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チート魔法は誕生日待ち!?

「まずは現状の確認をしよう」


転生したと気づいたその日、僕はワザとらしく口に出し現状の整理を始めた。


「理由はわからないけど今の僕はゲームの登場人物だったルイス=ストレイになっている。

 ルイスとしての記憶はあるけど多分所有権?は前世の僕のが優先…かな?」


わからないことに状況にわからない予想を重ねて余計にわけわからないものの改めて自分の姿を確認した。


部屋のドレッサーに取り付けられた鏡に映るのは青味がかった白髪に碧眼の美少年。まだ少年であるというのも理由だろうけど中性的な容姿をしている。


少し気になる点があるとすれば僕が知っているルイス=ストレイと比べて印象が幼く感じた。

プレイヤー視点との違いとも思ったがルイスの記憶を辿るとすぐに理解できた。


「まだ12歳になっていないのか…」


また確かめるように呟いた。

ゲーム開始時のルイスの年齢は12歳になっていた。というのもゲームの序盤の舞台は魔術学園という12歳から入学できる学園で始まるからだ。

そこに入学した主人公はルイスやヒロインたちと仲を深め、卒業と同時に魔王討伐に出かける―――というのが大筋の流れだったはず。


「つまり僕はまだ学園に入学していないし、誕生日も迎えていない。

 ということはまだアレを使えないのか…」


僕は一度椅子から立ち上がると部屋の中央の空いたスペースに立った。

そして―――


「漆黒に染まり根源の力よ。我が呼びかけに集い、ひれ伏し、染まれ!!

 漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス!!」


とてもカッコいいポーズとクールでありながら闇を感じる声色で高らかに叫んだ。

だが部屋の中も僕の身体にも決して変化が起きることはなかった。


「やっぱりまだ漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスの力は持っていないのか…」


僕は確かめるように部屋に備えられていたコップを手に取り、中に薄く入っていた呼び水に魔力を込めた。

すると雨露程度の呼び水はコップ一杯に溢れんばかりに増えていき―――。


「あっちょっ、冷たいっ、ヤバ!!」


コップから溢れた冷たい水。慌てて魔力を込めることを中止する。

本気を出せばこの部屋一杯の水を生成できるだろう。

つまり魔法が使えないというわけではないわけだ。


漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスはルイス=ストレイの代名詞とも言える魔法だった。

この世界が生まれた時に魔法【根源魔法(マスタールール)】 の一つであり、普段この世界の住人が使っている魔法とは根本から原理の違う魔法―――とゲーム内で説明されていた。


伝説の存在とされていた魔王が使用していた魔法であり、その力を12歳の誕生日を迎えたルイスに受け継がれたらしい。しかも魔王の残留思念も一緒に体内に取り込まれ、魔王は復活の時を待っていたというのが漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスを手に入れるまでの流れだった。


まだ漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスもとい魔王の力を手に入れていないのは良い知らせでもあった。

魔王に取り込まれるというのはそれだけリスクが生じてしまうのだから。

そもそも死に際を台無しにされない方法として魔王を復活させないというのが一番手っ取り早い。となると漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスの力をどうにか手に入れるのを回避できれば…否


「ルイスと言えば漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス

 むしろ漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスを持っていないならルイスとして生きる理由がない」


うん、改めて結論を出す。漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスはマストだ。絶対欲しい。貰えないなら魔王の墓場まで取りに行く。それぐらいには僕は大好きだった。ので―――


「誕生日を迎えるまではやることはないかな?」


幸い僕の誕生日までは数日もなかった。

逆に言えば漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスの力を回避するというのももとより難しい話だったとも言える。


「とりあえずはルイスとして生きることに慣れることが当面の目標かな?」


僕はそう結論付けると部屋の扉に手を掛けた。

そして―――


「おはようございます。ルイスさま」

「…おはよう。シイナ」


ごくごく当たり前のように彼女は立っていた。

亜麻色の髪の毛をふんわりとなびかせた眼鏡をかけたメイド服の女性。

ルイスの専属メイド兼教育係。そして―――


(魔王軍の幹部にしてゲーム内もっとも人類を殺した極悪人(テロリスト)


シイナは不気味なほどにこやかな笑みをこちらに向けていた。



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