23.てすべん~一夜漬け~
ご利用は計画的に!
「…つまり?」
「この辺と角が分かってる訳だから正弦定理で」
「はぁ」
「代入して2Rイコール2sin45°。もう分かるな?」
「あぁ、そうやるのか…」
放課後。僕の部屋。槙とテスト勉強中。
僕はもはや理解不能といえる正弦定理、余弦定理について槙に教えてもらっていた。
「今思ったんだけどさ」
「なんだ」
「これ覚えて何かに使えるの?」
「知るかよ…それ言ったら虚数とか級数とか微分積分、三角関数とか最早存在意義すら分かんねぇよ」
「名前すら知らないよ僕は…」
「別に用途とか知らなくてもテストには出るんだよ。困ったモンだ」
その時、僕の部屋のドア(部屋の中から見て蝶番は右側にあり、引いて開けるタイプ) が開いた。
「用途もしっかりあるよ?習わなかった?」
柚が部屋に入って来た。
「…いつも思うんだけど、柚ってホント神出鬼没だよね」
「だよな」
「でもボクは槙みたくワープはできないよ」
「まぁそうだけどさ…」
「なんで俺がワープできるみたいな方向で話進んでんの?」
「で、その用途ってどんな?」
「例えばさ」
柚がどこからか座布団を召喚して座る。…いや、どこから出したの?
「こう…河があるだろ?」
「うん」
「この河の対岸にある木までの距離を知りたいのさ」
「そんな距離知って何するの」
「何もしないさ。気分だよ」
「なるほど」
「納得すんのかよ」
「この河の上を通して巻き尺か何かで測っても良いけど、大変だろ?面倒だし」
「うん」
「そこあえて巻き尺なのな…」
「そこで正弦定理。この木をA、こちら側の岸にB、Cを作る」
「うん」
「このBCの長さを40メートルにしたら、角Bが65°、角Cが59°になった」
「うん」
「なんでそんな微妙な数字なんだ」
「現実なんてそんな物さ」
あ、槙が微妙な顔してる。
「そうすると角Aは…槙」
「なんで振った。56°だ」
「正弦定理sinA分のaイコールsinC分のcに代入。sin56°分の40イコールsin59°分のc」
「うん」
「なんか今の樂が居れば宝くじ当たりそうな気がするな」
「つまりcイコール…sin56°分の40かけるsin59°。だから……槙」
「だからなんで振るんだ。さすがに分かんねぇよ。ちょっと待て今電卓出すから」
「sin cos tanのできる電卓…良いなぁ」
「ていうか今持ってるんだ」
槙の持ち物っていったいどうなってるんだろう。今度槙の鞄ひっくり返してみようかな。
「sin56°分の40かけるsin59°……41.36だ」
「だって。つまりACの長さは約41.4メートル」
「なるほど」
「余弦定理は?」
「二辺と一角が分かってる時に使うのさ」
「へぇ」
「他のは?その…級数とか、微分積分とか」
「それは知らないよ。ボクだって高1だからね」
「そりゃそうだ」
槙じゃあるまいし。
「いや俺も知らないから」
「読心!?」
「ところで、樂はこの調子なら数学大丈夫そうだけど 槙は英語良いのかな?」
「お願いします柚さん」
「槙が頭下げた!?」
「槙だって人間のはずだからね。頭くらい下げるだろう」
「はずって何だよ」
「どこから分からない?」
「全部」
「槙大丈夫?」
「……ふふ…なんか気が遠くなってきたよ」
あ、なんか柚がどこか遠くを見てる。槙の英語スキルの低さが原因だな。
「じゃあ槙、英単語の書き取りからね。意味と発音を確認しながら」
「うわめんどくせっ」
「さすがにボクもそこはカバーできない」
槙君の学力が教科によって偏りが激しい気がします…




