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異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第二章 アルデリア共和国編
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第四十五話 初討伐


突然のレクスの声に驚く。


「は、はい起きています」


意外とクリアに聞こえるものだ。

まるですぐそこでレクスが話しているような感覚。


「なんだかギルドの様子が変なんだ」


レクスが言うには、本来私の護衛を任されるはずの冒険者が急遽別の任務に振り当てられ、彼ら覇王竜の翼が護衛をすることになったらしい。

周りの冒険者も流石にそれは無茶だと抗議したのだが、どうやらこれはアルデリアの教会本部による指示ということだった。

なぜそんな事を……。レクスはソフィアを通じて原因を探してくれていると言ってくれたが、また良からぬ事態にならなければ良いのだけど……。




夜が明け、いよいよアルデリア初の巡礼だ。

すごい……。宿の前からすでに行列が出来ている。

本当に国境を越えて認知されていたのか……。

とりあえずこのままだと宿に迷惑なので、行列を引き連れて広い場所まで出ることに。


村の場合は一箇所に集める方法でも良いのだけど、一人ずつ加護を与えても半日程度で終る。

できる限り一人一人とコミュニケーションをとりたいと思っているので、村ではこのやり方が一番だ。

何気ない会話でも、その中に非常に有用な情報も混ざっているものである。


その話の中に一つ興味深いものがあった。

アルデリアでは最近教会から寄付金を募る声が多く、以前より三倍程度の頻度で使者が訪れるらしい。

メアリーというアルデリア出身の聖女の名前での寄付金要請らしいのだが、その名前には聞き覚えがある。

レニオンの教会本部に立ち寄った際、私に次いで寄付金額が多かった聖女だ。

年齢は二十二歳だったはずなので三回目の巡礼になるはず。


聖女は巡礼を行い信仰を集め、『大聖女』を目指す。

大聖女はまさに生ける神様として、国やギルドを超える権力を持つ。その言葉は絶対だ。

信仰者の数、寄付金の額、そしてその立場に相応しい人間かどうか……。


しかし大聖女の座はローザの死後ずっと空席のままだ。七十年前の戦争以降、大聖女の立場について問題視する声も多い。私としても聖女に関しての立場には全くもって興味が無いので、大聖女というものが無くなり忘れ去られても特になんとも思わない。

今現在、大聖女が存在しなくても世界はちゃんと回っている。わざわざ争いの火種になるようなものを生み出さなくても良いというのが私の考えだ。


もしメアリーが大聖女を目指しているのだとすれば、

恐らく焦っているのかもしれない……。

彼女は二十二歳なので今回が最後の巡礼になる。その結果によって、大聖女になるかどうか別れることとなるだろう。最後の追い込みといったところか。


しかし三倍というのはやり過ぎだ。そもそも村の人間は加護を受けていないのだから。

寄付金を集めるのであれば加護を与えているであろう貴族や王族から集めるのが筋だろう……。



村人へ加護を与え終わると、老齢の村長さんは村人達から集めたであろう銀貨の袋を私に差し出した。

百枚ぐらいだろうか。今まで村で貰っていた額の大体半分ほどだ。


私は寄付金を断った。本来であれば勝手にそんなことをしてはいけないのだが、ここの村人達はメアリーに対して充分寄付をしている。

聖女の存在が村人への負担になるようなことは絶対にあってはならない。教会にもちゃんとそれを説明しよう。




「アッシュ。冒険者の仕事は何か受けていますか?」


私はアッシュに尋ねた。巡礼も終わったので、次の中継点まで訓練も兼ねて実際に魔物を討伐してみようと思う。いきなり強力な魔物は無理だが、本来冒険者は依頼の成功報酬とは別に、魔物からとれる素材をギルドに買取ってもらい生計を立てているものだ。

