プロローグ
「カセット」ある科学者の発明。
自分自身の蓄積した知識をデータ化して他人の頭にコピーする技術。その科学者は高慢にも、優れた自分の頭脳を他人にも授けてやろうとしたのさ。しかし実験は失敗した。人は他人の記憶に耐えられない。かくしてこれらの技術は隠匿された。
「コレカラコノ場所デ、ソノ実験ヲ再開スル」
教室の黒板の上。機械的な音声はそのスピーカーから聞こえてくる。
うすぼんやりとした意識から覚めると、三十名の生徒達は六×五で整然と並んだ机と椅子に着席していることに気がつく。状況が理解できずに動揺し周りを見渡す生徒たちをよそに、スピーカーの音声は続ける。
「マア大丈夫ダヨ。以前ノ彼ノ実験ハ失敗シタガ、今回ハ勝算ガ有ル。“決闘”コレカラ君達ニハ様々ナゲームニ挑戦シテモラウ。ソシテ、コレガ重要ナ事ナノダガ、勝者ハ敗者ノ知能ヲ奪ウ。カセットノ技術ヲ用イテネ。ソウヤッテ三十人ガ決闘ヲシテ、勝ッタ者ガ負ケタ者ノ知能ヲ得ナガラ勝チ進ミ。最後ノ一人ニナッタ時、カセット技術ハ完成スル」
そこでスピーカの音声はたっぷりとための時間を取る。機械的な音声が止まっただけだし、間を取る向こう側の口元が見えたわけでもない。それでもクラス三十名の生徒は、この後、その音声が最も重要なことを言おうとしているということがわかった。
「ツマリハ神ノ誕生サ」
これは、私が私自身を取り戻す物語。