第二話 出会い
「酒場、どこだぁ? う〜ん、街全体が広すぎて全く見つからないや」
意気揚々と屋根から飛び降りたサイトは、あれから道に迷ってしまっていた。
人々が行き交う街道も抜けて、今は人気の少ない路地裏でキョロキョロと辺りを見回している。
そんなサイトの様子を見たハヤテは、ため息交じりに中から言葉を漏らしていく。
『探していたんじゃなかったのか? 全く、お前は普段は理知そうに見えて、その実かなり直情的だな。呆れてしまうぞ』
「むっ、ハヤテがそれ言うか? お前はお前で、普段は体力をかなり使うからって外に出るのを躊躇うことが多いじゃんか。だから代わりに僕が探してるってのに……」
『……それはそれ、これはこれだ。とにもかくにも、路地裏から出た方がいいのではないか? 見たところ、酒場らしきものはどこにも見当たらんが————』
話している最中、中のハヤテの雰囲気がガラリと変わる。
何かの気配を察知したのか、サイトに警鐘を鳴らすようにして鋭く言葉を出した。
『サイト、前方の曲がり角から何かの吐息と足音がする。気をつけろ』
「……ほんとだ。走ってそうだけど、何かあったのかな?」
サイトは疑問に思いつつ、警戒をするようにいつでも動き出せる体勢を取る。
足音が、一歩一歩近づく。
そして、その瞬間は存外早くに訪れた。
「はっはっ————っ、誰、ですか!」
現れたのは、フードを被った人物。外套によって覆われている為に姿も見えない謎の人物に、サイトは驚いてしまった。
何故か。理由は————その人物の声がやけに高く、透き通っていたからだ。
背丈もサイトより少し小さいぐらいで、歳も十代後半あたりであろうか。
声の特徴から、サイトは目の前の人物を女性であると推測する。
そんな推測をしている間、女性はフードの奥から怯えた視線をずっとサイトへと向けていた。
サイトは敵対していないという証として、両腕を上げながら言葉を返していく。
「敵じゃない、とは言っておく。それより、君はどうしてここに? 何か慌ててそうだけど」
「っそうだ、今はここで止まってる場合じゃ……貴方、逃げてください! このままじゃ奴が————」
女性らしきフードの人物が、慌ててその様に大きく言葉を発するのと同時に————この場が、悍ましい空気で覆われていった。
「!?」
サイトはその一瞬で、全てを察した。
この気配、この全身を締め付けられるような感覚。
命を握られていると錯覚してしまいそうな、こんな殺意を浴びせてくる相手……サイトは、空が見える上空を睨んだ。
すると、そこにいたのは。
「楽しそうにしてんなぁ?」
背中に悪魔のような翼を生やし、特徴的な朱色の角を携えている。
そしてひと際視線を集めるのは、真っ赤に染まりきった不気味な目。
「俺も、混ぜてくれよ?」
この場で最もどす黒い異形の存在が、目の前に現れたのだ。




