14.想像してはいけない
別にホラーじゃアリマセンヨ
「あれ?」
朝。槙が間抜け過ぎて救いようのない声を出す。
「………はぁ。お前その癖治せよ」
「え?また出てた?」
「そういえば五月入ったんだっけ?」
「ん…そうだね、今日から地獄の五月が始まるね」
「何が地獄なのか問い詰めたいところだな」
そう。五月に入ったのだ。
時間が進むのは早いもので、この前新年度になったと思ったらもう五月。桜もかなり前に散って、緑色の小さな葉がつき始めている。
「もう五月なんだねぇ」
「そえだな…」
「もう皐月なんだねぇ」
「なんでそこ言い換えたし」
「もうMayなんだねぇ」
「突っ込むのめんどいんだけど」
ワガママな槙が僕にすがり付きながら“頼む、もうやめてくれ!いや、やめてくださいお願いします!!”と懇願するので仕方なくやめてあげる。
「で、槙は五月の何が気に入らないのかな?」
「別に気に入らない訳じゃないが」
「ツンデレ風に」
「べ、別に気に入らない訳じゃないんだからねっ」
「………」
「無言で引くな。お前がやれって言ったんだぞ」
「……いや、ただの悪ノリでしょ?普通乗るって思わないでしょ?」
「樂の場合 本気か冗談か分かりづらい」
「失礼な!まるで僕が無表情で鉄面皮みたいに!」
「いや、そうは言ってない」
「まぁ槙が失礼なのはいつもの事だから良いとして」
「良いのか」
「どうして君はなんの演技も無しにツンデレ風の台詞吐くかな?真顔の棒読みってどうなの」
「そんな本気だすモノでもないし。そもそも俺が本気でやってもキモいだけだろ?」
「……」
想像。
槙が少しムッとした顔で頬を赤らめながら「べ、別に気に入らない訳じゃないんだからねっ!」と、僕に向かって言ってくる。
「うっぷ」
「吐くな吐くな!なんでわざわざ想像してみたんだよ!」
「いや…だって気になったから……うっぷ!」
「ああもう!ほら、エチケット袋」
「いや、大丈夫だけど…」
「そうか?なら良いんだが」
「て言うかなんで持ってるの」
「備えあれば憂いなし、みたいな」
「槙って他にも色々常備してるよね」
「そうか?」
「ちょっとポケットの中身出してみてよ」
「……」
「……」
ゴソゴソとポケットをあさる槙。
「えー、ハンカチ、ティッシュ、生徒手帳、メモ帳、エチケット袋、メモ帳、シャーペン、サージカルテープ、メモ帳、折り紙、メガネ、電卓、携帯…」
「待って待って!色々おかしいから!」
「え?」
「君のポケットは四次元か!?」
「いや、三次元だ」
「なんでメモ帳三つもあるの!?」
「用途が違うから」
「……まぁ、一応納得。次、なんでサージカルテープ!?」
「応急措置用だ」
「テープだけで!?次、折り紙!」
「あぁ、五センチ角のな。暇潰し用だな」
「カバンに入れとけよ!」
「シワになる」
ポケットの中はシワにならないと?
「次、メガネ!」
「これは常備しとかないと」
「君いつもかけてないよね?」
「あぁ、だから俺がメガネだって事知らない奴いるよな」
「カバンに入れとけよ!」
「すぐに使えないじゃないか」
「良いよ別に!」
「良かねーよ」
「次!ハンカチティッシュ!」
「持ってない方がビックリだわ」
「…次!電卓!」
「あった方が便利かなと」
「だからって普通ポケットに入れないよね!」
「まぁ、俺が変わり者って事で」
解決しないから!
「はぁ…で、何の話してたんだっけ?」
「あぁ、俺が本気出したらキモいって話か?」
「……」
「……」
「……うっぷ」
「吐くな!」
愀「…槙ってメガネだったのか」
樂「 !? 愀、いつからいたの!?」
槙「あれ?の辺りから」
樂「全部じゃん!」




