↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/129

第115話 もう二度と負けはしない

 畠中は、うるうると目を潤わせながら、すこぶる驚喜した。


「あ、あ、有原さぁぁぁん!」

 有原が助太刀に来たことと、


「ありがとうございます石野谷さぁぁぁん! 有原さんにも僕のことを教えてくれてぇぇぇ!」

 石野谷が『誰にも言わないで』という自分の約束をあえて破ってくれたことに。


 ところが、

「……いや、俺……マジで祐に言ってなかったんだけど?」


「え……本当ですか?」


「うん……一応言ったほうが安全なんだろうなーって思ったけど、ここは義理を優先して。さっき言った通り、連れて逃げるくらいなら一人でもいけるかなって思ってたし。

 だから……なんで来てくれたんだよ祐ゥゥッ!?」


「えぇぇぇぇ!?」


 驚く二人へ有原は笑って答える。

「二人がいなくなってからです。それに気づいた後、畠中さんなら多分ここに来るだろうと思って、急いで飛んで来ました。あ、皆にはキチンと訳を話してますので、もう少ししたらさらに駆けつけてくれると思います」


「……そ、そうなんですか……!」

「……流石だよ祐……お前は本当に偉……」


「一人罪人が増えたところで仰々しく騒ぐな……そして総員、執行せよ!」


 槙島は自分の手勢に三人を殺せと命じた。

 

 直後、素早さに優れた英霊二人、李書文と雷電が三人へ突撃する。


 最中、前者は雷を帯びたドロップキックで、後者は光を帯びた剣の振り落としで阻まれる。


「噂をすれば影とやら……ですね!」


「やった、助けに来たよー! 有原さん!」


「運転手が乱暴で大変な道中でしたが、何とか間に合ってよかったです……」


 と、武藤と松永は言った。


 武藤の得物である神器【クラウ・ソラス】の光属性エネルギーの噴射を利用し、松永は持ち主に掴まって来たのだ。


「武藤さん、松永さん! いち早く来てくれてありがとうございます!」


「礼なんかいいよ! ボクたち仲間でしょ! ね!」

 いつものように武藤がニコニコ明るくする一方、

 

「……本当にすみません、有原さん……」

 と、松永はくすぶる罪悪感を隠さずにはいられず、暗い面持ちでいた。


 それに有原は優しく返す。

「……もういいんですよ、松永さん。貴方は悪くない、立派な人ですから……」


「……はい、本当にすみません……有原さん」


 槙島の軍勢に囲まれる中、五人は一箇所に固まり、互いを守り合う体勢を整える。


 有原は、背中合わせになっている石野谷へ言う。

「この後、隆景と護たちも来るから、安心してね陽星」


「……本当にごめんな、祐。俺の無茶で皆に迷惑かけちまって……」


「気にしないでよ。逆にありがとう、陽星。ここまで畠中さんを守り切る役目を果たしてくれて。むしろ誇ってもいいよ?」


「……そっか、どういたしまして、祐!」


 この時、畠中はこっそりと微笑んでいた。

(石野谷さん、さっき僕に言ったこととそっくりなこと言われてる……)


「有原、石野谷、武藤、松永……そして畠中ァァッ! 有象無象が無駄に団結して俺を苛立たせやがって……!」

 槙島は鬼の形相で、自らの軍勢へ号令を放つ。


「全員、蹂躙しろ! そして知らしめてやれ……貴様らがいくら束になっても、俺の掲げる大義には塵芥に等しいと!」


 武藤は言う。

「さっすが王様の本陣、もんのすごいいっぱいいるねー……」


 松永は言う。

「加えて、槙島も以前と比べて確実に強くなっているようですね。これは注意しないと」


 石野谷は言う。

「だがな、俺たちだってメッチャ修行してんだ。だからゼッテー負けない! だよな、祐!」


「ああ、陽星! 僕たちはどんな危機だって超えてきたんだ! この戦いも生き抜こう……そして!」

 

 そう有原が言っている途中に、畠中は言う。

「『槙島を助ける』……とかですよね? 有原さん!」


「そうです、畠中さん! 第一優先は『包囲を脱して逃げる』ことですが……今度こそ槙島さんに見せてあげましょう! 本当に進むべき道を!」


 五人の英霊と数多の兵は、凄まじい士気を帯びながら五人へと大挙する。


 しかし、五人は信じるものを強く信じて、その威圧を物ともせず立ち向かう。


 まずいち早く五人に迫ったのは【英霊(エインヘリャル)】李書文。彼は敵を一気に薙ぎ払うべく、大槍を振りかざす。


 これは松永が槍先を片足で踏みつけて勢いを殺し、

「【崇奉の世戒】!」

 稲妻で構成された五体の分身を放ち、それらに李書文を滅多打ちにさせて反撃する。


 そこに同類を守るかのように、雷電が凄まじい勢いで突進してくる。

 

