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異世界の果てに旦那と子供置いてきた  作者: ジェイ子
第三章 ラグナ大陸編
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第百七話 入団試験


今まで一人も合格した人間がいない……?

じゃあリゼは私達を落とすために……。


「ごめん。先に言っておけば良かった……。リゼは盗賊ギルドとソウルイーターに対して尋常じゃない恨みを持ってるの」


そうだったのか……。


「リゼは……ソウルイーターに妹を殺されたの……。奴は盗賊ギルドと手を組んで王宮に入り込んだ。そしてリゼの妹、システィアを騙して彼女の魂と魔法を奪い取ったのよ……」


思い出した……。

ランバルディアという名前。

サキがクローディアに言い放ったものだった。


リゼが盗賊ギルドを憎むのは当然のことだろう……。

でもコレットは……。

彼らの呪縛から逃れようとしていたのだ。

少なくとも私にはそう見えた。


リィンに聞いた話では、リゼは国を巻き込んでこの街の小さな窃盗や詐欺でも、盗賊ギルドに付け入られる様な隙は徹底的に排除していったそうだ。

そのせいもあってここグランハイムは大陸一の治安の良さを誇っている。


今のままではこの国でコレットは生きることはできない。

だからなんとしても入団試験を通過しなければならないのだ。


「私……もう一度リゼに掛け合ってくる……!!」


「心配ありませんよサキ。こう見えて私だっていろいろな問題に打ち勝ってきたんですから」


「いや……でも……!」


「ずっと守られてばかりは嫌です。私もジルエールのみんなの様に生きると決めました」


「シルヴィア……」


私はサキの手を取りギュッと強く握った。




宿に戻った後、私は明日へ向けての準備をしていた。

コレットはよほど疲労が溜まっていたのだろうか、ベッドに倒れ込んだと思った瞬間、気絶するかの様に眠ってしまった。

時々うなされる様にしてブツブツと何か寝言を繰り返している。

私自身、彼女を助けることが正解かどうか分からない。

それなのにこんな大事にしてまで彼女を庇っている自分に答えが出せないまま、翌朝を迎えてしまった。



ちょうど日が昇り始める早朝、鐘の音と共に私達はリゼとリィンに連れられてグランハイムを立つ。


移動の手段は馬車だ。リゼとリィンが乗るものと、私とコレットの乗る二台。

試験場となるところへはここからそう遠く離れてはいない。

二時間くらい街道を進んだところで、街道を外れ細い道へと入っていく。その先の小高い丘には岩肌が剥き出しになった斜面が続いていた。

まるで工場現場の様に草木はなく、掘り起こされた土砂が辺りを覆っている様な荒れた道だ……。

そんな道の真ん中で、前を走るリゼの馬車が止まる。


「着いたわ。ここよ」


馬車を降りリゼが指し示す岩壁の隙間を見ると、そこには小さな穴が空いてる。

あの洞窟が試験場だと言う。


「合格の条件は一つ。あの洞窟の奥には魔法石が生成されてるわ。それを持って帰ることができれば、あなた達を認めてあげる」


え……。そんなことでいいのか……?

