第二十八話 歩みを止めないように
「ほんっとにも〜……今後あぁいう行動は控えてよね!」
あれから、更に一日が経った昼間。
レオンはサーペンとの他愛ない雑談を終えて、病室に帰還。
その際に、サイトが正座させられてマナに説教をされている姿を目撃。
レオンが戻ってきた時、マナはキッと勢いよく睨みつけて彼を捕らえると、そのままみっちり滾々と説教を詰めていき今に至る。
既にサイトは退出しているが、説教をされてかなり堪えていたそうで……フラフラとした足取りで出ていっていたのは、レオンの記憶に新しい。
「悪かったって……流石にもう出ていかねぇさ。長々と説教を食らわされるのも、ごめんだしな」
そう言うと、レオンはググッと一つ大きな背伸びをする。
あれからのサーペンとの会話は、とても穏やかに過ぎていった。
他愛のない内容で話す事が、どれ程愛おしいか。
よく分かった気がすると、彼は一人納得する。
それと同時に思い起こされるのは、サーペンとの会話の終わり間際に話した内容で。
丁度そのタイミングで、マナがレオンにある話題を出した。
「そういえばレオン。サーペン君の事は、もう聞いてる? 聖ドゥケレ騎士団の人が、アヴァルにある監獄タルタロスに彼を連れて行くって話」
「……あぁ、その事な。アイツ自身から、その話を聞かされたよ。アンチに邪な心を利用されたのは事実だから、その罪滅ぼしの為に行くって」
「……そっか。レオンは、大丈夫なの? その、連れていかれる事については」
マナは心配そうに尋ねていく。
アンチの性質を考えれば、サーペンが無実に近しい状況である事はレオンが一番感じていることだろう。
だから、この現状に最も納得していないのもレオンだと思っていた。
しかし、マナが尋ねた時のレオンの表情は、どことなく納得がいっている様に見受けられると彼女は感じていた。
だからこそ、心配が勝ってしまう。
そんなマナの不安を感じ取ったのか、レオンはニヤリと勝ち気な笑みを浮かべながら彼女に返答していく。
「アイツが決めた事なんなら、俺は信じるだけだ。それに俺は……どこか、安心感みたいなのを覚えてる」
「安心感?」
「あぁ。今回の一件で、俺もサーペンも間違いなく強くなれたと思うんだ。俺は原点に立ち返れたし、アイツは……アイツ自身と向き合うきっかけになった。だから、心配はいらない。どこまでも信頼が出来るって思えるから、安心感なんだよ」
屈託の無い笑顔で、曇りのない瞳で、レオンはそう口にする。
ある日始まったすれ違いから、数年後の和解。
犠牲もあったが、得るものもあった。
これからのレオンは、迷うこと無く突き進んでいけるだろう。
そんな彼は、とある人物の事を思い返していた。
自分を間接的に救ってくれた、ある人物を。
その人へ、レオンは小さく感謝を告げる。
「お前にも感謝、だよな。サイト、あんたも絶対になんとかなるぜ」
「ん? レオン、何か言った?」
「いぃや、何も。さて、じゃ俺はゆっくり眠るとするぜ〜」
少し照れくさく、けれど絶大な礼を添えて。
彼は明日に向けて、歩もうとしていく。
――――――――――――――――――――――――――
時を同じくして、ボーデンの広場にて。
サーペンは、聖ドゥケレ騎士団の面々に馬車へと乗せられている。
理由は、サーペンが厄者に与して村人達を命の危機に陥らせたという事実による罪。
その罪を裁かれる為に、彼はアヴァルにある監獄タルタロスへと連れられようとしていた。
そんな彼の下に、サイトが駆け寄ろうとする。
が、しかし。
「こら君、近づいてはいけない!」
「っ、どうしても駄目ですか!? 最後に一度だけ、話でも!」
行く手を阻まれてしまう。
どうにかあれこれと事情を説明するが、通せないの一点張りで取りつく島もない。
