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異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第一章 フランディア王国編
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第十二話 解錠


本来であればスタンレーまでにもう二つほど村を経由するはずだったのだが、先にスタンレーに寄りギルド組合に報告をすることになった。幸い寄付金の銀貨も2000枚近くなってきたので、そろそろ両替をしたいと思っていたところだ。


スタンレーまでは馬車でほぼ二日、途中宿も取れないので私は今回初めての野宿となる。

フランディアの街道では、野宿はそれほど珍しくない。街道の至る所にもとの世界でいうキャンプ場のような場所が設けられている。

とはいえ、昼間と違い夜行性の魔物に遭遇しやすく、盗賊なども夜間を狙って襲撃してくる。

たとえ見張りをつけたとしても、あまりぐっすり眠れるということは無いらしい。


リグナーは遺跡の一件以来ずっと機嫌が悪い。

何かにつけてロブロットに突っかかっていく、なんというかまるで思春期の子供ような状態だ……。

これは王都を出るときからすでになのだが、今回合流予定だったジルエールに対して並々ならぬ執着がある。過去に何があったかは知らないが、これ以上仲間同士で揉めるのは困る。

新たに冒険者が参加することによって、またトラブルの火種にならないと良いのだけど……。



「合流される冒険者の方はどんな御方なのですか?」


焚き火を囲みながら私は二人に尋ねた。


「そうね……ちょっと変わってるけど腕は確かよ」


「うむ。ジルエールは他の冒険者と違い、あまり通常の仕事には顔を出さんのです。黒狼をはじめ皆生き物の名を冠した二つ名を持っておるのですが、やつの名はレクス、白兎と呼ばれていますな。」


はくと。白いウサギさん……。なんだか可愛いかも。


「まぁ少々アレとこが玉にキズなんじゃが……。剣を持たせたら間違いはありません」


ロブロットやシャロンも充分頼もしいのだが、もう一人前衛で戦ってくれる人が欲しかった。


クレアやリグナーは名目上あくまで同行で、それぞれの領地までの案内役でしかない。

リグナーはスタンレー、クレアはロア領のレニオンまでしか同行してくれないのだ。

そうやってフランディアの領地内においては、一人ずつ案内役がついてくれるようになっているのだが、必ずしも隊長クラスが来るとは限らない。

頼れる前衛がいると私も安心して支援ができる。


暗くなった街道の先から幾つかの灯りが近づいて来る。徐々に近づいてくるのは蹄の音だった。


「まさか……盗賊?」


私は咄嗟に杖を取って構える。


「いや、あれは違う」

クレアは立ち上がり、近寄ってくる灯りの方へ歩き出した。


「フランディア王国軍街道警備隊、アレストリア班、テッド。ディラン騎士団長よりリグナー隊長、クレア隊長ご両名にご伝言をお伝えに参りました」


「団長から……?」


どうやら盗賊ではなくて街道警備隊だったらしい。

クレアに伝言を終えた街道警備隊はビシッ!と敬礼をして走り去っていった。


クレアの話によると、この先のスタンレーの街に騎士団長が滞在をしているとのことだ。話があるので街に着いたらスタンレー卿の屋敷にまで来るようにといった内容だったらしい。



はじめての野宿はなんというか……。あまり良いものではなかった。地面がカタイのだ……。

こちらの世界ではベッド以外で寝るなんてことは

なかったので身体がとても痛い……。

今日の夕方にはスタンレーに到着する予定なので、今日はちゃんとベッドで寝れると良いのだけど。


「さてと、この辺で良いかしら……」


街まであと少しといったところでシャロンが何か思いついたかように周りを見渡すと、ロブロットに馬車を止めるよう促す。


「聖女様、クレアさん、ちょっといいかしら?」


シャロンは私とクレアを連れて、街道脇の藪の中へと入っていった。


「あの……。シャロンさんどちらへ……。」


「ふふ。それは後からのお楽しみです」


私達はしばらく藪を進むと、少しだけ開けた場所に出た。周りは木々に覆われており、そこだけぽっかり覗いた青空から光が差している。


「あら、この辺で良いじゃないかしら」


私とクレアが首をかしげていると、シャロンはベルトを緩め、上着のボタンを外し、おもむろに服を脱ぎ始めた……。


ええええええ?なぜ!?

