表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第二章 アルデリア共和国編
64/171

第六十三話 引金


徐々に細くなっていくネメシスの光柱。


魔物は全ての足を焼き尽くされ、本体も二回りほど小さくなっている。

あと少しで押しきれるんだ……!!

少しでいい!!もう少しだけもってくれ!!


フッと光が消え、私は膝からガクっと崩れ落ちた。


魔力切れだ……。

倒しきれなかった……。


だがこれでもうあの魔物は何もできない。

きっと誰かがトドメを刺してくれるはずだ……。


杖にすがり、薄れゆく意識の中で魔物を見つめる。

ぼやけた視界の先に、一斉に攻撃を仕掛ける兵士達の姿が見える。


やった……。これで……。


ドオォォォォォーーーーーーーン!!


不意に鳴り響いた爆発音に、薄れていた意識が呼び戻される。


何だ!?何が起こった!?


先程まであった魔物の姿がなく、土煙の中に誰かが立っている。

その人物は外套を見に纏い、フードを被り顔を隠していた。


私はこの人物を一度見たことがある。

それはフランディアのスタンレーで巡礼を行っていた時のことだ。

私に対して魔力を発してした人物……。そして……。


そいつは私の方へとゆっくり近付いてくる。

倒れる私を見下ろして、自分のフードをゆっくりと捲くる。


その下から出てきた顔は……。


私だ……。


この人物はなぜか私、織部かおりの姿をしているのだ。


「始めまして……。いや久しぶりというべきかな?」


声まで私と同じなのか。私の姿をした人物……。

あのとき、私に箱を選ばせたあの生き物……。

コイツの正体は……。


「ジ……ノ……」


ジノはうっすら笑みを浮かべて私に尋ねる。


「楽しんでいただけたかな?」


その言葉を聞いて私は驚愕した。

まさかこの魔物はコイツの仕業だというのか!?


「何が……目的だ……」


私は声を振り絞ってジノに問いかけた。

ジノは笑みを浮かべたまま私を見下ろしている。


「目的は単純だよ。世界を壊すんだ。こういう魔物達を使ってね」


世界を……壊す……!?一体何を言っているんだ!?


「あるべき姿に帰すだけさ。それに……」


ジノは私の前にしゃがみ、顎を引き寄せて私の目をじっと見つめる。

私の姿はあのとき家族旅行に行った日のまま、全く変わっていなかった。

十二年も経てば、必ず変化しているはずなのだが、歳をとった形跡が無い。


「引金を引いたのはキミじゃないか」


どういう……ことだ……!?

私のせい……?

確かに生まれ変わることを望んだ。

でもそれがなぜ世界の破壊に繋がるのか……?


そのとき、ジノは何かに気付きバッ!と後ろへ跳躍する。

レクスの剣が空を切り、ヒュン音をたてる。


「お前は何者だ……?」


まるで重力が働いていかの様に、フワリと地面へ降り立つジノ。


「お前達もよく知っているだろう?」


「ドミネーター……!!」


ジノは再び笑み浮かべフードを被ると、私達に背を向ける。


「また会おう」


そう言うと煙のように消え去ったのだった。


レクスは私を抱き起こすと、ギュッっと自分の方に引き寄せる。


「すまない……。」


温かい腕の中でその言葉を聞いた。

絶えそうになっていた意識は、いよいよそこでプツリと途切れてしまった。




私が目を覚ましたのは、それから丸一日経ってからだった。そこは最後に立ち寄った村であろうと思われる。

ガチャとドアが空き、入ってきたレナが私の姿を見て涙を浮かべる。


「聖女様……!!聖女様ぁぁぁーーー!!」


レナは私に抱きついた。


「よかったぁ!!もう起きないかと思ったぁ!!」


私は抱きついたレナの頭を撫でる。


「心配をかけてしまいましたね。もう大丈夫ですよ」


私はレナに尋ねる。


「そうだ……!!他のみんなは大丈夫ですか?」


ニッコリ笑って頷ずくレナに、私はホッと胸を撫で下ろした。

そうか……。よかった……。本当に……。

毎度のことながら、本当によく生き延びている……。

仲間に恵まれている証だろう。


私は支度をしてみんなの前に顔を出した。レクスもアッシュも元気に立っているのだが、怪我は大丈夫なのだろうか?


