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異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第三章 ラグナ大陸編
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第百十三話 ランク


紙に書かれていた数字……。


『198位』


……。


これは喜んでいい数字なのか……。


「シルヴィアも2ランクアップね。おめでとう」


「あ、ありがとうございます……」


正直どんな表情をして良いのかわからない……。


「ちょ……ちょっとリゼ!シルヴィアはまだ入って間もないはずだろ……?なんでランクがついてるんだよ?最初はランク外の見習いからだろ……?」


別にエドに悪気がありそうな感じでは無いのだが、何だか納得がいっていない様な感じではある。


「普通ならそうね。でも彼女の場合前例が無かったからそうさせてもらったのよ」


「どういうことだ……?」


「彼女、入団試験をクリアしたの」


リゼのその一言に、エドは顎が外れんばかりの驚きを見せる。


「ウソだろっ……!?この子が……?どうやって!?」


「ホントよ」


リゼはそう言って机のうえにカチャッと何かを置いた。

それは私達が入団試験の際に真っ二つにした人工物だった。

球体の金属の周りを羽の様な部品が取り巻いている。


エドは自身の目を疑う様に私とその人工物を交互に眺めている。


「あ……でも良いのかリゼ?だってこれ……」


何かを言いかけたエドの言葉を遮るようにリゼはパンと手を叩いた。


「じゃ、また明日からもよろしくね!エド」


「はいはい。かしこまりました」


そう言って疲れた体を引きずりながら部屋を後にするエド。


そういえばコレットはどうだったのだろうか?

あれからお互いの仕事もあって、姿は見かけるものの話ができずにいた。


「リゼ、コレットのランクはどうだったのでしょうか?」


「あら、気になるの?別にランクは公開されるから良いけど……彼女、凄いわよ?」


え……!!そうなの……!?


リゼは表が書かれた紙を取り出して私に見せた。

コレット……コレット……。あった……!

順位は……153位……!!?


そんな!!私よりはるかに上じゃないか……!!


「コレットは抱えてるお客の数は少ないけど、そのどれもが貴族ばかりよ。しかも単価がかなり高いの」


だ、大丈夫なのかそれ……。


「心配しなくても怪しいことなんてしてないわ。純粋な彼女の頑張りよ」


「はい……。私ももっと頑張らないと……」


リゼは私の肩にポンと手を乗せて微笑んだ。


「そんなに気にしなくても大丈夫。あなたは彼女と違って進まなければならない道があるのでしょう?」


うつむく私に彼女は続けた。


「別に私はあなたがここに骨を埋める覚悟ならそれでも良いのだけど?あなたはあなたのやるべきことをなさい」


うつむいた私の顔を覗き込むリゼに、何も言えずただ黙ることしかできなかった。


純粋な彼女の頑張りか……。

まったくもってその通りだ。

コレットのことを下に見ているつもりは無い。

むしろ逆だ。


コレットは私には無いものを持っている。


聖女という立場がなければ、私の能力など知れている……。それはわかっていたことなのに……。


何だこの……置いていかれるような寂しい気持ちは……。



「何だか物足りなそうな顔ね?いいわ。ちょっと付き合ってもらえないかしら」



リゼのその言葉にハッとなった。

思い切り顔に出てしまっていたのだと思う。

リゼに連れてこられたのは、建物の中庭にあるギルドの訓練場だった。

リゼは長い木の棒を二本とって片方を私に渡す。


「これは私からの依頼よ。今から私が攻撃するから、それで防いでみなさい」


そんな……!急に言われても……!


「行くわよ」


そう言ってリゼはドン!という重たい踏み込みから大きく横に薙ぎ払う。


早い……!!


両手で持った棒をなんとか体の横に棒を構えて、リゼの一撃を受けようとする。


が、しかし……。


一瞬リゼの持つ棒の先端がグニャっと歪んだかと思った途端、私が構えた棒をすり抜け、眼前でピタリと止まった。


な……なんだ今の……。

確かに軌道を読んで構えたはずなのに……。

私の防御をすり抜けた……!!