私達にでも討伐可能で、尚且つ素材を売却できるような魔物がいれば良いのだが。

戦闘の訓練にもなる上に、本来の冒険者としての仕事も経験できるため一石二鳥である。


「いや、護衛以外は聞いてねーよ?」


なるほど。村人でそういう魔物について知っている人はいないだろうか。

村長さんはどうだろう……。

私達は村長さんの家を訪ねる。


「魔物の討伐ですか……。」


村長さんは驚いたような顔で困惑している。

そして何かを思い出したように語り出した。


「その魔物の素材が売り物になるかはわかりませんが、ガイオンという魔物が農作物を荒らして困っております。ギルドに依頼しようにも村にはもうお金がありませんで……」


それだ!そのガイオンという魔物を討伐してみよう。

困っているようだし。


「では私達で魔物を討伐いたします。詳しく教えていただけますか?」


「いえいえ!そんな……!!聖女様にそのようなことまで……!!」


村長さんを説得して、私達はガイオンの討伐を押し通した。ギルドを通さず勝手にやってもよかったのだろうか……?ま、まぁもうやると言ってしまった以上仕方がないだろう。たぶん。それに困っているようだし。


ガイオンはロブロットの手記にその詳細が記載されていた。


姿絵を見る限りでは、イノシシとタヌキを足して割ったような外見をしており、下顎から伸びた大きな歯が特徴の魔物だった。

とにかくなんでも食べてしまう雑食で、小規模な群れを作り夜間に行動するということだ。


夕方前に就寝、深夜に起床して魔物を迎え撃つ。

その前に少し作戦会議というか、準備をしよう。


「ちょっ!?くすぐったいって!!」


「もうすぐですのでじっとしていて下さい」


アッシュの両足の甲に塗料で印を付ける。そして両手の甲にも同じ印を施す。


「なんだよこれ……?」


アッシュは不思議そうに印を見つめている。


「アッシュ。その印に意識を集中してみてください」


「意識を集中って……どうやるの」


なるほど……。説明が難しいんだが……。


「では、まず目を閉じてください。体の中心にあるエネルギーを先程描いた手の印に全て集めてください。良いですか?イメージしながらゆっくりと……」


私は同時に魔力探知でアッシュの体に流れる魔力を調べる。


まず自分の魔力のイメージが出来ていない。

手の方に流れてはいるが全然量が少ない。あまり集中も出来ていない様子だ。


「肩に力が入りすぎていますアッシュ。もっとリラックスしてください。一度に集めるのではなくゆっくりと血液の流れのように……」


私はアッシュの手に書いてある印を人差し指でちょんと押す。


「ここです」


アッシュの体の中心からジワジワと魔力が手に集まってくる。いいぞアッシュ。その調子だ。

両手が終われば次は足。これを反復して繰り返す。

すぐに実戦で使用とはいかないが、常日頃から魔力の流れをイメージすることで、咄嗟の反応や高速の攻撃に使用できるようになるだろう。




深夜、私達は村の畑で魔物を待ち構える。

ガイオンは警戒心が強く音や匂いに敏感ということだ。

気配を消し、畑の脇にある作業小屋の陰に身をひそめる。

が、しかし……。一向に魔物が来る気配が無い。

三人ともウトウトと船を漕ぎ始めている……。

やはり私達を警戒しているのだろうか……。



…………。



向こうの空が薄明るくなってきた。

今日はもう来ないだろう。三人も限界だ。

私達は宿に引き上げ、そのまま就寝することにした。



「そんな……!?」


私達は村の畑を見て愕然とする。

食い荒らされ散乱する作物。そして無数に残ったガイオンと思われる足跡……。

あれだけ待っても出てこなかったのに、私達が引き上げた瞬間現れたということか!?

いや、たぶん奴らはきっと私達の存在に気付いていたんだ。

まんまとしてやられてしまった。

警戒心が強いだけではなく、非常に賢い。


村長さんに謝りに行ったのだが、ガイオンは冒険者でも手を焼く魔物で、素人には討伐が難しいとのことだった。

このままでは私のせいで彼らのデビュー戦が黒星に終わってしまう。


よし……!!こうなったらこちらから打って出てやる……!!


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