「アッシュ……!!身体の方は大丈夫なのですか!?」


アッシュは力こぶを作って見せた。


「おう!あの時は死んだかと思ったけどな!!」


笑えない冗談はやめてくれよ!本当に危なかったんだから!!


「でもこいつが……」


アッシュは半分になった剣を鞘から抜いた。

そうだった。魔物との戦いで剣が折れてしまったのだった。


「どこかで新しいものを用意しなければいけませんね」


アッシュは珍しく不満そうな顔をしている。

いつもは何かを買ってあげると言うと凄く喜ぶのだけれど……。


「これは父ちゃんが買ってくれたんだ…」


そうか……。父親から貰ったものなのか。

それじゃあ愛着があるのも無理は無い。

しかし、アッシュはうちのメインアタッカーなのだ。

剣がないと困る。


それを聴いていたレクスが何かを思いついたかのように私に教えてくれた。


「ローディセンに着いたら、ウェルクという鍛冶師を訪ねると良いよ。きっと治してくれるから」


ローディセンというのはレパルの先、アルデリア三つ目の中継地点となっている街だ。

ウェルクさんか…。レクスの知り合いだろうか?

まぁ彼がそう言うのだから間違いないだろう。

治るといいね。アッシュ。



さて、このあとの予定だが、まずはこの村人達に対して加護を与えなければならない。

本来はこの先にもう二つほど村があるのだが、一つは魔物の襲撃でメチャクチャになってしまった。

そしてイレジアが街門を閉じてしまってる以上、もう一つ村に避難した村人達が集まっている。


王都でもそうなのだが、イレジアのような大きな街門というのは一度閉じると中々開くことがない。防衛上そういう仕組になっているのだ。

籠城の際、内通者などの手によって城門を開けられないようにする為らしい。

なので、イレジアの街門はしばらく開くことは無いだろう。

当然メアリーもイレジアに籠ることとなる。


問題なのは避難した村人達だ。アルデリアの村々はメアリーの過度な集金によって資金がほとんど無い。

他の村から避難した人間の面倒を見る余裕など無いはずだ。

怪我人もいると考えると、野宿をしてでも急いで向かわないとな……。


その後、今度はレパルに戻って加護を与えると……。

う~~んこりゃ大変だ。

まぁ半分自分が招いた事態なのだから仕方ない。


溜め息をつきながら宿を出ると、真正面にぬん!と立つ男の姿があった。

私はびっくりして飛び跳ねるようにレナに抱きついた。


「聖女様!!ご無事でしたか!!」


その男はグレイゴルだった。

よかった。びっくりさせないでよ!


「はい。お気遣い感謝いたします。ご心配には及びませんので……」


次の瞬間、グレイゴルを始めとした数十名の兵士達が一斉に跪いた。


「この度は我々アルデリアの民を危機から救っていただき、誠に感謝いたします」


ちょ!ちょ!ちょ!

恥ずかしいからやめてください!!

あーほらもう!みんな見てるから!!


「本来であれば、我が国の聖女が真っ先に民を助けに向かわなければならぬところを……。お恥ずかしい限りにございます」


まぁ戦闘向いてない聖女もいるだろうしね。

逃げるのは仕方無いよ。それは私も責めるつもりは無い。

ただ自分が街に入った瞬間に門を閉じちゃうのは違うだろう。


「どうか悪くお受け止めにならないでください。あなた様にはローザ様の面影をみました……。これは何かの運命にございます。残り短いこの命、シルヴィア様に捧げたく存じます」


えええええええええ!!?

どどどどどゆこと!!?


捧げるって、あなたはすでにアルデリアに忠誠を誓っているではないか!?

騎士団長様だし!


そんなことしたら私がなんて言われるかわかったもんじゃない……。

本当にもうこれ以上問題事はごめんだ……。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