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再会と反対と小さな恋心

「シャルロッテ様、フレデリカ様、お久しぶりですね」


「ティーナ様、お久しぶりです。ようこそいらっしゃいました!」


花が咲き乱れる温室に、1年ぶりに会うティーナが現れた。流れる銀の髪と深い碧の瞳。結婚して子供もいるのに、清廉さも変わらず美しい姿だった。


「ティーナ様、さぁ、こちらにどうぞおかけください。道中、お疲れになったのでは?」


フレデリカが、ティーナに声をかける。


「お気遣いいただいて、ありがとうございます。大丈夫ですわ。久しぶりに楽しい旅でしたわ。それにしてもシャルロッテ様、立派な淑女になられましたね」


ティーナは少し目を細めて、シャルロッテを優しく見つめる。


「ティーナ様のお陰ですわ。ティーナ様には色々沢山の事をご教授いただきましたもの」


シャルロッテがティーナに感謝を述べる。淑女としてのマナーはフレデリカから、淑女として得るべき以上の知識はティーナから学んだのだ。ベルガ―ライドが一年で一番過ごしやすい季節の夏、避暑をかねてシャルロッテとラべリオンの二人はベルガ―ライドを訪れ、ヘンドリック一家と過ごしていたのだ。

その際に、乗馬や剣技などはヘンドリックに、他国の言語や歴史、世界情勢などの知識はティーナから教えを乞うていたのだ。


「シャルロッテ様は優秀な生徒でしたもの。わたくしが教える事はもうなにもございませんわ。あとは彼の方のお気持ちだけですわね」


侍女が用意した紅茶を口にし、ティーナが少し困った様な表情を浮かべる。


「ティーナ様.......」


意気消沈してしてしまったシャルロッテを横目に、フレデリカも苦笑する。


「本当に。年月を重ねても罪な方ですわ......。今頃ヘンドリック様はルべリオン様に

小言をされている事でしょう。ティーナ様、本当に申し訳ありません」


小さく頭を下げるフレデリカに、ティーナは困った様に笑う。


「いいえ、元はと言えば、わたくしとヘンドリック様が悪いのですもの、ルべリオン様も文句の一つや二つ、仰りたいのは当然ですわ。こちらこそ、申し訳なくて....。相変わらず、何もないのですか。彼の方からは?........全く、困った方ですわね。彼是色々と考えて身動きができなくなっていらっしゃるのでしょうけど」


ティーナは小さく溜息をついて、ティーカップをテーブルに置く。


「シャルロッテ様。シャルロッテ様がリカルド様に嫁ぎたいと、王妃となる為に相応しくなりたいと、そうおっしゃられてベルガ―ライドにいらっしゃってから早5年。誰が見ても、シャルロッテ様が王妃となるのに相応しい淑女となられましたわ。正直、カルバナスにこだわらなくとも、どの国の王室に嫁がれても、ですわ。それでも、シャルロッテ様はリカルド様を望まれるのですか?この6年、一度もシャルロッテ様に対して心を見せない方でも?ルべリオン様の反対を押し切っても、家族を、国を捨てる事になったとしても、それでも貴方はリカルド様の妻となりたいのですか?」


シャルロッテを静かに見つめ、ティーナがシャルロッテに問うた。


ティファーナとヘンドリック、二人の姿を見つめていたリカルドの後ろ姿。いつか自分を許せたら、と口にしていたリカルド。ティファーナが幸せになる事を、きっとフレデリカの幸せだって願っていたはずのリカルド。三人の間でどんな事があったかは、シャルロッテには正確には理解できていないのかもしれないが、それでも、フレデリカとティファーナが幸せになっているのならば、リカルドも幸せになるべきだと、シャルロッテは願っていた。


「えぇ、ティーナ様。リカルド様がわたくしの心に応えてくれなくても、それでもわたくしはリカルド様の妻となって、リカルド様を幸せにして差し上げたいのです。6年前のあの日から、わたくしの心は変わりません」


