38.人には苦手分野ってものが
タイトルと内容はほぼ関係ありません
「ん…?あれ……?」
製図の授業中。お昼前。
製図の基本として、色々な線を書く練習中。これは課題なので今日提出。
「えぇ?これどうやって……ん?60度傾けて……えぇぇ?」
今日提出、なのだが。いかんせん僕はこういった図形の類が苦手で、この正三角形の敷き詰めができない。やり方がまったくわからない。かれこれ30分、こうして悩んでいる。
それでもわからない。むぅ……こんな時は。
「槙!召喚っ!」
「するな!てかお前は何者なんだよ!」
少し離れた場所からこちらに歩いてきつつツッコむ槙。
「それでも召喚には応じるんだね」
「どうせ暇だからな」
見れば槙の紙はすでに仕上がっている。もちろん僕が苦戦(……いやむしろ惨敗だが)しているものも終えている。
「槙、これどうやってやるか分からないから教えて」
「……樂、30分はこれで詰まってるよな?」
「よく見てるね」
「暇なんだよ……」
槙はそう言ってから丁寧に教えてくれる。
普段は無駄にテキトーだが、こういう事については途端に集中しだす。僕はもう慣れたが普段の槙しか知らない人が見たら心底驚くと思う。通称 槙高速発熱。
「――で、60度傾けるより30度傾けて縦のスケール使った方が良いぞ。せっかくふたつついてるんだから」
「なるほど……どこを基準に始めれば良い?」
「このド真ん中。点とって。で、そこから水平方向に20ずつ点とって」
「20って、mmで?」
「そう。……いや、機械工作の授業で習ったろ?製図でもやったし」
「寸法は全部ミリ単位で、か……」
なんでミリ単位なの?別にマイクロ単位でも良いじゃない。
「それだと桁が四つ増えて書き込み辛いし読み辛いだろ……」
「読心!?」
「で、この点からさっきの30度の縦のスケールで線引け」
「はい」
「したら、逆の30度で……そうそう」
うむ……自分で考えると全然分からないが教えてもらうとこんなにサクサクと。自分の無力と槙の技能が身に染みる。
「で、この二線の交点を繋ぐ」
「ふむ」
「繰り返せ」
「最後だけ雑っ!?」
「なんか面倒になった」
出たよ槙の特徴。
何かに集中した後はやることが終わると急にやる気がなくなる。通称 槙冷却中。
「でもそこまでできれば後はできるだろ」
「まぁ、うん」
「ていうか少し考えればわかるだろ」
「サラッと馬鹿にしてるよね」
「そうだな」
「誰も彼もが君と同じスペックな訳じゃないんだよ……!」
「そうだな。じゃなきゃ俺が平均点の半分以下なんてとる訳ない」
「……えらくマイナスにとったね」
え、でもそれって赤点だよね?大丈夫なの?
「それにしてもさ、字消し板ってモノ切れそうだよな」
「え?あ、うん。すごい薄い金属だしね」
「まぁ消す時に支障をきたさない為なんだろうが……」
「2ミリもあれば使えなくなるね」
「だな。で、そんなに薄いからこうやって切れるんだ」
そう言って右手の親指を見せてくる槙。
爪の生え際と間接の間に走る横一筋の薄紅の線。わずかにめくれた皮膚の皮。
「って、痛いから!痛いからやめて!」
「さっき手持ちぶさたな時間に字消し板いじってたらスパッと」
「ひぃ!」
「切れそうだなとは前から思ってたが、まさか本当に切れるとはね」
「痛い!痛い!」
「もう血は止まったけどさ。多分カッターの代わりになるわ」
「ならないよ!もうやめて痛いから!」
「はっはっは」
くっ……槙がいじめる…。
樂「あれ?これは……」
槙「あぁもう……これはここから線を――」