シャロンは微笑みながら私達に言った。


「さ、二人も脱いで」


私はクレアと顔をあわせて戸惑っていたが、シャロンの勢いに押されて言う通りに服を脱いだ。


シャロンはどこからか取り出したのか、木製のボウルのような器を地面に置いた。

そこに杖をピッと振ると、綺麗な水の塊が現れ、そのままバシャッ!とボウルに落ちた。

シャロンは何やら黄色い液体の入った小瓶を取り出して、そのボウルの中にとぷとぷと垂らしたのだ。


私とクレアは何が始まるのかとただ見ていることしかできなかった。


「これは色々な薬草や花をオイルにしたものです」


シャロンはそういってボウルを囲むようにして私達を立たせると、もう一度杖をかざす。


「清らかなる水粒の恵み、薫風となりて舞い踊れ」


飛沫纏衣(スプラッシュコート)


シャロンが魔法をとなえると、ボウルの中の水が飛沫となって舞い上がり、私達の体にパチパチとぶつかり出した……。


ほぇぇ……。これは気持ちいい……。


細かな水の粒は下から上へ、汚れを拭き取る様に駆け上がって行き、私の長い髪の毛一本一本の隙間をも潜り抜けていく。水粒が通った後にはフローラルな香りと、薬草の清涼感が残る……。

後で絶対に教えてもらおう。


ボウルの水が無くなる頃には、私とクレアはうっとりと恍惚の表情を浮かべていた。


「拭き取らずそのまま乾かしてください。香りと清涼感が続きますから」


シャロンはにっこりと笑った。



「ごめんなさいね、これぐらいのことしかできなくて……。」


私の髪を梳かす、クレアの髪を梳かしてくれるシャロン。


「スタンレーに着いたらすぐ御屋敷に行かれるのでしょう?本来だったらもう少しゆとりがあったはずなのに」


そうか、シャロンは宿に泊まれない私達のことを気遣ってくれたんだ。正直前の村ではお風呂に入る余裕がなかったので、実はここ2日入ってなかったのだ。

いやー本当にシャロン姉さんは偉大だ。

それに、これはクレアのためというのが一番かもしれない。

なぜかって?それは……まぁ…アレだ。

え?本当にわからない?


「あら?聖女様はまだ杖の解錠をしておられないのですか?」


髪を梳かしながら、杖に目をやったシャロンが私に尋ねる。


「解錠……?ですか?」


杖の解錠。初めて聞く言葉だ。


「ええ、魔物を素材とした武具は魔力を送り込むことでその真価を発揮します。いわばマジックアイテムですね」


え?そうなの?


「聖女様の杖に使用されているグレーディットの爪には、魔力を大幅に増幅する力があります。まだ杖に魔力が籠もってなかったので……。」


「それは知りませんでした……」


「ではやってみましょう。聖女様、杖に魔力を送ってみてください」


私は杖を握った。手に魔力を籠める……。


「手のひらではなく、杖本体に魔力を循環させ、留めるようなイメージです」


杖本体に魔力を循環……。

その瞬間、私の杖が眩しく光り始めた……!


「その状態で解錠(ブースト)と口にしてみてください」


解錠(ブースト)……」


杖が一段と光り輝く……!!私の髪がフワっと舞い上がり、杖の先に今まで無かった光球が現れる。

光球の周りには、溢れた私の魔力がキラキラと星屑のようになって螺旋状に舞い上がる……。


「綺麗……。」


私は思わず見惚れてしまった。


「はい、ストップ」


シャロンの声にハッとなって杖の魔力を解除する。

その瞬間襲ってくる激しい疲労感。ごっそり魔力持っていかれる感覚……。危なかった……。


「ブースト状態の時は魔力を大幅に消耗します。とくにグレーディットの爪は増幅効果も魔力消耗も規格外ですので、ここぞという時の切り札としてお考えください」


私は攻撃魔法が使える訳ではないから実践で使えるかどうか分からないけど、今後何かの役に立つかもしれない。


私達を見ていたクレアがなんだか恥ずかしそうに、

とても小さな声で呟く。


「あの……。もう服を着ても良いでしょうか……。」


「あら!ごめんなさいね」


シャロンも少し顔を赤くして笑った。



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