シャルロッテの真摯な言葉に、ティーナは溜息をついて笑った。


「ヘンドリック様が、、シャルロッテは一度言い出したから誰の言う事も聞かないから、と、そうおっしゃってましたが、本当に。シャルロッテ様、リカルド様を宜しくお願いしますね。シャルロッテ様ならば、きっとリカルド様のお心を救って下さると思いますから」


「ティーナ様.....。はい、頑張ります」


シャルロッテは、ティーナに誓った。



「母上!シャルロッテ様、こちらにいらっしゃったんですか!」


扉を大きな音を立てて開いて、一人の男の子が飛び込んできた。


「アラン、フレデリカ様やシャルロッテ様に御挨拶は??」


ティーナに叱咤されて、その男の子がハッとした表情を浮かべ、その場で挨拶をされた。


「アラン・ベルガ―ライドでございます。本日はお招きいただきまして、ありがとうございます」

銀の髪と紅い目をした、ベルガ―ライドの後継者、ティーナとヘンドリックの嫡男のアランだった。

「アラン様、いらっしゃいませ。お変わりございませんでしたか?」


「シャル姉様、変わりはなかったです!シャル姉様こそ、体調は大丈夫なのですか?1年ぶりにお会いできて嬉しいのですが、実は先程変な噂話を聞いたのです」


深刻そうな表情を浮かべ躊躇いつつ、アランはシャルロッテに尋ねた。


「シャル姉様、ご結婚されるとのお話は本当ですか?先程、侍女らが話しをしていたのを小耳に挟んだのです。シャル姉様が18歳になったら、カルバナスの王妃となられると。嘘ですよね。そんな話。私の聞き間違いだと、勘違いだと。そうですよね?」


シャルロッテに真剣に言い寄るアランを見て、フレデリカは目を見張り、ティーナは頭を抱えて項垂れてしまった。


「アラン?流石に耳が早いわね。そうよ、わたくし、18歳になったら、リカルド様の妻にって思っているの。アランはラべリオンと同じ、わたくしの大事な弟ですもの。応援してくれるわよね?」


ニッコリ笑って、アランの頭を撫でようとした時に、シャルロッテが伸ばした手を、アランが乱暴に手で打ち払った。


「アラン?」


シャルロッテは、打ち払われた手を寄せ、反対側の手で打たれた部位を擦る。


「弟なんかじゃない!私はシャルロッテ様の弟なんかじゃない!私は、私は.....」


今にも泣き出しそうな顔して、アランはシャルロッテをみつめる。


「そこまでだ、アラン」


扉からヘンドリックとしかめっ面をしたルべリオンが現れた。


「アラン、今日はシャルロッテの18歳の誕生日だ。シャルロッテも今日からは成人の淑女だ。一方的に言い募る事が、淑女に対する紳士としての態度なのか?」


ヘンドリックが優しく諭す様にアランに話しかける。目を潤ませ、唇をかみしめてヘンドリックの言葉を聞くアラン。


一体なにがどうなっているのか、わからずにオロオロするシャルロッテをしり目に、ルべリオンはティーナに話しかけた。


「久しいね、ティーナ殿。ヘンドリックとは相変わらず、仲睦まじく過ごしているみたいだね」

「お久しぶりでございます、ルべリオン様。お陰様でヘンドリック様とは変わらずに過ごしておりますわ」


「すまないね。折角遠くからわざわざやってきてくれたのに、こんな事になってしまって」


ヘンドリックの言葉を黙って聞いているアランにチラリと視線を向ける。


「いいえ、いずれは話さねばならない事でしたから。親としては、子供も気持ちを大事にしてやりたのですけど、出来る事と出来ない事がありますから」

「まぁ、確かにね。せ・め・て・半・分・位・の・差・で・あ・れ・ば・ね・ぇ・。・カ・ル・バ・ナ・ス・よ・り・は・ベ・ル・ガ・ー・ラ・イ・ド・の・方・を・押・し・た・ん・だ・け・ど・」


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