表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/36

33.リベンジへ

「あんたもさっさと稼ぎなさいよ」


(んっ……なにこの声……?)


どこか見覚えのあるみすぼらしい部屋、畳の上に敷きっぱなしの布団の上に雑に置かれた座椅子に座り、爪の手入れをしてマニキュアを塗る女性の姿がリゼリアの前に現れる。


自分はこの女性に見覚えがある。そう直感で理解したリゼリアに女性は興味なさそうに話を続けた。


「私に似て顔はいいんだから、股ひらけば男なんて簡単に釣れるわよ〜?」


(いや……そんなの認めない)


「なにカマトトぶってんのよ、どうせすぐ慣れるのに」


(嫌……嫌っ!私は、私は母さんとは違うっ!!)


(酷い母親ね……まあこうなるのも仕方なかったみたいだけど……)


リゼリアが耳を塞ぐと、女性の姿がモヤのように消え、今度は別の女性の声が響く。先ほどの女性に比べると、儚くも不思議なほどに品のある声だった。


「えっ……あなたは誰?」


(そういえばここにあなたを送った時、お喋りをするのを忘れてたわね……私は『グリザイユの貴婦人』、貴方達迷い子がストレンジフィールドと呼ぶこの世界を仕立てたものよ……)


「迷い子……もしかして流されモノのこと?というか仕立てたって、どういう意味なの?」


気がつけば部屋だった空間は消え、白い空間の中に漂っていたリゼリアは思わず声を出して姿なき貴婦人に問いかける。


(この世界が生まれたきっかけは私にあるの……だからこの世界の仕立て人は私……そんなことより、貴方ってば面白い立ち位置にいるみたいね……あまり興味なかったけど、これからは貴方も額縁に飾った方がよさそうね……あの子と出会った時が楽しみだわ……)


「わけわかんないこと言わないでよ、あんたは私の何を知ってるわけ?」


(今言わせるの……?そんなのつまらないじゃない……いつか必ず受け入れ難い現実を直視することになる……その時までの辛抱よ……)


「なによそれ……早く姿を現しなさいよ!」


(元気が良いわね貴方、とても素敵よ……さぁ、貴方にはやるべきことがあるのでしょう……?もう目覚めなさい……)


………………


「私は……あれ?夢……?」


何かに引っ張られる感覚と共にリゼリアが目を覚ます。自分は荒野の中で気を失ったはず、それなのに今は病院のベッドのようなものに寝かされていたようで、その現状と直前まで見ていた夢の内容に混乱して頭を抱える。


「起きましたか」「随分とうなされていましたね」


そんな彼女にふと、聞き覚えのある声がかけられる。


リゼリアが咄嗟に声の方を向くと、そこにはあのアピナに付き従っていた二人の従者が立っていた。


「あんた達は……なんでここに?」


「随分と大変な目に遭ったようですね」「ここはアルカネラコロニーの治療院です。我々があなた方をここまで運んだのです」


ここが治療院だと聞いたリゼリアは窓の外を見る、外にはこの世界に来てから唯一知っている文明の景色が広がっており、ここがアルカネラコロニーの中だと理解してリゼリアの肩から力が抜ける。


「よくここまで運んでこれたね。というか、なんであそこにいたの?あんた達はアピナの付き人でしょ?」


「それが……アピナ様はあなたに負けた事を酷く気に病んでおられました」「だからこそ、あなたに何かあってはならないと、万全の状態のあなたに勝たねばならぬと、我々にあなたの監視と護衛を任せておられたのです」


それを聞いて、リゼリアはアピナらしいと小さく笑った。まだこの世界に来てから一戦しただけの付き合いだが、あの一戦だけでアピナという人物の事をよく理解したリゼリアは、彼女の不器用な優しさを嬉しく思ったのだ。