そんな、彼らの下に。
ゼーエンが素早くやって来ると、サイトの服を掴んで騎士団の団員から引っ剥がしていく。
突然の事に驚いたサイトは毛を逆立たせ、ゼーエンを睨みつけながら抗議する。
「なっ! ゼーエン何をするんだ、離せよ!」
「……すまないな、騎士の面々。この馬鹿は後でしっかりと言い聞かせておく」
「あ、あぁ。感謝する、黒兎の方」
サイトの視線には一切目を向けず、ゼーエンは片方の失くなっていない長い耳を下げながら騎士団へと謝罪の言葉を口にしてその場を収めた。
その間に、サーペンは既に馬車の中へと入ってしまう。
搬入が完了し、後は出発するだけとなった時にゼーエンはようやくサイトを手放した。
すると、サイトは更にゼーエンへと睨みを効かせて口火を切る。
「あんったなぁ……! 何で止めたんだよ!」
「寧ろ止めないほうが良かったのか? 何故、未練たらしくサーペンへと言葉をかけようとした。お前達が起こした昨夜の出来事を通じて、サーペンの迷いはある程度晴れていると思うのだが」
「っ、それは……」
口籠るサイトに、ゼーエンは諭すように言葉を続ける。
「信頼していないわけではないのだろうが、気にかけすぎるのもどうかと思う。優しさからくる行動とはいえ、度が過ぎればそれは悪癖だ。何も言わず、敢えて相手のやりたい通りにやらせていくのも一つの信頼だぞ」
ゼーエンの言葉には、どこか実感の籠もっているようなものがあるとサイトは感じる。
それは、オウンズ家の屋敷で暮らしていた時にも感じていた事で。
この状態になった時、いつもサイトはゼーエンに逆らえずにいた。
言われた言葉は、その全てが正論と言えるものだったから。
サイトは目線を逸らしつつも、最後には観念したように息を吐き出していき、近くにいた騎士団の一人に頭を下げる。
「すみません、でした。困らせてしまって」
「……いえ、良いのですよ。確かに我々は権利を行使する立場でありますから、その様な反感を買われることも少なくないのです。それに、貴方の気持ちも分かりますから。ホリィ様も酷い扱いはしないと仰られています。我々を信じて頂けると、幸いです」
「……はい」
そうして、馬車は旅立っていった。
滞りなく時は進み、人々は恐怖を薄れさせていつも通りの日常を営んでいく。
サイトは、小さく。
ゼーエンへと問いかけるように、言葉を零していく。
「ゼーエン……勇者は、偉い存在ってわけじゃないよね?」
感じ始めていた疑問、勇者でない存在からの認知。
サイトはそれを質問した。
そんな質問に対し、ゼーエンはゆっくりと口を開いて答えていく。
「……その質問に答えるとするなら、その通りだと俺は言う。だがな、サイト。力を持つ者は、それ相応の責務を果たさなければならないんだ。だから、必然的に敬われる立場になる。勇者でない大衆には何の罪も無いし、悪いのは災厄達である事を忘れるな」
「それは、そうだけど! けど、サーペンさんがあんなに悪く言われるのはやっぱり……!」
「そうだな、良くないことだ。だからこそ俺達は厄者を、災厄をいち早く滅ぼさねばならないんだ。……立ち止まってはいられないぞ」
ゼーエンはそう締め括り、その場を後にする。
時刻は昼間であるが、天気は薄暗く曇っておりどこか暗然とした状態。
サイトは一人、その場に立ち尽くす。
動く気力が湧かず、ただただその場にいるだけ。
――――何の為に、自分は戦う。
ふと、そんな事を思ってみたのは何故なのか。
戦う理由はある。
世界を救う為、守るべき人の為……そう、それも理由だ。
けれど、一番は。
サイトの名を、この世に残す為。
その為に自分は戦っているのだと、改めて認識する。
しかし、自分は本当にその目的に向かって邁進出来ているのか?
