34.引き続き雨
連日雨とか
「……雨だねぇ」
「……あぁ、雨だな」
教室。昼休み。
槙と弁当を食べつつ話す。
「朝は降ってなかったのにね」
「確か今日の降水確率は30 70だったな」
「そうだったんだ……あれ、知ってたなら教えてくれれば良かったんじゃない?」
「聞かれなかったから」
そう言って唐揚げを一つ口に放り込む。確かに僕も聞かなかったけどさ、降水確率高いなら忠告くらいしてくれても良いんじゃないかな。
「放課後までにやめば良いんだがな」
「そうだね……また昨日みたいな事になるね」
「そうだな。そしてお前が風邪に――もとい、風になるな」
「あれ?そのネタまだ引っ張るの?」
あれは僕だって後悔?しているのだ。雨の中 自転車で走り回るという謎の奇行。自分のしたい事が分からない。風になりたいなら晴れの日にすればいいだろう。
「その通りだな」
「読心!?」
「雨といえばさ、今日の体育どうするんだろうな」
「スルーなんだね……」
「相手にしてたら無駄に時間くうからな」
「うん……どうするんだろうね。確か50メートル走の計測だっけ」
「できないよなこの雨じゃ」
外に目をやる槙。僕もならう。
白く霞んだ窓の向こうの風景。ベチベチと音を立てて屋根から滴る雨水。黒く濡れたグラウンド。
「無理だね」
「水溜まりにはなってないから雨さえやめばできそうだけど……どうだろう」
「どうなんだろう。まぁ、僕はどっちでも構わないけど」
「放課後までにやめば?」
「そう」
自転車だし。槙が言ってくれないから雨合羽も持ってきてないし。
「それは自分で天気予報とかチェックすれば済む話だろ……」
「読心!?」
「で、このまま雨やまなかったらどうするつもりだ?」
「槙の合羽もらう」
「俺が死ねる」
「良いよ別に」
「良かねぇよ」
「でもなにもせず帰ったら禿げるよ?」
「禿げるってお前……そんな即効で禿げるか?」
「さぁ?禿げるんじゃない?」
「なんで疑問系なんだよ」
「分からないから」
「まんまだな」
そりゃそうだ。分からないんだから。僕はいつでもテキトー。僕の辞書に“正確”の二文字は無い!
「いや無くちゃ困るだろ……」
「読心!?」
「樂って50メートルどれくらいだっけ?」
「え?僕?確か七秒切るか切らないか切らないかだったと思う」
「なんで切らないの選択肢が二つあるんだよ」
「切りそうで切れないから」
「あぁそう……」
「槙は?」
「俺?そうさなぁ……七秒台後半のはず」
わりと遅いんだね。いや、知ってたけど。
「愀は速そうだよね」
「そうだな。何となくだけど」
「本当に速い人ってどれくらいなんだろう?」
「三秒くらいじゃないか?」
「それ世界目指せるよね」
「余裕だろ」
100メートル換算、疲労を考慮しても七秒。僕のおよそ倍速以上。人間じゃねぇ。
「それ時速何キロかな」
「計算しろ」
「面倒臭い」
「おい」
「槙やってよ」
「やだよ面倒臭い」
槙、人の事言えないよそれ。
「ところで、愀って何秒で走れるんだ?」
「だから何となく速そうだって――」
「――だいたい五秒後半…」
「うわぁ!?」
「叫ぶな」
「…調子よければもう少し速いかも」
「ほう」
え?いや、だって愀、いや、えぇ?
「愀、いつからそこに!?」
「お前の『雨だねぇ』の少し前からだ」
「最初からじゃん!」
「…そうだけど」
「それ槙最初から気づいてたの!?」
「そうだ」
「なんで気づけるのさ!」
「逆になんて気づかないのか聞きたい」
「ソッチ方面の能力に適性がないんだよ」
「…じゃあ何に適性が」
「いやそんな適性とか知らんから」
愀出現。本当にいつ現れるのか分からない。これは槙にも言える事なのだが。
それなのにどうして皆気づけるのだろう。どうしても腑に落ちな――あれ?ただ単に僕が鈍いだけ?
「愀、やっぱり速いのな」
「その速さ少し分けてよ」
「無理…」
樂「あ、雨やんだ」
槙「本当だ」




