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異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第一章 フランディア王国編
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第十八話 新たな目的地


「聖女様。この度はなんとお詫びをすればよいか……。」


リグナーは跪き、頭を下げた。今回のことを深く反省しているみたいだ。


「私達を騙し、クレアを囮に使った。あなたがやったことは、消して良いとは言えません」


リグナーは黙って下を向いている。


「シルヴィア違うの……!」


クレアが私とリグナーの間に割って入る。


「囮役は私が自分で買って出たの」


驚いた。私はてっきりリグナーか騎士団の指示だと思っていた。


「そうなのですかクレア……?」


「ええ。はじめから決めていたの……。黙っていてごめんなさい」


そうだとしたら、リグナーには悪いことをしてしまったかもしれない……。


「そうとは知らずに勝手に決めつけてしまったことを謝りますリグナー……。ごめんなさい」


「しかし、聖女様や冒険者達を騙したのは事実です。仲間を危険な目に合わせました。兵士も多く失った……。」


あれだけ自信満々だったリグナーは、すっかり自信を無くしてしまっていた。

これはこれでとても寂しい気がする。

というより、リグナーの本当の性格はこっちの方なのかもしれない。抑えきれない不安にずっと虚勢を張ってきたのだと思う。



「ですが、リグナーは魔法を使い私達を助けてくれました」


リグナーは驚いたような顔をしてこちらを見る。


「いや……しかしそれは……」


「それで良いのですリグナー。魔物の討伐は冒険者の仕事です。聖女の仕事は加護を与え信仰を集めることです。騎士の、貴族の仕事は何でしょうか?」


「民を……領地を守ることです」


「であるならば、リグナーがとった行動は正しかったということでしょう」


「私は……そのような器では……」


「ねぇリグナー。なぜ私は聖女に生まれ、あなたは領主の息子として生まれたのでしょうか」


私がラブロに聞いたことと同じような質問を、リグナーにも問いかけてみた。

リグナーは黙り込んでしまい、しばらく考えて答えた。


「わかりません……何故なのでしょうか」


私は微笑みながら答えた。


「私にもわかりません」


リグナーは頭に?を浮かべていたが、

私は続けた。


「ですが一つ言えることは、あなたのお母様はきっと……

あなたに会えるのをずっと待ち望んでいたのだと思います。」


「……!!」


「私達はそこに生まれるべくして生まれています。たとえどんな人生を歩もうとも。これからをどう生きるかを、自分の意志で考えてみてはいかがでしょうか」


先ほどから状況をみていたロブロットが口を開いた。


「なぁリグナー殿よ、お前さん冒険者にならんか?」


全員が何を言っているのだといった顔でロブロットの方を見る


「いやぁ、お前さん戦闘はまだまだじゃが、あの武器持ちのローグに挑んでいく勇気は大したもんじゃ。誰にでもできることじゃない」


別にからかって言っている感じではない。おそらくロブロットは本心だろう。でもあまりに突拍子もない発言だったので、すこし笑ってしまった。


「お気遣い感謝するロブロット殿。ですが……『フランディアにスタンレーあり』……私は私の道を行きます」



リグナーはきっと大丈夫だろう。いずれこの街にとってかけがえのない人物になると、私はそう思う。




スタンレーでの巡礼は王都と同じように広場や施設に一定の人を集めて、教義を読み上げる方法でいこうと考えている。ただ、王都の時より一箇所の人数をもっと減らして、しっかり回復魔法も使おうと思っている。私は今自分がどれだけ魔力を使用できるのかを性格に把握したかった。


というのも、実は私は単純に一人一人に対して回復魔法を使用するだけなら、ほぼ無限に近く使用することが出来る。であるにもかかわらず、先の戦闘で魔力切れを起こした。

理由として、グレーティッドの爪によるブースト状態だったことと、はじめて使用する魔法だったので魔力の制御ができなかったことの二点が挙げられる。

ただもう一つ、支援魔法に対して魔力を使いすぎているという点が大きい。

私の支援魔法は魔力効率が極端に悪い。


魔力効率とは、同じ魔力を使用したときに得られる効果の大小を図るもので、魔力効率が高いと少い魔力でも最大限の効果を得る事が出来る。

逆に魔力効率が低いと、大量に魔力を消費しても少しも効果が得られないと言った事が起きるのだ。


基本的に、私やシャロンといった魔法を使用する人間にとって魔力効率は非常に重要で、普段から同じ魔法を繰り返しイメージ、使用することで魔力効率を上げる努力をしているのだ。

