18.連休は終わりました
連休明けのだるさは異常だと思った
「はぁあああぁぁぁああぁ…」
「樂、吐きたいならトイレ行きな」
「それ前に僕がやった…」
「知ってる」
朝。HR前。教室。
僕が自分の机に潰れて長いため息を吐いていると、槙が僕の使ったネタをサラッと出してくる。確かに僕は“あのとき”の槙と同じ状況下に置かれている。ついでに槙の立ち位置も“あのとき”の僕と全く同じ。唯一違うのは場所が僕の席であることと時間が朝であること、魔王が降臨していないことである。
「三つもあるのに唯一かよ…」
「え?槙、何か言った?」
「いいや、何も」
槙が何かをはぐらかした気がするが、僕は槙の様に読心術は使えないので諦める。下手に詮索すると以前の様に魔王降臨!な事態に陥るだろうし。
「で、樂。何かあったのか?」
槙が僕の机の前で腕組みをしながら聞いてくる。
「いや、槙…分からないのかい?」
「分からんな」
「はぁ…君には失望した」
「元ネタ知ってんのか?」
「知らない」
「まぁ俺も知らんが」
元ネタ知らないのにドヤ顔で使ってる奴って意外と多い気がする。某大佐の名言色々とか。…えっと、その他諸々とか。
「槙。今、僕が落ち込む要因になってる事なんて一つしかないよ」
「単位落としそう?」
「まだ中間考査前だよ」
「課題終わってない?」
「君じゃないんだから」
「弁当忘れた?」
「いや、なんでそんな地味なところばっかり突くの?もっと重大な事態に直面してるよね!?」
「…あ、もうすぐ中間考査だわ」
「Ungaahhhhh!」
「海外の皇帝かよ」
ああもう駄目だ!一度槙のボケにツッコむと調子に乗って延々とボケ続けるっ!なんで一番初めの展開からこうなる事を予測できなかったんだ僕はっ!くっ、こんな自分が嫌になる…。
「槙、ホントに分からない?」
「いや、薄々感づいてる」
「だと思ったよ…っ!」
「アレだろ?今日は髪形が決まらなかった」
「ホンっトに君は!なんなんだ!」
「槙だ」
「そうじゃなくて!ツッコミ係の君がいつまでボケ通してるのさっ!いい加減僕にツッコませるのやめて僕にボケさせろ!」
「俺は毎日がそんな感じだけどな」
「だいたい僕は髪なんていじらないし!君と違って寝癖は直すけど!何髪形が決まらないって!」
「聞いちゃいねぇなコイツ」
周囲の反応を意に介さず一気にまくし立てる。まだ朝早くでクラスメイトは来ていないので何一つ問題ない。
「君は馬鹿か!?」
「阿呆だと何度も」
「どうでもいい!」
「まぁな」
いいのかよ!
「GWだよゴールデンウィーク!もう終わったじゃない!槙はそれに対して何も思わないの!?」
「いや、樂だって昨日あんなに叫んではしゃいでたじゃないか。ゴールデンウィーク最終日だぁあああぁぁとか言って」
「叫んでないしはしゃいでないよ!」
「叫んでただろ」
「僕は全力で嘆いてたんだ!」
「まず落ち着いた方が良いと思うんだがどうだ速水」
「ふはははは馬鹿め!今この場に愀なんて来てな―――」
「…朝から絶好調だと思った」
「いや そうじゃないだろ」
「――!?」
僕が左側へ目をやるとそこにいたのは件の愀。件ってほどじゃないけど。ちなみに槙がいるのは右側。
「誰だ!?…違う、いつから!?」
「なんでそこ間違えた」
「樂のうんがーの少し前から…」
「意外と早かった!」
槙といい柚といい、どうしてこうも気配を絶つ事に長けているのか。でも槙はそれでも気付くし…。槙は例外。この一言で片付けておこう。
「で、話戻すけど。僕はゴールデンウィーク終わった事が嘆かわしくて仕方ないんだよ」
「…昨日あんなに」
「そのネタはもういいから!だいたい愀はなんなの!?話ループさせるの大好きなの!?」
「また脱線してるな」
「…まぁいいや。で、僕は嘆かわしくて仕方ないんだよ」
「あ、そこから再開?」
「槙は昨日はしゃいでたとか言うし!その通りだけど!」
「結局か」
「昨日はまだゴールデンウィークだったじゃん!今日普通に平日じゃん!そもそもカラオケないじゃん!」
「…朝からハイテンション」
「どこにそんなスタミナあるんだろうな」
朝からロウテンションな二人が何やら言っているが、とりあえずスルーして話を続ける。
「だいたい僕は――」
「おーすHR始めるぞー」
「だってよ。あとでな」
なんか妙にフランクな担任が来たので僕の熱弁は一旦中断。辺りを見回すともうクラス全員来ていた。して、今日もまた過酷な日々が始まる――。
槙「いや別にそこまで過酷じゃないだろ」
樂「読心術か!?」
担任「ほらそこ喋るなー」




