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転生したらラスボス系裏切り者貴族(最後真の黒幕に殺される)でした。

頭痛と共に今まで生きてきた記憶とは全く異なる人生を歩んだ記憶が僕の脳裏を焼き付けた。


前世の記憶を思い出したということなのか。

それとも別の人間の魂に入り込まれたのか。

または全く別の理由なのか。

今の僕には確かめる術を持ち合わせていなかった。


ただ1つ言えるのは、今のこの身体には2人分の人生の記憶が入っているという事実だけだった。


1つはこの身体の持ち主「ルイス=ストレイ」として生きてきた記憶。

名家の貴族として生まれ、両親と妹と暮らす12歳の少年としての記憶。

容姿端麗、成績優秀。王家の第三皇女様を許嫁に持つ絵に描いたような理想的な人生を歩んでいた人物の記憶だった。


そしてもう一つの記憶は―――「ルイス=ストレイ」という存在が、いやこの世界そのものがゲームの世界であると認識している記憶だった。

剣と魔法の世界で魔王を討伐する旅に出る王道ファンタジー…とは少し言えない要素もあるそんなゲーム。


僕は確かにこのゲームを遊んだことがあった。

それはもうやり込んだと表現しても良いほどには。


そんなゲームをやり込んだ世界で僕は―――確かに死んでいた。その記憶を僕は持ち合わせていた。

不治の病に冒されたわけでも、テロリストに立ち向かったわけでもなく、ただ自動車に轢かれての交通事故。


僕の死は高齢者の免許返納に多少寄与する程度の影響を残し、幕を閉じたのだった。

死んだ今でもあまりに呆気ないと思ってしまう。


1度目の死を迎えた。その事実を自覚し、認識した。自己というアイデンティティの喪失。では今の自分は何者だという当然の疑問。死ぬ前の記憶を持ち別の身体の僕は同一人物と呼べるのかという思考実験にも似た疑問。それらが僕の脳内を責め立てるように駆け巡り―――


(まぁ転生できたし別にいいか)


という楽観的な結論で終息した。

別に前世は学者でも哲学者でもなかったしね。


何より今はただこの身体に転生?できたことがたまらなく嬉しかった。

それだけ僕にとってルイス=ストレイという存在は憧れの存在だったのだから。


ルイス=ストレイ。

ビヨンド・ファンタジーというゲームの登場人物で、立ち位置としては主人公の友人でありゲームの序盤から仲間になる相棒的ポジション。

オールラウンダーという言葉を体現したように剣も魔法も回復も高いレベルで何でもこなせる立ち位置であり、縛りプレイをしなければまずパーティーに必ず入る強キャラ。

ゲーム開発側としても救済処置的な意味でもあったのだと思う。


キャラクターとしては爽やかイケメンでありながらしっかり冗談も通じるタイプで、主人公との絡みも他のパーティーメンバーとの絡みもすごく面白くて、ルイスが絡むキャラストーリーは何度も読み返したくなるほどに笑えて。あと世話焼きな面もあって親戚のおばちゃんかなってぐらいヒロインたちとくっつけようとお節介を焼いたりして――――


だけど最終章にてルイス=ストレイこそ本作の黒幕であり、主人公たちが倒すべき魔王の正体であると判明。

根源魔法(マスタールール)である【漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス】という超絶カッコいい魔法を操り、主人公たちに襲い掛かる。


最終戦では主人公との一騎打ち。

互いに魔力が枯れ、武器は壊れ、最後は素手での殴り合い。 さっきまで万単位のダメージが出ていたにも関わらず、最後は一桁のダメージで互いの死力を尽くす演出には心を打たれた。

HPが1になったルイス。最後に彼が本当に守りたかった者。魔王として生きた理由が語られて、許されるはずはないのに共感して、主人公は血に染まったルイスの手を、それでも仲間だと言って手を差し出して――――


ルイスの身体を引き裂くように現れる全てを台無しにする真の黒幕の登場。

さっきまでの戦いがZENZAと言わんばかりのセリフの数々。

何が「あれは所詮捨て駒、出来損ない。我こそ真の【漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス】世界は我が手の中に―――」だよ。シナリオライター途中で変わったんか!クライアントに無茶振りされたんか!!さっきまでの感動を返せ!!!


しかも悲しいのがエピローグ。 ルイスは結局生き返ることはなかったのはまだいい。良くはないけどそういう問題ではないんよ。

ビヨンドファンタジーはヒロイン攻略要素もあってエピローグはそれぞれのヒロインごとに変わってくる。


王家に嫁ぎ次期国王になる展開や、城下町でヒロインと一緒にお店を切り盛りする姿。もう一度冒険に出る展開などなど色々あったしボリュームも十分あった。あったのにだ。


だけど誰もルイスについて触れてないの!!まるで初めからいなかったように!!

記憶でも消されたんか?裏切り者だから触れたらいけない存在扱いされた?流石にあんまりじゃない!? まぁまぁ100歩譲って他のヒロインならまだわかる。尺の都合もあるし、せっかくのエンディングであんまり脱線させてもねって話だし。だ・け・ど・妹!!お前は何か触れるべきだろ!!お前だけはルイスのこと思い出さないといけないだろ!!お兄ちゃん君のために世界を敵に回したんだよ!!何で墓参りイベントすらないのさ!?流石にあんまりじゃないかな!!


「コホン」っと一度咳払いをし、無理やりに思い出から現実へと思考を戻す。


思い出のゲームで良い意味でも悪い意味でも心に刻みつけられたせいで思い出すだけでツッコミを入れてしまった。

だがおかげで自分の置かれている状況を今一度理解することができた。


どうやら僕は後に世界を敵に回すラスボス系黒幕貴族(最後に殺される)に転生したようだ。 このまま進めばきっとシナリオ通りに進み、主人公たちと旅に出て、最後は真の黒幕に殺され、なおかつ誰にも思い出されることなく2度目の死を迎えることになるのだろう。


それはあまりにも報われない人生だろう。

ならばどうするか?


シナリオを投げ出して平穏な日常を過ごす?―――違う

主人公と和解して先に真の黒幕を倒しておく?―――違う

前世のゲーム知識を活用してチート無双でもする?―――違う!!


それは前世から思い描いていたことだった。

僕がシナリオライターならルイスの最後はこんな風になんかしない。

もっとカッコよく、プレイヤーにもキャラクターにも一生刻み付けられるようなそんな死に方にしたかった。


これはある種の僕からゲーム制作者への反逆だった。

ルイス=ストレイとしての知識。

漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネスというチート魔法。

そして前世のゲームの知識を利用して―――僕は最高にカッコよくこの世界で死んでやる。


僕の2度目の人生は死ぬことを目標に掲げて今始まったのだ。


はずだったのが―――――


「わかりました、切腹します」……ゆるふわメイドはサムライ気質で

「今夜は枕投げと恋バナをしようと思うの」……毒親は思春期に入って

「ご主人から他の女の匂いがします」……お供のタヌキはメンヘラで


チート【漆黒の超越者ビヨンド・ザ・ダークネス】は、なんか光輝いていて―――


何か思ってた異世界転生と違う!!




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