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異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第一章 フランディア王国編
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第十一話 アレストリア領


馬車に乗って四半日。

続く街道の先に領界の関門が見える。

ここを越えればアレストリア領だ。

ほとんどが平野部のエルビオンとは違い、西部に山脈を望み、森林地帯を多く有する緑豊かな土地だ。


街道で魔物に出くわすことはほとんど無く、いたとしても人間に危害のないものばかりだった。

これはフランディアの街道整備と冒険者ギルドの努力の賜物である。

私たちが安全街道を使用できるのは、ロブロットたち冒険者が魔物の発生を抑えているからだ。


むしろ、どちらかというと気をつけなければならないのは魔物ではなく人間の方だったりする。

王国軍による街道警備があるとはいえ、護衛の少ない商業馬車や王国の輸送品を狙った盗賊が発生するというのだ。

それを生業とした盗賊ギルドなるものも非公式に存在しているようで、ギルド組合にしてみればまったく迷惑極まりない話なのである。


巡礼を始めて見てわかったのが、立ち寄る村だけでなく、街道をすれ違う人々も皆寄付金をくれるのだ。

あっという間に木箱に銀貨がびっしり……。

ありがたいことなのだが、先の盗賊の話もありセキュリティの面で心配になってきている……。


「報酬の相場……ですか……?」


私は旅費の計画を立てるべくシャロン姉さんに相談に乗ってもらうことにした。

ただ、お金の価値がわかりませんと正直に言う勇気がなかったので、冒険者の報酬の相場を聞いて、そこから金額感を掴もうと思ったのだ。先日の村で野菜を買っていた女性が、銀貨1枚で芋のような野菜3つと交換しているのを目撃できた……。でもこれだけでは判断しようがない……。


「そうね……これは仕事内容にもよるのだけど、例えば先日の遺跡調査ぐらいでしたら、一人金貨2枚くらいではないでしょうか」


金貨2枚……銀貨が100枚で金貨1枚だから……。

えぇ……。村の寄付金の額とほぼ同じじゃないか……!


冒険者が命を掛けて魔物と戦っているのに、私はニコニコ爺さん婆さんたちの手を握っているだけで同じ額のお金が入ってくるのか……。無茶苦茶な話だ。

冒険者の場合、討伐した魔物から取れる素材の売却価格も加わるためこの限りではないらしいのだが……。

どちらにせよ巡礼も冒険者の仕事ももっと真面目に向き合った方が良さそうだ……。


「旅費のことが心配でしたらスタンレーでは両替だけして、納金は見送ってみてはいかがですか?」


私が木箱を見ているのを察してシャロンが提案してくれた。


「そんなことが可能なんですか……?」


「ちゃんと貰った金額を申告すれば大丈夫かと」


そうか……。それだったら二回目の中継地点までにかかる費用が計算立てしやすい上に、手元に現金が残る……。


「それに、ある程度余分に持っておくことをおすすめします。道中何があるかわかりませんし、女性は身の回りのことにもお金がかかるので」


そう言われれば確かにそうだ。当然のことだけど、別に贅沢をしようとか考えている訳ではない。

ただ、例えば天候などの影響で、どこかの村や町に想定以上に滞在しないといけない場合や、馬車の修理が必要になったりなんかも考えられる……。手持ちがあるに越したことはない。



アレストリア領に入り、森林沿い街道を進むと小さな村がある。中央に噴水があり、それを囲むようにして家々が立ち並んでいる。ロブロットは噴水の近くで馬車を止めると、辺りを見回し始めた。


「ふうむ、まだ来ておらんのかのう……。」


ロブロットが探しているのは恐らくジルエールと呼ばれる特命団の冒険者だろう。


「もう少し待ってみましょう。」


私達は噴水の場所でしばらく待つことにしたのだが…。


…………。

来ない。


もうすでに日が暮れそうになっている。

噴水の周りにはすでに私目当てに人だかりが出来ていたので、仕方がなくこの時間から集まった村人に加護をあたえることになった。

夜になっても噴水の前には人が途絶えることが無く、ちょっとしたお祭り騒ぎになってしまった……。ロブロットは村人と肩を組んで酔っ払い、シャロンの恋愛占いが始まり、リグナー至っては怒って宿に行ってしまった。

