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異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第一章 フランディア王国編
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第十九話 婚約者


私達はスタンレーを出発し、次の目的地であるレニオンまで街道を馬車で移動していた。


あぁ……。なぜいつもこうなってしまうのか……。

馬車の空気が激重なんです……。


これがまた少々複雑なことになっておりまして……。


実はスタンレーで合流したウールベル領の案内人ライアンは、ご存知の通り私と同じ家名。すなわち従兄弟になる人物だ。

そして、このライアン。何を隠そうクレアお嬢様の婚約者である。

この話だけを聞くと空気が重くなる要素はあまりなさそうなのだが、ちょっといろいろと訳アリで……。


二人の関係は七年前、貴族街で受けた聖女の巡礼の儀に始まる。そうです。私の巡礼です。


クレアの姉妹とライアンは加護を受けるために貴族街に来ていた。そこで初めて出会い、その3年後貴族街にある教練所、いわゆる学校に近いところで3年間共に過ごし、その時にライアンの方から猛烈なアプローチを受けた。といった経緯がある。

その後、その話は最終的に両家の親を巻き込んで、強引に婚姻を結ぶ話にまで発展したのだ。


まぁ……基本的に全てライアンの片想いなのだ。

婚姻の話も、クレアの意見は無視に近かった。


これもすでにご存知のことだが、クレアにはライアンではなく他に想いを寄せている人がいる。

その事はライアンも気付いているようで、それがさらクレアへの情熱を加速させてしまっているのだ。

ライアンはもともと領主としてウールベル領に戻る予定だったものを、クレアを追いかけるような形で騎士団に入団し、現在に至るというわけだ。


正直クレアはライアンと距離を置こうとしている。

それは無理もない。

ただ問題は私の方だ。私はどっちの味方に付けば良いんだ。

別にライアンは悪い奴ではない。誰にでも優しく、女性にも大人気だ。ただ、一度火が付くと周りが見えなくなる傾向がある。一方的に気持ちを押し付けたり、クレア以外の女性の気持ちを考えなかったりと、少々幼さが見えるのだ。