 その進路へ、武藤はクラウ・ソラスのエネルギー噴射で割って入り、

「【トゥアハ・グローリー】!」

 光属性エネルギーを帯びさせ刃を延長したクラウ・ソラスを振り下ろす。


 雷電は両腕を上へ向けそれを受け止める。だが、


「うぉー! ボクはこの程度じゃ止まんないぞッ!」

 武藤は奮起し、クラウ・ソラスをさらに押し込む。


 雷電は相手の圧力に耐えきれず、ガードを崩されて武藤の一刀を受け、後方へふっ飛んでいった。


 直後、レオナルドは武藤の背後を狙ってマシンガン二丁を構え、一気に連射する。


「【湍津(たぎつ)ノ疾槍(しっそう)】ッ!」


 そう来るとは踏んでいた。有原は、足裏から風を噴射してレオナルドの前に立ち、

「【田霧(たきり)ノ威盾(いじゅん)】ッ!」

 地面を強く踏みつけると同時に周囲へ竜巻を展開する。


 そして有原は竜巻に巻き込まれた弾丸をレオナルドへめがけ反射する。


 そこでレオナルドの前にアストルフォは颯爽と駆けつけた。弾丸の方に向けて本を開き、それで弾丸を受け止める。


 このまま正面に跳ね返せばただのラリーとなる。と、アストルフォは判断して、弾丸を適当に空中へと跳ね返した。


 刹那、アストルフォは左手に持つ角笛を吹いて音色を奏でながら、右手に槍を携えて有原へ迫る。


 アストルフォの角笛の音色は敵をジワジワと弱らせる効果を持つ。

 これにより有原を含む五人は、戦闘の真っただ中、力が入らなくなったり、ふらついたりという状態異常に陥る。

 