「これは彗星槍術と言う私の技よ。軌道がブレて見えたでしょ?相手の防御をくぐり抜けて放つ必殺の一撃……。さ、もう一度よ」


私はリゼに言われるまま棒を構える。


リゼはまた大きく踏み込んで攻撃を仕掛けてきた。

今度は……正面!!

良く見るんだ……!!軌道のブレに惑わされるな……!!


体を大きく反らし、攻撃の軌道から完全にずらした。

これなら……!!



「そ、そんな……!」


完全に避けたはずの棒の先端が、私の首元に突きつけられている。

そしてまた、リゼは元の位置に戻って構え直した。


「どんどん行くわよ!」


十回、二十回と、リゼの踏み込みと風切り音が訓練場に反響する。

いつの間にか私の額からは大量の汗が吹き出していた。


大きく息を切らし、それでも私は構えるのをやめなかった。ここで根を上げたら、ますます私は蚊帳の外だ……。


集中しろ……。


何処かに見破る糸口があるはずだ……。


「シルヴィア、あなたとっても目が良いのね」


リゼの口から出たその意外な言葉に、私は呆気に取られてしまった。

褒められた……?なんで……?


「いえ……だって……」


「私の攻撃の軌道、全部しっかり見えているもの」


「ですが……私は一度も防げていません」


「彗星槍術は動体視力の良い人間ほどその効果が現れるものなの。武器を振るう際に高速で緩急をつけることで一瞬残像が発生する。それによって防御のタイミングがずらされる。それが彗星槍術の正体よ」


そうだったのか……。でものそんなのどうやって……。


「防ぐ方法は簡単よ。シルヴィア、あなたはよく魔力探知を使用しているわね?」


「は、はい……」


「今度は目を閉じて魔力を探知しながらやってみなさい」


そんなことで本当に防げるのだろうか……。

半信半疑で目を閉じ、棒を構える。

私は前方数メートルに意識を集中させた。


……!!

左から魔力が……!!



ガシッ!!



咄嗟に出した棒が、リゼの攻撃を防いでいた。


「普通の筋肉運動では残像を残すほどの動きはできないわ。だから魔力を込めているの」


そうか……。肉眼では残像に惑わされるけど、魔力を追えば確実に防ぐことができるということか……!


「仕組みがわかれば簡単でしょう?」


「なんで……私にそんな重要な秘密を教えていただけるのですか……?」


「フフ。これからが本番よ」


そう言ってリゼはもう一度構え直す。

私も目を閉じて前方に意識を集中させた。



コンッ!



「あいたっ……!!」


リゼの棒が私の頭に直撃する。

ただ、力はほとんど入っていなかった。


「確かに目を閉じて魔力を感じ取れば残像には惑わされないけど、魔力が込められていない攻撃は防げないわ」


確かに……。目を閉じていたら攻撃自体が見えない……。


「どうすれば良いかわかるかしら?」


目で動きを追えば残像に惑わされる。目を閉じて魔力を追えば普通の攻撃を防げない……。


「目を開けながら魔力探知……でしょうか?」


リゼはクスリと笑いながら答える。


「そうね。それも一つではあるけれど……。それだと目で見るのとあまり変わらないわ」


「では……どうすれば……?」


リゼはぴっと人差し指を立てた。


「纏うのよ」


「纏う……魔力を纏うのでしょうか……?」


「そう。あなたの周囲に微量の魔力を放出するイメージで恒常的に魔力を纏うのよ。それによって攻撃を察知するの」


魔力を……纏う……。

そういえば……!アルデリアで覇王竜の翼のみんなと一緒にいたとき、シモンが見せた魔力の察知方法。あれがまさにそれなのだ。

そうか……!

それなら瞬間的に魔力帯びた攻撃にも反応できる……!!


「まぁ、頭でわかっているのと実際に行うのとでは全く別の話だから、やってみると良いわ」


私は棒をくるっと一回転させて正面で構えた。


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