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異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第三章 ラグナ大陸編
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第百十二話 誕生日


「シルヴィアちゃ〜〜ん!!ありがとぉ〜〜!!次も絶対指名するねっ!!」


私の手を取りながら熱烈な眼差しを向けてくる男性。


「はい!またよろしくお願いします!」


ギリギリ引きつらない表情でなんとかその男を見送った。

その瞬間、大きな溜息と共にどっと疲労感が押し寄せる……。

見上げた空の青さとは裏腹に焦燥感だけが募っていく。



スピナスフローレに入団して早くも二ヶ月が経とうとしていた。


私は今日、十三歳になった。

こんなところで誕生日を迎えるだなんて思ってもみなかったが……。

別に誰かに祝って欲しい等とは思わない。

サキをはじめリゼやコレットにも私の誕生日は伝えていない。

皆、己のことで精一杯だ。そんなことにかまけている余裕は無いだろう。


こちらの世界では一般的に十四歳で成人としてみなされる。後一年後には私も立派な大人の仲間入りというわけだ。結婚もできるしお酒も飲める。


だから何だという話だが……。

ただ……無性に会いたくなってしまった。


今……どこで何をしているのかな……。


レクス……。



あれからレパルダスと海賊船の情報を集めてはいるのだが、一向に進展しない。

次にユリウスの港町に現れるのがいつなのかも、まったくもって見当がつかない状態だ。


私はというと、保護下にある以上グランハイムから外に出ることができない。

必然的にこの街の中だけで依頼を受けることになる。

モンスターの討伐を生業とする冒険者が街の中での依頼って……。それは冒険者じゃなくてもできるのでは?

と自分で自分のことをツッコミたくなってしまう。


私の依頼の多くを占めるのが支援魔法のレッスンだ。

これから冒険者をはじめる、または目指す者、すでに冒険者をやっているが保険として覚える、はたまた護身用にと、支援魔法を教えて欲しい依頼主のところへ出向き、指南をしているというわけだ。


スピナスフローレの入団試験を合格したという噂は街中に広まり、それを聞いた人間がぜひ私の支援魔法を教えて欲しいと申し出てくるようになった。

それはそれで嬉しくもあるのだが……。

私の支援魔法は特殊で、入団試験の時に使用したホーリーナイトなどは私以外使うことができない。

そうなると先程も言った様に私でなくとも良いだろうという話になるのだ。


それに……。先程の男性のように、支援魔法を口実に私に会いたいだけという依頼者も多い……。


そんなこんなで、最近は溜息が多くなってきているのだ……。



ゴォーーーン

ゴォーーーン


正午を告げる鐘の音が響き渡る。

ああ、そうだ。今日は午後からリゼと会う約束があったのだった。

というのもスピナスフローレにはランクがあり、そのランクは数ヶ月に一度更新される。

今日は私のランクが初めて更新される日なのだ。


今私は一番下の200位なので、これ以上悪くなるということは無いのだが……。

受けている仕事が仕事なだけに、ランクアップはあまり期待できないだろう。


仕事の報告がてらスピナスフローレの事務所を訪れると、リィンは相変わらず元気に手を振って迎えてくれた。


「お疲れ様です!シルヴィアさん!相変わらず大人気ですね!明日もびっしり予約が入ってますよ〜」


その言葉を聞いてまたどっと疲れが押し寄せてくる。

人気があることは大変ありがたいことなのだが、可能であれば私もサキと共に戦いたいというのが正直な気持ちだ……。

まぁ……ついて行ったところで聖女という立場を隠さなくてはならない都合上回復魔法も使えない。

おまけにクローディアに狙われているとなれば、足を引っ張ることは目に見えている。


「た……ただひまぁ……」


消え入りそうな声で、壁にもたれかかる様に入ってきた一人の男性。

あの大きな耳と丸い顔は以前見たことがある。

確か……。


「エド!!おかえりなさい!!」


彼はクローディアの集落でサキと話していた青年だ。

そういえばあれから彼の姿を見ていない。

も、もしかしてあれからずっとあの女性達を故郷まで帰してあげていたのか……!?


エドの顔色は悪く、立っているのが精一杯といったところだが、そんな中で私に気付いたようだ。


「あ……!!キミは確かソウルイーターのところのいた……」


「はい。シルヴィアと申します!理由あってしばらくこのギルドでお世話になることとなりました。よろしくお願いしますエドさん!」


挨拶をする私にエドは無表情のままじっとしている。

あれ……?どうしたんだ……?初対面にしては馴れ馴れしかったのかも……。


「あ……あの……」



「きゃぁぁぁぁわぁぁぁいぃぃぃぃぃぃ!!!!」



ギルド中に響き渡る様な大声で叫ぶエド。

あまりの突然のことに身体が反応し、飛び跳ねる様にしてリィンの後ろに隠れる。


「ね!ね!この後ヒマ!?俺と一緒にご飯食べにいかない?あ!買い物でもいいよ!俺の知ってる……」


矢継ぎ早に捲し立てるエド。

それに割って入るように、両手を前に突き出すリィン。


「はいはいストーップ。シルヴィアさんはマスターとサキ様の保護対象です。何かあったらわかってますよね?」


そのまま動かなくなり顔を青くするエド。

何も無かったかのようにしょんぼりと事務手続きをはじめた。

私とリィンは顔を合わせて笑う。

軽い印象はあるが、きっと悪い人では無いだろう。


「騒がしいわね?何の騒ぎかしら?」


奥の応接から出てきたのはリゼだった。

それと同時にもう一人。重装騎士の様な分厚いフルプレートで全身を包み、重そうな大斧を持った人物。

背格好からして男性だと思うのだが……。


リゼはその人物の方をポンと叩いて笑顔で送り出すと、フルプレートの男は親指をグッと立てて応え、去って行った。

あの人のランクは一体どれくらいなのだろうか……。

おおよそ魔物の討伐においては敵いそうに無いな……。


「あら、エドおかえりなさい。ご苦労だったわね。シルヴィアもちょうど良いわ。二人とも入って」


そう言って応接の扉を開けるリゼ。

中に入ると、私達は来客用のソファーに座らされた。


「シルヴィアは初めてだと思うから説明するわね」


スピナスフローレには六ヶ月に一度、ランクの更新が行われる。

これは向こうの世界の会社などでもあるような、言わば給与査定のようなものだ。

ギルドに対して多く貢献したものはランクが上がり、そうでないものを追い抜いていく。

これはただの序列ではなく、ユリウス王国ではこのランクが本人の信用そのものに関わってくるのだ。

お金の借入や装備品の手配、または住居にいたるまでその効力は多岐に渡る。

スピナスフローレは依頼に関わる必要経費は全て本人に委ねられていため、このランクが高いほど多くの経費を使用することができる。

つまり大きな仕事を受けやすくなるということだ。


当然、結果が全てであり、そこで大きく赤字を産むような人間はランクに大きく反映されてしまうわけだが。


ランク上位者いたっては宮殿や軍にまで影響を及ぼせるほどのステータスとなるらしい。


なので、ギルドのメンバーはこぞってこランクをあげるために日々努力しているというわけだ。


「まずはエドからね……」


そう言ってリゼは一枚の紙をエドに差し出した。

エドはその紙を見ない様に手に取ると、息をのんで祈るようにしてゆっくりまぶたを開く。


「エドは今回48位ね。前回50位からの2ランクアップよ。おめでとう。頑張ったわね」


「2ランクか……」


エドはほっと胸を撫で降ろしているが、表情としてはもう少し上を期待していたようだった。


「次にシルヴィア……はいこれ」


リゼは私にも紙を差し出した。

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