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ルイスと許嫁の王女様

セシリア誘拐事件から、しばらくの月日が経った。

あの夜に起こった傷(僕の魔力器)は癒えぬまま、ただ季節だけが過ぎていった。


対してセシリアの怪我(擦り傷程度)は既に癒え、今では教団の仕事を手伝うほどに元気を取り戻している。

何故だかやけに張り切っているように見えたのは、きっと今回の件に責任を感じているのだろう。


「待っててください、あにい様」


っと満面の笑みを見せた時、空元気にも思えたが、それ以上に違和感を覚えた。

だが空元気も元気のうち。落ち込むよりもマシということで追及はしない。


僕自身も減った魔力に不便はあるものの、日常生活に支障は出ない程度には慣れてきた。


―――そして、一番の問題がやってきた。


「というわけでルイス、今年から魔術学園へ入学してください」

「……はい、かしこまりました。お母さま」


ほんの少しは期待していた。

セシリア誘拐事件の影響で延期になるのではないかと。

できれば中止にでもなれば―――と。

だが残念ながら、魔術学園への入学は避けられなかったらしい。


原作からは大幅に脱線しているはずなのに、どうしてこういう所だけ律儀に準拠するのだろう。

まぁ仕方ないけれど。


この国では魔術を公の場で使うには免許が必要だ。

今まで僕が魔法を使えたのは、あくまで私有地内だからにすぎない。

初級魔法なら黙認される場合もあるが、中級・上級、あるいは仕事で用いるなら免許は必須となる。


ストレイ家の名があろうと、その事実は変わらない。

ゆえに魔術学園に入学し免許を取るのは既定路線。

問題は―――


(僕が“漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス”を持っていること。

 そして魔力量が激減したことを、バレずに過ごせるかどうか……)


学園生活には当然、実技試験や対人戦、新魔法の習得が含まれる。

ゲームのプレイヤーとして体験した記憶が、今さらながら胃を痛ませる。


幸い、入学手続きの一環である魔力量測定は既に済んでいた。

試験管はセシリアで、時期も今回の事件より前で魔力量が全盛期時代。

“歴代一位”の記録に驚かれたのは今でも覚えている。

魔力総量は減少しない世界。余程のことがなければ再試験もない―――それだけが救いだった。


「それとルイス。せっかくですし、魔術学園に入学することを王家へ報告しましょうか」

「!?」


母アリシアの言葉で、僕は一つの事実を思い出した。

魔術学園編からは、あの人と関わることになる―――


「プロメティア王国の第三王女、エミリア=プロメティス殿下。

 あなたの許嫁に」

「……」



我が国、プロメティア王国の中心にある城下町。

その中央にそびえるのは王城。


ゲームで見た時はスチル一枚に過ぎなかったが、現実の三次元で目にすると、その荘厳さにただ圧倒される。

ストレイ家の屋敷も広大だと思っていたが、ここは別格だ。


「ルイス様、手続きが終わりました。こちらから入室できます」

「ありがとう、シイナ」


護衛兼お守りのシイナに導かれ、僕は城内へ足を踏み入れる。


廊下は豪華絢爛な装飾に彩られ、巡回する近衛兵と多くの使用人が慌ただしくも優雅に行き交っていた。

その光景を眺めつつ、案内役のメイドに導かれ、応接室の前に立つ。


「こちらにエミリア殿下がお待ちです」


僕の許嫁。前世では許嫁どころか恋人すらいなかった僕。

なんだか大切な過程を飛ばし過ぎている気がするわけだが。


考えてみれば、このエミリア殿下は主人公の攻略対象なわけだろ?

……もしかして僕、恋人がいたことないのにNTRされる未来確定なの!?


「どうされましたルイスさま?」

「いやぁ、もしエミリア殿下に愛想を尽かされて、婚約が解消したらどうなるのかなって」

「そのようなことでしたか。心配ご無用ですよ」


シイナの言葉に安心した。

そうだ、別に自由に恋愛してもいいはずだ。

NTRが決まっている未来なら、普通の恋愛をするチャンスがむしろ―――


「その時はシイナも一緒に切腹します。ですから安心してください」

「死亡確定なの!!」


ていうか殿下が主人公に惚れるのが既定路線なら、僕リスキルされるんだけども……。


「ルイスさま、私は席を外しますね。将来のお話、たくさんあるでしょうし」

「シイナさん!?」


裏切られた気分で振り返るが、シイナはすでに別のメイドと談笑を始めていた。

助け舟は望めない。


深呼吸し、僕は扉をノックする。

「どうぞ」―――凛とした声が中から返ってきた。


「失礼します」


中に入ると、そこには一人の女性が立っていた。


「久しぶりでございます、ルイス=ストレイ様」

「この度はお時間をいただき、感謝いたします。エミリア殿下」


エミリア=プロメティス。

建国の母の名を継ぐ、正統なる王家の血。


金の髪は丁寧に整えられ、紺碧の瞳は慈愛を湛えていた。

優雅に身を傾けて礼をするその所作はあまりに自然で、思わず格の違いを思い知らされる。


―――だが、僕の目は捉えてしまった。

その笑みの奥に、ほんの一瞬だけ、冷たい光が走ったことを。


そして原作でルイス=ストレイのことを常に疑い、監視し、いち早く裏切りものだと見抜いた―――魔王(ルイス)が最も警戒していた人物。


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