表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォーチュン・ライト  作者: おじさま
第一章 叫び猛れ、獅子の咆哮 〜心実の想い〜
20/37

第二十話 霧の幻惑に立ち向かえ

〈……ふっ、ははっ、あははははっ!! 何を言うかと思えば、僕を倒すだって? 寝言も大概にしろよ〉


 その一言と共に、前方に霧の怪物が姿を現した。

 大小さまざまな怪物達は、獲物に狙いを定めて荒い息を吐き出している。


〈ぶっ潰す……凄惨に、残酷にぃ!〉


 アンチの一声が合図となり、怪物達はサイト達へと襲い掛かった。

 それらに対し真っ先に反応したのは、サイト。

 剣を生成し、下方へと向けると意識を集中させていく。


「芯技、解放」


 呟きと共に、サイトの体から吹き荒れるは豪風。

 その中心にいるサイトは、目を閉じたまま言葉を続けて行く。


「猛き風よ。果敢に進み、命を繋ぎ。我が征く道を切り開け!」

 

 アゲハとランスが目を見張るほどのその嵐は、やがて剣の切っ先に収束していく。

 そしてサイトは、そのまま剣を上部へと掲げ……化け物達がサイト達に到達する前に。


「威風永劫――――鳥嵐アウィス・テンペスタス!」


 ――――その剣を振り下ろした! 


「――――!!?!!??!!??!!?」


 凝縮された嵐は化け物達を切り刻んでいく。

 勇猛に、荒々しく。その体を切断していき、断裂した所からは黒い霧が噴出する。

 全ての怪物達を巻き込んだ嵐はやがて止み……辺りには静寂が訪れる。

 はぁー、と荒く息を吐き出すサイト。

 その顔には汗が染み出しており、毛先から垂れていく。

 疲労と共に彼は、アンチへと高らかに叫ぶ。


「どうだアンチ! これが僕の力だ! お前を倒すなんて、わけないんだよ!」


 拳をグッと掲げて彼は言う。

 挑発的、そして大胆。

 そんな彼の姿を、ランスはジッと見つめていた。

 その魂の在り方を、彼は見定める。

 そしてそれは、アゲハも。

 普段のサイトの様子を見ていた彼女に宿ったのは、僅かな違和感だった。

 が、それをすぐに振り払い、アゲハはサイトの言葉に続いていく。


「そうよ! サイト君の言う通り! 私達はあんたを倒して、必ずサーペン君を救うんだから!」


 指をビシッと指して、彼女は言う。

 そんな二人の挑発に対し、アンチは。


〈……ほんっとに君達勇者って、馬鹿だよねぇ? たかだかあの程度の怪物を消した程度で――――いい気になってんじゃねぇよ!〉


 乗った。

 乗った上で、彼はまた怪物達を生み出していった。


〈この軍勢に圧し潰されな! それに、仮にこいつらを倒した所で僕を見つけられないんじゃ意味がないんだよ! 諦めやがれ!〉


 アンチは叫ぶ。

 尊大に、そして荒れた口調で罵るように。 

 しかし、サイト達は希望を見失わない。

 各々が武器を構えて、臨戦態勢を取った。

 その姿に、アンチは気に食わなかったのか。


〈あぁ……ほんっとうに苛つくよ! 朽ちて、果てろ!〉


 最後にそう言って、大量の怪物達をけしかけた。

 迎え撃とうとするサイトとランス。

 そんな彼らに、アゲハは手早く声を掛ける。

 

「サイト君、ランス君。アンチの姿を見極める方法だけど……私が何とかする。だからそれまでに、時間を稼いでほしいの」

「時間を?」

「えぇ。私の踊りが完了すれば、それで全てが解決出来る。でもその間、私は踊りを止められない。踊りを止めてしまえば、効力が消えてしまうからね。だから時間を稼いでほしい。踊りを踊り切ったその時は――――」


 アゲハはそのままニッコリと笑みを浮かべる。


「私が貴方達に、とびっきりの勇気と輝きを与えてあげるから! お願いね!」


 そう言うと、アゲハは突然踊り出した。

 優雅に華麗に大胆に、迫力のあるステップを踏んでいく。

 唐突な出来事に、サイトは困惑する。

 が、何とかすると言っているのだからそれに期待して自分達は時間稼ぎをするしかない。

 覚悟を、決める。


「ランスさん、いける?」

「愚問だな。お前の方こそ芯技を使ったんだ。へばるなよ?」

「大丈夫さ。じゃ――――いくぞ!」


 そこから始まったのは、怪物達からアゲハを守る防衛戦。

 サイトは次から次へと迫りくる怪物達を、素早い動きで翻弄しながら尽く切り刻んでいく。

 足で踏ん張り力を入れて、跳び跳ね回って大立ち回り。

 そうして動き続けるサイトでも、漏らしてしまう怪物達はいる。

 それをランスが正確に凍りつかす。

 アゲハに迫る怪物達をその氷霜で凍てつかせ、砕いていく。

 その絶妙なコンビネーションが、アンチの猛攻をしのいでいた。


 その様子に、アンチは。


〈――――あぁ、ムカつくなぁ。ほんっとうにムカつくなぁお前たち勇者はぁ! どう考えても劣勢なんだから、諦めて死ね! 足掻いても無駄なんだよ!〉


 吠える。

 サイト達の想いを踏み躙ろうと、彼は新たな攻撃に転じた。

 アンチの叫びに呼応するように霧が蠢くと……そこから剣の雨が襲い掛かる。

 それは広範囲に渡り、踊るアゲハにも向かっていて。

 サイトは即座に飛び出すと、剣を捌く為に自身の持つ風の剣を振るう。


「はぁぁぁぁぁ!」


 雨のように降り注ぐ剣の弾幕を、サイトは弾いていく。

 しかし全ては捌けずに、何本かはサイトの腕や足に掠る。

 動きが鈍り、体勢を崩したその瞬間――――霧の怪物が好機と捉えてサイトへと瞬時に近づき、そのまま殴りつけて吹き飛ばしてしまった。


「がっ!?」


 地面へと打ち付けられ、倒れ込むサイト。

 その様子を見たランスは援護に回ろうとするも、他の怪物達が押し寄せてくるのを止めなければならず向かえない。

 隙が生じる。アゲハに怪物が迫っていく。

 アゲハは踊りを止められない。だから回避も出来ない。

 今は誰も、彼女を守ることが出来ない。


「アゲハ、さん!」


 サイトが大きく叫ぶ。

 怪物の巨手、鋭い爪がアゲハへと迫っていくその直前で――――。


「ギャギャッ!?!!?!?!?!」

 

 切り裂こうとした霧の怪物の、目の前に。

 突如として緑色の歪曲した空間が発生し、そこから飛び出してきた何者かによって神速の如き右フックを腹部へと繰り出された結果。

 怪物は塵となり、霧散した。

 アゲハを助け出した、その者の正体は。


「……レオン、か?」


 そう、レオンだった。

 先刻まで見ていた彼の姿からは想像がつけられない程に、今の彼は凛々しく猛々しい。

 そして彼らはそんな彼の姿を見知っている。

 何故ならばその姿は、覚醒石(デザイアギット)を発動した勇者……即ち自分達と同じであったから。

 レオンは、スゥッと一つ深呼吸を挟む。

 そして。


「俺はもう、迷わねぇ。そんで……俺の親友を弄びまくった厄者(クソ野郎)を、ぶっ倒す!!!!!」


 そう高らかに、宣言した――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