傷と違い、魔力だけは時間経過以外の回復方法が無い。

そのため、戦闘時に魔力切れを起こすとしばらく戦闘に参加できないお荷物状態になってしまう。いかに魔力効率を上げて、魔力切れを防ぐかが魔法職のポイントになってくるのだ。


そもそも、私の支援魔法自体が一人ではなく範囲内の人間を対象にするため、魔力を消費しやすいということがある。

それに加えて、私は回復魔法以外の適性がそれほど高くなく、攻撃魔法に至っては一部例外を除いてほぼ全て使用できない。

回復魔法に継いで魔力効率の高い支援魔法でさえも、乱発して使用するとあっという間に魔力が底をついてしまうのだ。

よって支援魔法の魔力効率の上昇は、一番の課題となっている。


そこで私は、巡礼で加護を与える際に支援魔法の魔力効率を上げる訓練も同時にやってしまおうと考えたのだ。


スタンレーでの巡礼期間は1週間前後を予定している。一つの巡礼区画の人数はだいたい1000人弱といったところだろうか。

当然今までに1000人同時に回復魔法を使用したことなど無いので、それさえも出来るかどうかも分からない。ただ、支援魔法の方は一度に1000人を対象にする必要はないので、数十人くらいからはじめていこうと思う。


そしてスタンレーでの修行を兼ねた巡礼が始まった。

一区画の人数は予想を上回り、1000人を大きく超えている。教義を読み終えた後、私は会場全体に回復魔法をかける。


「あなたに聖女の加護を……」


回復魔法(ヒーリング)


会場全体が、淡く緑色の光に包まれていく……。


オオオオオオオーーーーーーーー!!


会場から大歓声が巻き起こる。

回復魔法は成功だ。一人一人にかけるよりも遥かに効果は薄いのだが、今の私は1000人以上同時に回復することができるとわかった。人数の多い都市はこの方法でやっていこう。

問題は……。

私は一番近い信者数十名に向けて、パワーを掛けてみる。当然詠唱は無しで。


結果としては失敗だ……。圧倒的にイメージが足りていない。詠唱も無く、人数も動作も具体的に把握できないので、そもそも魔法自体が発動していない。

これは一筋縄ではいかないようだ……。


2日目、3日目になってもこれといった進展は無く、私は少しやり方を変えてみることにした。

対象の人間を無作為に選ぶのではなく、自分を中心に円を描き、その中に入っている人間全てに魔法の効果が及ぶようにイメージしてみる。

かなり効果は薄いが、こちらのほうが魔法として成立している。

これなら一人一人の人間を認識しなくても良い分やりやすい。後は反復練習でイメージを固めていこう。


そしてスタンレー最期の巡礼の日、私はいつも通り教義を読み終え回復魔法を唱えた。

その後自分を中心に円を描き、その中にいる人間に支援魔法をかけようとした瞬間だった。

円の中に異常な魔力を感じる。


そいつは私のちょうど正面にいる。群衆の中に埋もれてうまく判別できないが、明らかにこちらに向けて魔力を放っている。

私は目を凝らしてその場所を凝視した……。

信者の中にフードを被った人間が見える……。

女性……?顔がよく見えないが、それは女性で年齢は30代くらいかもしれない。

一瞬……その女が笑みを浮かべたように見えた。


「聖女様……?どうかなさいましたか……?」


祭壇に突っ立ったままの私を心配して、お手伝いのシスターが声を掛けてくれた。

先程の魔力はもう感じなくなってしまった。


あれはいったい何だったのだろうか……?

私は、あの女の人を知っている気がする……。

顔はあまり見えなかったのだが、どこかで見たことがある気がしてならなかったのだ……。



私達の次の目的地は、クレアの故郷ロア領にある鏡水都市レニオンだ。

そして、今日はリグナーに代わりもう一人案内役が参加となる。


私達はスタンレーの屋敷に通され、そこで正式にリグナーに別れの挨拶をした。


私達が待つ部屋に入ってきたのは一人の青年だった。

金色の髪に青い目、顔立ちの整った好青年である。


「フランディア王国騎士団、第一部隊、ウールべル領、ライアン=イスタリス。久しぶりだねシルヴィア。それと……クレアも……」


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