従兄弟である以上、関わらないなんてこともできないし……。王国側の人選に悪意まで感じる……。

そんなこんなで馬車内はギクシャクしています。はい。


「ライアン、騎士団には慣れましたか?」


とりあえず気まずいので何か話題を振ってみようと思

う。


「ああ、とても良くしてもらっている。シルヴィアはどうだ?王都の外に出るのは初めてだろう?怖い思いなどしていないか?」


それを聞いたシャロンがクスッと笑った。

私も微笑んでライアンに教えてあげた。


「大丈夫ですよライアン。みんなが守ってくれますから。魔物との戦いも慣れました」


思わず馬車内で立ち上がるライアン。


「魔物と戦っているのか!?」


よほど驚いたのか、目を見開いて固まっている。


「むしろこちらが守ってもらっているくらいだ」


ライアンにクレアが答える。彼に座るように促すと、目を閉じたまま話を続けた。


「同行するにあたって魔物と戦闘することは説明を受けてるはずでしょ?それに、訓練でも戦ったことあるはずだけど」


少しツンとした言い方でライアンに返す。

ライアンはモジモジと申し訳無さそうにクレアに言った。


「いや……魔物とはまだ一度も……」


それを聞いたクレアは頭を抱えてしまった。

手綱を握るロブロットが何かを思いついたように馬車を止めた。


「ほんじゃ、実際にやってみるかの」


ロブロットは川の流れる街道沿いに馬車を止めると、

シャロンを馬車に残し、他は川辺に降りるようにと言った。

街道の土手を下ると、広がった川辺に背の低い草が生い茂った場所があり、そこに数匹の魔物が寝そべっていた。


茶色い毛皮に、頭から胴体までをまるで鎧のような外皮が覆っている。尻尾の先についた毛束をペシ!ペシ!と左右に振り、自分のお尻に打ち付けている。


「この魔物はラグタンといいましての。皆さんが飲んでおるミルクはこやつから取れるものなんです」


向こうの世界でいう牛だと思ってもらって構わない。

ただ角はなく、そのかわりに硬い外皮が上半身を覆っている。


「まず戦闘をはじめる前にお前さんの武器と魔法を確認しておく」


ライアンは携えていた剣を鞘から抜く。

鋭い剣先に細い刀身……。ん?これはクレアの剣と同じじゃないか……。

それを見たロブロットは人差し指で顔をポリポリ描きながらライアンに尋ねる。


「そいつぁお前さんには少し軽すぎやせんか?」


「いえ、大丈夫です。僕はこの剣を信じていますから」


そう言ってクレアの方を見るライアン。

クレアの方は恥ずかしそうに下を向いてしまった。

さっき言った通り彼はこういうところがあるんです。


「まぁお前さんが良いと言うならそれで良いがの……

 で、魔法は?」


「土魔法を使います!」


曇りの無い真っ直ぐな目で答えるライアン。


「細剣に土魔法とは……あまり聞かん組み合わせじゃの。まあ良い、はじめるとするかの」


そう言ってロブロットは道具袋をガサゴソと漁りはじめた。


この世界の人間は素質があれば誰でも魔法を使用することができる。

騎士団や冒険者など戦闘に携わる職業に就くものは、たとえ前衛職であってもだいたい一つか二つぐらい魔法を身に付けているものなのだ。


ちなみにライアンの使用する魔法は土魔法。土魔法は……はっきりいって地味だ。

魔法職の中でもあまり人気がない。ただ、それはあくまでも扱いの難しさからくるもので、土魔法がほかの魔法より劣っているということでは決して無い。


「お!これじゃこれじゃ……」


ロブロットが道具袋から取り出したのは何かを団子にしたような黒い塊だった。

それをラグタンの顔の前に持っていくと、クンクンと匂いを嗅いだ後に口にほおばった。

すると、ラグタンは急に体を起こして立ち上がり、前足で地面を蹴るしぐさを始めた。


「これは我々冒険者がルーキーの教育に使用している方法です。口でどうこう説明するより戦って覚えるほうが早いですからの」


ラグタンは鼻息を荒げ、ライアンに向けて突進していく。


「うわぁっ!!」


突進を寸前のところで躱し、尻もちをつくライアン。

クレアは黙ってライアンを見ている。その視線に気づいたライアンは起き上がり詠唱を始める。


「母なる大地よ、鉄壁となりて我を守りたまえ」


岩石障壁(ストーンウォール)


土魔法といえばストーンウォール。それくらい一般的な魔法。だが、数ある魔法の中でも一般的な物理攻撃を防ぐ魔法はこのストーンウォールをいれても数個ぐらいしかない。土魔法は地味だが、かなり有用な魔法なのだ。


しかしラグタンはライアンのストーンウォールを突き破り、ライアンはドカンッ!と突進を正面から受けてしまう。ライアンの体は跳ね飛ばされ、柔らかい草の上に転がる。


「ううぅ……」


ロブロットは私のほうを見たので、それを察してライアンに回復魔法をかけた。


「大丈夫ですかライアン」


「あぁ……もう一度!!」


再び向かってくるラグタンに剣を構えるライアン。

ラグタンはもう一度前足で地面を蹴り、頭を下げて走り出す。


「うおぉぉぉ!!」


三連刺突(トライピアース)!!


クレアと同じ技を正面から繰り出すライアン。だがそれはクレアのそれとは速度も威力もまるで異なるものだった。

一撃目の剣がラグタンの固い外皮に当たり、そのままパキン!と剣を折ってしまう。

ラグタンの突進は容赦なくライアンを跳ね飛ばし、今度は真上に突き上げられた。

ドサッとライアンの体が地面に落ちる……。

ロブロットの表情はやっぱりなといったところか。

折れた剣を杖代わりにヨロヨロと立ち上がるライアン。


「お嬢さんいけますかな?」


ロブロットがクレアの方を見ると、クレアは黙って剣を抜いた……。

沈みかけた陽の光が、刀身を渡り切っ先へ集まる……。


「だめだクレア!!こんな危険なこと……!!」


ライアンの忠告を無視するかのように突進を開始するラグタン。

クレアはそれに応じるかのように正面からものすごいスピードで地面をかける。

クレアとラグタンは衝突しそうな勢いでお互いに突っ込んでいった……。






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