照光魔法(オーブライト)が使えるから灯りの心配は無いだろう。

それに魔力探知ではこの洞窟の奥からは大きな魔力反応は感じられない……。

当然魔物は生息しているだろうが、苦戦するような相手はいない様に思えるのだが……。

とはいえ私は攻撃魔法が使えない。攻撃はコレットの魔法に頼るしかないが、バーラックさんからもらった杖があれば聖騎士化魔法(ホーリーナイト)も使うことができる。

それにコレットの杖の力も合わせれば相応の魔物は倒せるはずだ。


「行きましょうコレット」


コレットは怯えながら、私の後ろに隠れるようにして後ろを歩く。


「一つ言い忘れていたけど……」


洞窟の入口に差し掛かった時、後ろからリゼが話かける。


「日没までに戻れなかった場合……。そこで失格よ。良いわね?」


私はその言葉に一度だけ頷いて、再び洞窟の奥に目を凝らす。

中からは冷たい風が漏れきており、そのまま何処かに吸い込まれてしまいそうな雰囲気だ。

ゴクリと息をのんで足を一歩一歩慎重に進めていく。




洞窟の内部は人一人がやっと通れるくらいの道が続いており、入ってきてから今に至るまで分かれ道もなかった。

オーブライトで周囲を照らしながら魔力探知で警戒もおこなう。

洞窟へ入ってから一時間ほど歩いたくらいだろうか。

私達は大きく広がった空間へと出た。


二階建ての建物がすっぽり入るほど大きな空間の奥に、キラキラと輝く石が群生しているのが見えた。


「あれ……でしょうか?」


私達はその石に近付き手にとって眺めてみる。

その石達はオーブライトの光に照らされ、淡く美しく輝いていた。

石を包み込む様にして魔力を帯びている。魔法石の特徴だ。


「これで間違いないようですね。これを持って帰りましょう」


私は魔法石をバッグに詰めると、コレットと共にもと来た道を戻る。


だがそこで異変に気付いた。


「分かれ道……?そんな……!来たときには無かったのに……!!」


自分の目を疑ったが、確かにそこには左右に通じる分かれ道が現れたていたのだ。

おかしいと思った。簡単過ぎたのだ……。

目的地まで一本道な上、魔物とも遭遇しなかった。

なるほど、本番はここからということか……。


「気を付けて進みましょうコレット」


コレットが私に近付いた瞬間だった。



ヒュンッ!!



後ろからの殺気にかろうじて反応し、身体を伏せる。


「なっ……!コレット……!?」


コレットは私に向けてナイフを振り降ろしていた。


「コレット!!どうしたというのですか!?」


コレットは黙ったまま冷たい目で私を見下ろしている。ズキッと鋭い痛みが腕に走り、そこからじわじわと真っ赤な血が滲んでいく。


「あなたってホントにお人好しなんですね……」


ギュッとナイフを強く握りしめながら、ゆっくりと私に近付いてくるコレット。


コレット……そんな……!まさか……!

いや今は考えている場合じゃない!!逃げないと!!


私は急いで身体を起こし、左側の道に逃げ込んだ。

分かれ道の先にはまたいくつもの分かれ道があり、もはやどこをどう進んだか覚えていない。


しばらく走ったところで足を止めて振り返る。

コレットは……追って来ていないようだ……。


私はその場に崩れ落ちる様に座り込むと、大きく息をはいた。


ズキッ!


先程傷付いた腕がまだ痛んでいる。

傷口からまだ血が出続けているではないか……!!

回復してない……!?なんで……!?


傷口に手を宛てがい、回復魔法を使用するのだが、傷口は一向に塞がる気配がない。


魔法はちゃんと発動している……。

ということはあのナイフに何か回復魔法を無効にする効果が付与されていたのか……?


持っていたハンカチで傷口を強く縛り、再び立ち上がった瞬間……。前方から大きな魔力が近付いてくる。



ウソ……?そんな……!?

だってこの魔力は……!!



その魔力の圧力に、私は足がすくみそうになった。

私はこの魔力を知っている。

いや、忘れる理由は無いのだ。つい先日までこの魔力と対峙していたのだから……。


コツン、コツンとこちらに近づいてくる足音が、静かな洞窟に響き渡る。


そしてついに、その足音の主が暗がりから姿を現したのだった……。


「ごきげんよう。聖女様……」


「クローディア……!!どうしてここに……!?」


クローディアは不適な笑みを浮かべる。


「逃げたと思った?残念。あなた達の後を追ってたのよ」


そう言って両方の掌から二つの光球を出現させる。


「お仲間なら来ないわよ?ほーらこの通り」


まさか……!!


「リゼ……!!リィン……!!」


私の顔を見て勝ち誇ったかのように笑うクローディア。


「いいわ!その顔!さぁ……絶望に染まっていくその顔……もっと私に見せてちょうだい……」



クローディアは腕から黒い触手を発生させて、私をめがけて伸ばした。

咄嗟にプロテクションを展開し防御するが……。


「その魔法はもう見たわ!!」


クローディアの触手はプロテクションをすり抜け、鞭の様にしなって私の身体に直撃する。


鈍い音と共に私は吹き飛び、後ろの岩壁に激しく叩き付けられた……。















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