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四人の殺し屋  作者: Dy
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赤山と青島

赤山は双眼鏡を眼に当てながら、空いた手でスナック菓子の袋を手に取り、それを僕の方に放り投げた。

「悪い、開けてくれ」自分で開けろ、と言おう思ったが仕事の主導者的立ち位置にいる赤山の頼みを無視するわけにもいかず。僕はスナック菓子の袋を両手で掴み、引き裂く様にして開ける。パリッと景気のいい音が袋から鳴る。赤山は菓子袋を見ないで、ポテチを二、三枚掴み口に運ぶ。

「仕事中に飲食するのはどうかと思う」

僕たちの仕事柄、仕事中に飲食を取るのは別にあってもいいことなのだが、僕は前職の癖が残っているのか、仕事の実行中は一切飲み物を口にしない主義だった。

「別にいいじゃねーか、俺たちは食うのも仕事なんだぜ」

「食うのが仕事なんて、グルメリポーターだけだ」

赤山が盛大に噴き出す。空中にポテチのかすが唾と一緒に飛んでいく。汚いな、口を手で押さえろよ、と言おうとした時だった。突然、赤山が双眼鏡から眼を離し、近くに置いてあったギターケースに手を伸ばした。

「標的が?」

「来たぜ」

赤山が放り投げた双眼鏡を手に取り、標的がいるビルの入り口近くを見る。スーツを着た社員が早歩きでビルの中に入っていく中、それらの上司と思しき男たち数名が、その動きに逆らって出てきた。

数名の男たちがビルの入り口付近でネクタイを直したり。咳払いをしていると一台の黒の高級車がビルの入り口付近に止まった。車の後部座席からゆっくりと、まるで何かを背負い込んでいるような動作で車から降りる男がいた。僕たちの今回の仕事相手。標的だ。

「如何にも社長って感じだな」僕は見たままの感想を口にする。標的の顔は事前に、依頼主から写真で渡されていたのでわかってはいたのだが、実物を目にするとその迫力がよくわかる。

「如何にも社長だ」もう一度口にする。

「あと数分で退職だけどな」冗談を言っているようにも聞こえるが、赤山の口調はやけにはっきりとしていて仕事に対する真剣さが窺える。赤山はギターケースから取り出した狙撃銃、ライフルを設置させると、ライフルのスコープを覗く。

「目標確認」

「風速、風向き、共に安定」

僕は双眼鏡から眼を離し、ポケットから携帯電話を取り出し、少し早押しで番号を入力し電話をかける。待機音が鳴る。早くしろ、と赤山が呟く。片膝をついて座る姿のまま微動にしない。改めて赤山はプロなんだなと認識させられる。待機音が終わる。

「もしもし」電話相手の声は低く、中々どすの効いた声だった

「ポテチ」

電話の向こう側で、はっ? という声が聞こえた。同時に隣で缶詰を開けたような音がした。

直後、電話の向こう側から、大きな物が倒れる音がした。

「死んだ?」僕がそう聞くと、赤山は狙撃体勢をゆっくりと解除して「終わった」と言った。

「早いところ帰ろう、同じ場所に留まってはいけない、だ」

「そうだな、ところで、だ。青島」

「なんだ」先ほど口に出した様に早くこの場から立ち去りたかった僕は、中身がまだ半分ぐらい残っているポテチと、双眼鏡、それとライフルを固定する際に使った道具を、適当に持ってきたショルダーバッグに詰め入れていた。

「電話をかけた時のあの言葉、ありゃなんだ」

「ああ、あれ」特に意味はなかった。合図が決まらなくて、偶々、ポテチが眼に入ったから、なんとなく言っただけだった

「あの社長さ、ポテチが大好きなんだ、だからさ「ポテチ」って聞くと動きが完全に静止するんだよ」

「なんだそりゃ」

赤山は鼻で笑いながらライフルをギターケースにいれる。それを背負い込み立ち上がる。

「よし、ずらかるか」そのまま出口へと歩いていく、ショルダーバッグを肩に掛け、後に続く。

そこで携帯電話を処理していない事に気がついて、慌ててポケットから携帯電話を取り出す。

着信に先ほどの社長から何件か入っていた。きっと周りの部下が連絡したのだろう。

僕はそれを無視して、屋上から携帯電話を投げ捨てた。




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