クレアはずっと私の側に立って見守ってくれてる。

彼女だってきっと疲れているだろうに。


「冒険者というのは毎日賑やかなのだな……。」


クレアは酔いつぶれたロブロットと盛り上がるシャロンを横目に、なんだか羨ましそうな、そんな表情をしている。


「はいはーい♪あなたが今日最後のお客様さんよ〜」


だいぶお酒が入っているのか、ハイテンションのシャロンはそういってクレアをイス代わりの木箱に座らせる。


「あの……シャロン殿……」


「聖女様ばっかりじゃなくて、魔女の言うことも聞きなさーい」


そういってどこから取り出したか水晶玉に手をかざす。


「見えます……。あなたは今恋をしている。」


「ちょ……ちょっと!!シャロン殿!!」


わかりやすく顔を赤くして周りを気にしだすクレア。


「お相手は年上……!しかも……同じ……」


「あーーーーーー!!も、も、もう大丈夫ですから!!」


「自分に正直になると吉。と出ています。」


クレアは真っ赤になって下を向いてしまった。

なんだかシャロンには色々見えてるようだ。


広場の人だかりが消え、私達が宿に入ったのはすでに深夜だった。あぁ……。疲れた。


しかし、次の日の昼になっても、その冒険者は来なかった。


「あやつめ……あれだけ遅れるなと言っておろうに……」


ロブロットは頭を抱えてしまっている。


「ううむ。こうなると話が変わってくるぞい……」


腕を組み、なんだか真剣な面持ちで考え事をしだすロブロット。けっこう緊急事態のようだ。


「何か良くない状況なのですか?」


「いやぁ実は、スタンレーに向かう途中討伐の依頼を一件受けておるのですが、そいつがおらんことにはなんとも……」


「やはりジルエールなど信用できん!我々で片付ければ良いだろうに」


リグナーは痺れを切らしている。冒険者に待たされているということがよほど許せないのだろう。


「さすがに今回は相手が悪い。お前さん達を危険な目には合わせれん」


いつもの楽しげな表情が消え、冒険者としての顔で首を横に振るロブロット。私は尋ねる。


「そんなに手強い相手なのですか?」


「ええ。ローグという人型の魔物でしてな。こいつらは集団で行動する上に非常に狡猾な魔物です。それに……ローグの群れの中に武器を持ったヤツが確認されとります。」


「はん!だからなんだというのだ!」


シャロンがロブロットの代わりに答える。


「『武器を持った魔物には近づくな』というのが私達冒険者の鉄則です。正直私達では手に負えないでしょう」


「ジルエールの奴らになら出来ると?たかが武器を一つ持ったごときで何を恐れる必要があるのか!」


ロブロットは大きなため息をついて、リグナーに言い放つ。


「魔物に食われかけとったくせに何を言っとるんじゃ……。お前さんたかが武器一つというが、そもそも何故魔物が武器なんか持つと思う?」


「さぁな。人間の真似でもして強くなった気でいるんのだろう?」


「やれやれ……。魔物にゃもともと爪や牙といった武器があろう。であるにもかかわらず、わざわざ慣れん人間の武器を持つのは、その武器がただの武器じゃないからじゃ」


クレアが何かに気づいたように呟く。


「マジックアイテム……!」


ロブロットはコクっと1回縦に首を振る。


「そう。そしてそのマジックアイテムの持ち主は……

ワシら冒険者じゃ」


冒険者のマジックアイテムを魔物がもっているということ、それはすなわち持ち主を殺して奪い取っているということだ。

その時点でその魔物がマジックアイテムを使いこなす冒険者よりも強いということになる。

そして更に、その魔物の手にマジックアイテムが渡ってしまっているという状況だ。


「本当にヤツ等の中に『武器持ち』がおったらワシ等だけでは到底対処出来ん。それに武器を持った奴らは他の魔物にはない能力を持っとる可能性が高い。簡単に挑んではいかん」


私達は討伐を後回しにして、先にスタンレーへ向かうことにした。


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