救えているのか、守れているのか、人の記憶に残せる程の何かを焼き付けられているのか。
どれも無駄に、彷徨っているんじゃ――――
「おう、サイト。ここにいたのかよ、探したぜ」
思考の沼に沈みかけそうになった所に、聞き馴染みのある朗らかで快活な声がサイトの耳に届く。
声へと顔を向ければ、それはソウジで。
その蒼い三角の耳をピコピコと動かしながら、人の好い笑みを浮かべて近寄ってくる。
「ソウジ……」
無意識にサイトは口から名前を呼ぶ。
そのブレブレな抑揚に、ソウジは眉をひそめる。
「どうした、そんな迷子みてぇに不安そうな顔して。何かあったのか?」
「いや……別に、何でもないんだ。本当に、何でもなくって」
サイトは心配をかけさせまいと、必死に誤魔化す。
が、その言葉や体には少なからず震えが生じていた。
そんな彼を見たソウジは、ゆっくりとサイトの体に腕を回したかと思うと。
「……えっ」
優しく、抱擁をした。
何も言わず包み込み、子供をあやす様にして回し込んだ左手でサイトの頭をポンポンと叩く彼に、サイトはひたすらに困惑する。
何故、どうして、何でこんな事を?
恥ずかしいとか、そういった感情が湧き出てはいた。
止めてほしいと、拒否する事も出来た筈だった。
なのに。
――――何だか、心地良い。
思わず、目尻に込み上げそうになる涙を抑え込むサイト。
そんな彼の様子に気付いたソウジは、ニマーっと笑みを濃くしながら更に抱き留め、背中を優しく叩きながら言葉をかける。
「我慢しなくていいんだぜ〜。溜め込んでるものは出しちまった方が、楽になってスッキリするもんだ。俺も昔はそうする事が多かったし、今だってたまにモヤモヤを発散したりするしな〜」
ソウジは和やかにサイトへと語りかけていく。
自分の経験談を冗談交じりに面白可笑しく話していき、サイトの緊張を解そうとしている。
そしてそれは、何となくサイトにも伝わっているのだろうか。
気恥ずかしくなりながらも、サイトはソウジの頼りがいのある胸に顔を埋めながら、ポツリポツリと言葉を零していく。
「……悔しいんだ。多少力を使えたって……僕はそこまで強くない。それに、説得力だってまるでないから、どこまで言っても理想論でしかなくて。誰かを救えてると、思えない。それが、凄く、悔しいっ!」
言葉は絶え間なく溢れ出る。
それらは全て、ここボーデンでサイトが感じ考えた事であり、生まれた悩みの種。
サイトとしての役割で、全ての人を救ける事に全力で取り組んでいるつもりだ。
けど、実力は伴っていない。
何も出来ていないのだと、彼は自分を責め立てて抱え込んでしまう。
どんどんと深く、闇の沼に沈み込みそうになる彼。
そんな、彼に対し。
「そうか? 俺はそうは思わないけどな。お前は既に、レオンとサーペンを救ってるんだぜ」
ソウジはあっけからんと、そう言い放った。
サイトは目を見開き、ソウジを見つめる為に顔を上げる。
サイトの視線にソウジは、それはそれは満面の笑みを持って応える。
少なからず困惑をするサイトに向けて、ソウジは続けて言葉を紡いでいく。
「レオンは、お前が作戦前夜に言葉をかけてくれて助かったって言ってたし、面会の時にサーペンもお前が諦めずに戦ってくれたから希望を持てたって話してたよ。お前はちゃんと、理想を実現してるんだ。誇っていい、胸を張れ」
ストン、と。
それらの言葉はサイトの胸へと引っかかりなく落ちてきた。
ソウジの気持ち……励ましてくれる想いが混ざったそれに、サイトは激しく心を揺さぶられてしまう。
グイッ、と彼はソウジを腕で押し退けて離れる。
心配そうに見つめるソウジとは逆方向へ、サイトは翻る。
顔を見られたくない。
情けない姿は、見せられない。
そのまま別の場所へ移動しようとするサイトに、ソウジは。
「サイト! いつでも相談に乗るからな! お前は独りじゃあないぜー!!!!!」
そう、言葉を残した。
サイトは胸に拳を当てながら、その手をギュッと握りしめる。
ゼーエンの言った事は、正論だ。
気にかけすぎることは良くないし、それは逆に信頼感を損ねてしまう。
けど、ソウジの様に傍について寄り添う事が悪であるとも思えない。
どちらもが、それぞれの信念の下に動いている。
間違いではないし、各々の生き方を貫いているだけだ。
――――だったら■/俺は、どうしたいんだ?
