう。槙が新たな性癖に目覚める前に!!


「槙…」

「…何だよ」

「ごめん。僕は君をそういうふうに見れない」

「………」

「だから、ね?そんな嗜好は捨てるんだ」

「…槙なら、まだ引き返せる…」

「………はぁああぁぁぁぁぁぁ…」


 槙を正しい道へと導こうとすると、大きなため息を吐いた。どうしたんだろうか。僕にフラれたのがそんなにショックだったのか。

 だとしたら大変だ。槙がもう引き返せない所まで進んでしまっている可能性がある。いつの間にそんな場所まで!僕達はどうしたら…。


「愀!」

「ほい?」

「槙を元の槙に戻そう!なんとしても!」

「こっちに被害が来る前に…ね」

「もう勝手にしろ…」


 さて、冗談も程々にして話を最初に戻そう。


「で、槙。どうしたの」

「机に突っ伏して…」

「………」


 槙が黙ってこちらを睨んで来る。何故だ。ただ心配しているだけなのに。はっ…まさか……!


「だ…駄目だよ槙!僕達男同士じゃないか!」

「ループすんな。というかなんでまたそこに戻ったし」

「だって槙が暑い眼差しで見つめて来るから…」

「今絶対イントネーション違った!熱いじゃなくて暑いだった!」

「男に見つめられても暑苦しいだけだよ」

「女子の視線だったら良いのか…?」

「まだ状況はマシだね」

「もう良いわ!もう止めようぜこのノリ!て言うかお前ら話聞く気あんのか」


 むぅ…仕方ない。話を聞いてやろうじゃないか。


「…で、なんで呻いてた」

「…」

「槙?」

「お前らのせいだよ!」

「ええっ!?」

「心外な…」

「心外なじゃねーよ。お前ら昼の時俺に何したか言ってみろ」

「…」

「……」

「…………」

「……………………」

「……………………あっ」

「樂 そこは気付いても黙っとくとこ」

「あっ」

「言 っ て み ろ」


 はい。今の状況。

 槙怒ってます。冷やっこい目で睨んできます。僕は自らの過ちに気づきました。逃げたいです。槙は魔王なので逃げられません。

 おい!何か打開策は無いのか!?

 相手は所詮槙だ。なにかあるだろう

 しかし、今の槙は“魔王”と化しているのでは…?

 “魔王”の名は伊達ではないからな。あるとしても難しい。

 そんな!

 いや、“魔王”だとしても今の僕達なら…

 あのときの惨状を忘れたのか?

 しかしっ!


「…全部口に出てるぞ」

「……愉快な脳内だ」

「誰が魔王だよ」


 頭の中で八つの人格の僕と緊急会議。しかし一向に良い案が出ない。このままだと魔王()に喰い殺される。もしかしたら今ここでジャンピング土下座で命乞いをし下働きとなることで許して貰えるかもしれない。

 いや、僕の考える“過ち”が間違いかもしれない。だとしたらまだ救いがある。


「あのさ、槙…一つ聞いて良い?」

「質問による」

「…………僕達のしたことって何?」

「お前ら俺の弁当 半分くらい盗ってったよな」

「…面目ない」「面目ないで済めばこんなに吐きそうにならねぇよ」


 ………間違いなかった。これは喰われる(殺される)

 何せ高校生にとって昼飯の量はもはや死活問題。その昼飯が半分盗られれば怒るのもまた必然。加えて怒らせたのは悪名高きあの魔王。僕はどうすれば…


「ま、槙」

「なんぞ」

「ご、5,000円で許して貰えますか…?」

「待て なんでお前泣いてんの?お前の思考の中で何がどうしてどうなったらその結論にたどり着いた?よく五千円持ってたな。そして俺のボケスルーか」

「…思考回路が大変なことになってるのは理解した」

「じゃ、じゃあ明日もお金持って来ますから…っ」

「それよりもまず落ち着けよ」

「お願いですから食べないで…っ」

「誰が魔王だよ」

「…槙、突っ込むポイントが飛躍してる」


 ううっ…僕は…僕は……っ!



槙「それと樂。お前が泣いてるから注目されてるんだが」


樂「嘘泣きってすごい」


愀「役者か」

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