 しかし、有原は、

「こんなところでは止まらない! 僕は皆を助けるんだ!」

 という、不変にして真っすぐな信念の元、身体の弱りをもろともせず、アストルフォへ剣を構え直す。


「【市杵(いちき)ノ崩槌(ほうつい)】ッ!」

 そして有原は得物の柄頭をアストルフォへ向けて突き出す。そこから突風を放ち、アストルフォと後ろのレオナルドを、押し飛ばし、地面に叩きつけた。


「や、やっぱりすごいですね有原さん……」


「だろ? けど、俺だって負けちゃいないぜ!」

 と、石野谷は畠中に言ってから、モードレッドへと向き直す。


 モードレッドは宝剣と偽りの王剣を両手それぞれに構え、石野谷と畠中に迫る。


 石野谷は両手を何度も正面に突き出し、そこから黄金の炎の矢を連射する。

「【ミダス・ラピッド】!」


 モードレッドは迫りくる黄金の矢を、二本の剣を巧みに振るい全てかき消す。

 その間、モードレッドは石野谷との距離を詰め続けた。


 そしてその距離がゼロに近づいた時、モードレッドは二本の剣を、バツ字を描くように左右から斜めに振り落ろす。


「【ピュートーン・ブレイカー】、二連!」

 対して石野谷は双剣めがけ炎の両拳を同時に突き出して受け止め、


「【ダフネ・バースト】!」

 直後、石野谷は軽やかに飛び上がり、モードレッドの顎に膝蹴りをかます。その命中箇所からから火柱が起こり、モードレッドは空中へかち上げられた。


 石野谷はモードレッドに全身全霊で狙いを定めて、弓を射る。

「【ロクシアース・ノヴァ】!」

 放たれた一本の矢は極大の炎の塊と化して、空中で無防備になっているモードレッドへと命中して爆発。モードレッドは地面へ落下し、そのまま大の字になって伸びた。


「……何をしている! 俺の命令の意味が分からなかったのか!? 総員、奴らを完膚無きまで蹂躙しろ!」


 有原たち五人が英霊と戦っている間、槙島が呼ぶ暗黒兵とヒデンソル王国の一般兵、それから、


「この有原どもがッ! 今日という今日は私(わたくし)の権威を奪ったことを後悔させて差し上げますわ!」

 鳥飼により生み出された魔物が彼らへと襲いかかった。


「るせーッ! インフレに取り残された奴なんかが茶々入れてくんなァ!」

「陽星、それは言い過ぎじゃないかなぁ……?」


 しかし今の彼ら(畠中を除く)は並の兵士と魔物どうにかなる存在ではなく、英霊と戦っている最中に適当に退かされた。


 どいつもこいつも俺の期待を裏切りやがって。と、自軍の不甲斐なさに激しく憤りつつ、槙島は周囲に無数の氷の槍を生成し、

「【凍裁擲槍(ミーミル・ジャベリン)】!」

 とにかく当たればいい。と、言わんばかりに狙いをまともに定めず、五人が戦う地点へと一斉掃射する。


 だがその射線に有原は現れ、

「【田霧ノ威盾】ッ!」

 またもや竜巻に巻き込み、槙島へ全て跳ね返した。


 槙島は目前でグングニルを回転させて完全防御してから、

「有原……これが貴様の救済か、こうして何度も俺の挙動を全て遮るのが救済か……!」


 有原は多少答えに迷ってから、

「……ごめんなさい、こうしないと槙島さんは、貴方はどんどん後戻りできなくなって……」


「貴様の善悪をこちらに押し付けるなァ!」

 と、怒号を浴びせた後、槙島はグングニルを真横の空間に突き刺し、そこに黄金のゲートを作り出す。


「別格の奴を呼び出してやる……【英霊顕現(ヴァルハラ・アドヴェント)】ッ!」


 そしてその黄金のゲートより、身の丈を超える大剣を担ぎ、威風溢れる巨体を誇るファラオ――六体目の【英霊】、ラムセス二世が現れる。


 直後、ラムセス二世は大剣を軽々と振るい、その切先を有原へと向け、そこから有原を包み込んでもなお余りある程の大きさの爆炎の球を放つ。


 あれは【田霧ノ威盾】では防ぎきれない。と、有原は悟り、剣を強く握って構え、【天羽々斬虚剣】の発動体勢に入る。


 ところが、いざ発動しようとした瞬間、

「【ロクシアース・ノヴァ】ッ!」

 ラムセス二世の火球は、石野谷が空中より放った豪炎に穿たれ、槙島と有原の間で爆散した。


 そして石野谷は有原の隣に着地して、

「あんま一人で抱え込み過ぎんなっての、祐」


「……そうだね、陽星」

 有原とハイタッチをした。


「たかが一撃凌いだくらいでつけあがるな……!」

 ラムセス二世は槙島の命に答え、二人めがけ突撃する。


 その間、槙島は自分の真横でグングニルを凄まじい速さで高速回転させ、

「【絶氷神剣(グラム・ブレイド)】!」

 地面を紙のように斬り裂く、冷気を帯びた斬撃を飛ばす。


 刹那、ラムセス二世は槙島の視界から弾き飛ばされ、斬撃波も消滅する。


 代わりに彼の視界に現れたのは、

「「合体奥義、【光明神(アポロ)ノ虚剣(きょけん)】ッ!!」」

 背後に七本の炎と風が入り交じる剣を浮かばせ、手にはさらに勢いづいた炎と風を纏わせた剣を持つ有原だった。

 

 自身が呼び出せる【英霊】の中でもとりわけ良質なラムセス二世がどかされたことに驚きつつも、槙島は有原の一撃を食らう前に、

「……【極氷神楯(アースガルズ・シールド)】ッ!」

 自身を囲むように氷の円形のバリアを展開する。


 そして有原は槙島を守るバリアに得物の剣を叩きつける。遅れて背後に浮かんだ七本の剣がバリアにぶつかる。


 この時、二人は同じ瞬間を思い出す。


 ミクセス王国とファムニカ王国の和睦後に起こった槙島襲撃事件の真っ只中、槙島が有原と石野谷の合体奥義を容易く防げ、力の程を見せつけた瞬間だ。


 有原も、石野谷も、あの瞬間はただただ悔しかった。

 自分たちの力が、思いが、こうして簡単に打ち砕かれてしまい、通らなかったのだから。


 それからしばらくたった今、二人は思う。


「「もう二度と負けはしないぞ!! 槙島ッ!!」」


 そして八本の炎と風の剣は、氷の障壁の破片が砕け散る様と二人の成長を、槙島に見せつけた。


【完】

話末解説


■英霊(エインヘリャル)


【レオナルド・ダ・ヴィンチ】


 マシンガンなどの発明品を駆使して敵を征討する知恵者の英霊。

 元ネタはルネサンス期フィレンツェ共和国(現イタリア)の人物。

 芸術、力学、解剖、etc……などの多岐にわたる分野で業績を残した紛うことなき天才。



【モードレッド】


 宝剣クラレントと偽りの王剣の二刀流で戦う勇士の英霊。

 元ネタはアーサー王物語に登場する、勇猛で狡猾な騎士。

 主君であるアーサー王の甥、もしくは不義の子など、出生には諸説がある。

 アーサー王が進軍のための留守中に反旗を翻した。

 最期はアーサー王との決戦の最中、王に致命傷を残して絶命したとされる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。