――――――――――――――――――――――――――――
サーペンがアヴァルへと連れられてから、更に一日が経過したその日。
『神秘を指し示す者』のギルド以外の、他ギルドのメンバーはそれぞれの地へと帰還する。
荷物を纏め、後は馬車に乗って揺られながら帰るのみ。
曇り空は変わらず、どんよりとした光景。
そうした状況下で、様々な人が様々な人と別れを惜しむように会話を繰り広げている。
その内の一組、サイトとソウジ、そしてレオンにアゲハは別れの挨拶をしていた。
「……じゃあ、レオン。また会おう。今度はもっと強くなって、頼られる人になってるから」
「ははっ、俺もだぜ。サイト、あんたはいつかすげぇ奴になるだろうって、俺は思ってる。だから自信持てよ。あんたなら絶対、強くなれるさ」
「っ、ありがとう。レオンの方こそ、きっと強くなれるよ」
サイトとレオンの会話を、ソウジは真剣な表情で聞いている。
邪魔をしないように、少し遠巻きにその様子を眺めて。
そんなソウジに、アゲハは話しかける。
「貴方はレオン君に話しかけないの?」
「ん? まぁ、レオンに俺からかける言葉は必要なさそうだからなぁ。俺からしたら、あんたの方こそだよ。……つっても、話しかけない理由は俺と同じ、だろ?」
「あははっ、そうだね。……もうレオン君は心配いらないから。これからもっと強くなるよ、彼」
そうして話す彼らの下に、ライアとゼーエンが歩いてやって来る。
軽く手を挙げながら、ライアは気さくにソウジへと挨拶を交わした。
「やぁ、ソウジ。それにアゲハも。今はお子さんを眺めている最中、なのかな?」
「お子さん?」
「よぉライア。あんな感じに素直で真っ直ぐな子供、いたら幸せかもなぁ。っとまぁ、そんな冗談は置いといて、だ。あんたらはこれからどうするんだ?」
「私達は、一旦アヴァルへと戻る事にするよ。纏めた報告書を出さなければならないし、そうでなくとも伝えておくべきことが山積みだ」
ライアは手を広げながら肩を竦め、ため息をつく。
少なからずの疲労が募っているのだろうか、彼女の目の下には隈らしきものも見えた。
伝えなければならない事。
それは、どの事であろうか。
そんな疑問を抱いたソウジに感づいたのか、ライアは薄く笑った。
「ははっ、気になるかい? まぁ、一つは君も相対した人物についてだよ。ミア……彼女は特に、その動向を観察しなければならない内の一人だからね」
「あぁ、あいつか。確かに危険だろうから、世界全体で警戒しなくちゃならないし……その為にまずアヴァルに伝えておく事は必要か。あそこが一番、情報を世界に広めやすいからな」
「そうだね。それに、アヴァルには多種多様な種族が多く集まってる。情報の伝達に関しても随一だし」
「そういうコト。伝令役がかなーりいるからねぇ。特に獣族の中でも鳥型は、空を飛び渡る事が出来て伝令役等にピッタリの人材だからねぇ。頼りになるよ」
ライアはおどけたように話していき、それに乗っかってソウジやアゲハも笑う。
この緩んだ空気の中、ゼーエンが片方の長い耳をピクリと動かして気配のあった方向を見る。
近づいてきていたのは、ランス。
白の体毛は相も変わらず美しく見る者の目を引く彼は、その変わらぬ無の表情のままにソウジ達へと挨拶をする。
「楽しそうだな、お前達」
「よぉ、ランス。あんたも自分のギルドに戻るのか?」
「そのつもりだ。俺も、そこなライアの様に自国のスノウステイトにあるギルドへ情報を伝達せねばならない。厄者がまた目覚めて暴れた以上、こちらでも更に対策を講じねばならないからな」
ふぅ、と嘆息するランスの表情は変わらぬままだが、少なからずの疲労は感じられる。
その姿に、ソウジ達は労いの笑みを浮かべて応えた。
と、アゲハも思い出したかのように自身のこれからの事についてを話し出す。
「私も、ヒノモトの一座に戻ろうかなって思ってるの。今回呼ばれたのも、アンチへの対抗策としてだから……また一座の皆と一緒に、頑張るつもり」
