31.ニシン ……は、違うか
え?疑問をサクサク解決?
できませんよ。
「なんで二進数ってあるの?」
放課後。ジャ◯コのベンチ。
ずっと考えていた疑問を言った。
「……いきなり何を言い出すかと思えば」
「だいたい俺は『意味なんて考えるなよ…』って言ってるだろ?」
紅季と槙の反応。今日は愀じゃなくて紅季がいる。
「それでも気になるモノは気になる。むしろ逆に気になる!」
「少し落ち着けよ」
「てか唐突過ぎるだろ」
「気にするなって言われると気にならない!?」
「あ、俺の発言はスルーなんだ?」
「アレか。押すなよの原理」
「紅季、それは多分違う」
「ていうか俺二進数分かんないし」
「商業校だからな……」
「誰か説明してみろっ!」
「多分アレだろ」
「アレじゃ分かんないよ」
「いや話の腰折るなよ。アレだよ。信号二種類で事足りるようにだろ」
「はぁ?」
何言ってんだコイツ。……いつもの事かな。
「いや、はぁ?じゃなくてな?スイッチのオンオフを並べるだけで情報を伝えるようにだろ」
「ちょっと言ってる意味がわからないな」
「いや分かってやれよ……」
「極端に簡略化されたモールス信号だと思え」
「モールス信号って信号三つだよね?」
トンとツーと空白で。
「屁理屈言うなや。だいたい俺らに分かる訳が無いだろ。どうしても気になるなら情報技術の先生にでも聞きな」
「面倒臭い」
「おい……」
「コンピューターの信号は突き詰めると二種類ってどっかで聞いた気がするだけだからなんとも言えないんだよな……」
どこで聞いたのだろうか……。
「照明のスイッチって考えた人凄くない?」
「話飛んだな」
「飛んだな」
「一応関連性はあるよ?スイッチ」
「そうだけどな……」
「あれって仕組みどうなってんだ?」
「さぁ?でも凄いよアレ」
「……樂が言いたいのって複数箇所でオンオフ切り替えのできる奴だよな?」
「そうそれ。僕が考えても仕組みとかわからない」
「俺にも分からんよ……柚あたりなら知ってそうだ――」
槙の言葉と動きが一瞬止まる。そしてウエストポーチ(あれ?そんなの槙付けてたっけ?)から携帯を取り出して何かしている。そして硬直。
「どうした?」
「どうしたの?」
「――はぁ……」
「いやどうしたんだよ」
「いや……うん、樂」
「うん?」
槙が僕に画面を見せてくる。……真っ黒だ。
「あれ?すまん、消えたな」
アレか。しばらく操作しないと画面が消えるアレか。
槙がロックを解いて僕に画面を見せてくる。目に映るラインのメッセージ。
『ボクも知らないよ』
『人に聞く前に自分で調べたらどうかな?』
『ていうか、どうしてボクが知ってると考えるのかな?』
「…………えっと、うん。柚、どっかから見てる?」
「……聴いてる、の線も否定できないぞ」
「まさか、盗聴器!?」
「探せ!上着の襟とかに仕込まれてるかもしれん!」
「ちょ、落ち着け」
幼馴染みに盗聴されてるかもしれないのに落ち着けるかぁ!どこだ、どこにある!?
「いや、ホント恐――と、今度はなんだ?」
またメッセージのようだ。
『もしかして、盗聴器とか探してる?』
大当たりだよ!槙が返信。
『いや?』
何サラッと嘘書いてんの槙。
『もしボクが仕掛けるとしたら襟はやめておくかな』
『じゃあどこに仕込むつもりだよ?』
『頭?』
「恐怖だよ!」
「うわビックリした」
槙が叫ぶ。事情を飲み込めていない紅季が驚く。僕は苦笑いしか出てこない。
「ていうか何があった。俺何も分からないんだけど」
「いや……紅季は知らない方が良い」
「そうだね……紅季なら失神できるレベルだもんね」
「いや余計気になるだろ」
「あ、ごめん。紅季なら失禁できるレベル」
「なんでそこ言い直した!?てか汚い!」
「本当にエスパーかよ柚……」
槙が適当に返信している間に紅季を適当にあしらう。柚の色々は部外者には知られない方が良い気がする。柚のメンツが潰れかねない。一人称とか、エスパー疑惑とか、猫被りとか……。
「話戻そうか」
「そだね」
「おい、気になる」
「死にたいのか?」
「君に死の淵を覗く覚悟があるって言うの?」
「どんだけヤバイんだ…」
「ところで槙、さっき柚のメッセージに気が付いたのはなんで?」
「槙って通知とかオフにしてるよな」
「なんとなくそんな気がしたんだよ……」
「君もたいがいにエスパーだよね」
「野生の勘の方が近くないか?」
「おい」
『話はもどさないのかい?』
槙「だからなんて分かるんだ……」
樂「槙の読心みたいなモノじゃない?」
槙「だから俺は……はぁ」