「えっ。アゲハあんた、ヒノモトの一座に入ってるのか?」
「うん、そうだよ? 『楽ノ勾一座』っていう、“全力演舞でお客を笑顔に“がモットーのサイッコーな一座に入ってるの! そういえばソウジ君も、名前的にヒノモト出身だよね? ヒノモトには帰郷したりしないの?」
アゲハの問いに、ソウジは少し居心地悪そうに視線をそらしていく。
そうした彼の様子から、何かを察したのか。
アゲハは優しく微笑みながら、その肩をポンと叩いていく。
「まっ、また帰ってきたくなった時に帰ってきなよ! そこでサイト君と一緒に、私達の一座も観に来てさ! その時は特別招待してあげる!」
「あぁ……ありがとな、アゲハ。その時はよろしく頼むよ」
「うんうん! すっごい演舞、見せてあげるね!」
にこやかなアゲハに、ソウジも釣られて笑みを零した。
和やかに話す彼らの下に、レオンと別れたサイトも戻ってくると、反応を示す。
「アゲハさん、ライアさん、ランスさん! それに……ゼーエンも。皆、それぞれのギルドに戻るんだよね?」
「そうだよ、サイト君。だから暫くのお別れだ。あぁでも、また何か話したいことがあればアヴァルに連絡を送ってくれると良い。対応するから」
「うん、分かった。ライアさんも、困った事があったら頼って! ……あっ、そうだ。ランスさん、その……」
ライアとの会話の最中、何かを思い出したかのようにサイトはランスへと言葉をかける。
その微妙な話し具合から、ランスは察する。
サイトへと近づくと、彼だけにしか聴こえない程の距離まで顔を近づけ、潜めた声で。
「安心しろ、誰にも言わん。それに、この問題はお前自身が解決しなければならない事、だろう?」
「っ! ……うん」
「ふむ……ねぇ、君達。何か、隠し――――」
ものの数秒、少しの会話をもってその密談は終了した。
が、ライアは目ざとく秘密に気付いて何かを尋ねようとする。
しかし。
「ライア、そろそろ俺達も向かおう。ここで時間を浪費し続けるのは良くない」
ゼーエンが出発を促す。
それは、サイトの事を察しているのかいないのか。
ともかく言ったことはその通りなので、ライアは渋々といった表情でゼーエンの言葉に従う。
「ん、そうだね。それじゃあ、私達は行くよ。サイト君、ソウジ君、ランス君……元気でね」
そうして、二人はアヴァル行きの馬車へと向かった。
そんな彼らを見送り、次はアゲハ。
彼女はその華やかな笑みをサイト達に向けて、手を振る。
「じゃあねー! 今度会う時も笑顔で会おー!」
そう言って、彼女も港町への馬車へと向かっていった。
そして最後は、ランスの番。
彼はサイトとソウジの両方を、その緑の眼で見つめると……相変わらず変わらぬ表情のままに、一言。
「またいつか、逢おう」
そう言って、彼もまたラヴィーネ行きの馬車へと歩いていく。
そうして、残ったのは二人だけになった。
サイトはランスに言われた言葉を、心の中で反復する。
――――自分自身で、解決をしなければならない事柄。
そうだ、そうなんだ。
この問題は、■/俺が、独りで――――
「サイト」
背中をポンと叩かれる。
見ればソウジが、にこやかな顔をサイトへと向けていた。
そのまま彼は、先を歩いていく。
そして、後ろを振り向くと手を差し出して。
「帰るぞ」
雲がかかった空から、光が射し込まれる。
その光はソウジを、そしてサイトをも照らし出していく。
一筋の光、輝ける灯り。
あぁ、そうだ。
今ここで、悩みすぎても意味はない。
なら、今はただ。
「うん」
一歩、一歩を。
踏みしめていく、のみなのだから――――。
ここまでで、第一章は終了となります!
次回からまた幕間を挟み、そこから第二章へと入っていきます!
ので、是非よければ感想等など送ってくださると幸いです!
そして、ここまで読んでくださっている方々にも感謝を!
これからも『フォーチュン・ライト』の物語を楽しみにして頂けるとありがたいです!