「じゃあお礼しないといけないね、アピナは今どこに?」


「それが……」「アピナ様は、昨日ランカーの招集に呼ばれてから連絡がつかないのです」


それを聞いてリゼリアは声を出さずに動揺する。萠丹歌の言っていた通り、昨日の夜ランカーはあの施設に集まり、それ以降音沙汰が無い状態であるのは間違いようだった。


「アピナ様は招集に応じる際に我々にあなたの護衛を頼んで出て行かれました」「だからこそ、アピナ様の無事を信じて我々はあなたの護衛を遂行していたのです」


「……それなら、やっぱり行かないといけない」


「えっ……?」「どこに行かれるのですか?」


再戦(リベンジ)だよ、今度は私が……アピナをザビメロを、みんなを助ける番だ」


次の目的を定めたリゼリアは、ベッドから起きてすぐに机に置かれた道具やホールドを身につけて病室を出る。


「そういえば私のデッキはどこにあるの?もしかして盗んでないよね」


「滅相もありません!」「あのーリゼリアさんはマイスターカードを所持していましたよね……」


「げっ……もしかしてソレアが何かした……?」


会話をしながらロビーへと向かう三人の耳に、何か騒がしい音が聞こえてくる。


「あっ、あいつ……!」


「んながぁぁぁぁ!!邪魔しないで!!早くあいつを出しなさいよ!!」


リゼリアが急いでロビーに向かうと、ロビーでは複数の職員に押さえつけられているソレアの姿があった。


ソレアと組み合っているのは体格の良い種族の男性職員ばかりだったが、それでも彼女を完全に取り押さえることはできずに振り回されていた。


「こらっ!あんまり暴れるな!」


「あっ!やっと出てきたわね!あの約束忘れたとは言わせないわよ!」


リゼリアの姿を発見したソレアが、まとわりつく職員を一気に持ち上げてそのまま押し飛ばしてリゼリアまで飛んでいく。


「約束……?約束なんてしたっけ」


「はあ!?この状況をお前がぜんぶ説明してくれるって、あの獲物を狩ったら教えるって約束したでしょ!!」


目の前に着地した彼女に対し、リゼリアは『約束』などという身に覚えのないことで詰められていることに疑問を呈する。すると、ソレアは怒りの形相で右手の人差し指でリゼリアの胸を指す、その際に彼女の鋭い爪が皮膚を突き破ってぷすっと刺さる。


「痛いんだけど」


「ごまかさないで!この場所はなに!?なんで我はこんな姿になってるの!?」


「分かったって、ちょっとここに座って」


……それから、ドラゴンのマイスターという物珍しさから野次馬が囲む中で、リゼリアはソレアにこの世界とここまでの経緯を話した。リゼリアは慣れており、ソレアも人間の視線など気にしていないのか、二人とも淡々と会話をしている。


ソレアは元々は生粋のドラゴンだったようだが、ある程度人間の文化というものにも詳しいようで、突拍子もないこの世界の理屈以外にはある程度理解を示していた。


「つまり、この世界はおまえ達もよく分からず、我がこの姿になったのはおまえ達の使う秘術によるものだと、そういうわけなのだな」


踏ん反りながら話を聞くソレア、動揺すると少女らしい喋りになる彼女だが、余裕がある時はこのように尊大な態度と喋り方をする彼女に、リゼリアはどこか滑稽さを感じていた。


「そういうこと、ちなみに元に戻す方法は知らないし多分できない」


「フンッそれはまあいい、戦いとは奪い奪われが当たり前だからな、我の力を奪ったことは許容しよう。それよりも……なぜお前は我を従えてるつもりなのだ?おまえは我を討った気になってるのか?」


「別にそんな気になってるわけじゃないけど……でもカードになったんだから、あんたの所持者は私よ」


それを聞いてソレアは俯き肩を震わせる。


「ふ、ふふ……我は、いや我らドラゴンは……誰にも従わない!」


そう言って、ソレアは拳に炎を纏わせリゼリアに殴りかかる。


「きさまが我の上に立つというのなら!我がきさまを倒して上に立つ!」


瞬間的な攻撃にリゼリアは表情すら変えることが出来ず、その拳を顔面にモロに受けてしまう。そして……


「んむっ、痛い」「なっ!?なんでぇ!?」


リゼリアの顔面にぐにっと、ソレアの拳がめり込みリゼリアが淡々と言葉を発する。明らかに殺人級の剛気を放つパンチだったが、なぜかリゼリアにはダメージがほとんど無いようだった。


「ソレア、戻って」


「なっ!またっ、体が……あ〜れ〜!」


そして、拳を頬にめり込ませながらリゼリアがソレアのカードを取り出して命令すると、ソレアは再びカードの中に吸い込まれてしまった。


「リ、リゼリアさん」「大丈夫なんですか?」


「全く、土壇場であんなに協力したんだから大人しく従って欲しいんだけど」


心配する従者二人をよそに、リゼリアは少し呆れるようにカードを眺める。


「大丈夫、ダメージはなぜか全然なかったから、それよりもえーと……そういえば二人はなんて名前なの?」


「そういえば名乗っていませんでしたね、わたくしはかのん」「ワタクシはしのんと申します。以後お見知りおきを」


そう言って、かのんとしのんの二人は袖で隠れた手をつき合わせて礼をする。


「ご丁寧にどうも。えっと、そのかのんとしのんがひまるも運んでくれたんだよね?あいつ今どこにいるの?」


「従者の方ですか?あの方も治療を受けてますよ」「満身創痍だったのですが、『お前たちにまで借りを作りたくない』と言って自力でここまできたので、かなり酷い状態まで悪化していたと聞きました」


それを聞いてリゼリアが頭を抱えて呆れる。なぜそこまで貸し借りにこだわるのか分からないリゼリアからしてみれば、彼女の行動は無駄に高いプライドを保とうとしているようにしか見えなかった。


そんな会話をしていると、治療棟の方から拘束具をガチャガチャと鳴らしながらひまるがやってくる。相変わらず口すら自由に動かすことが出来ない完全拘束状態だが、どうやら傷は治って普通に動けるようになっているようだ。


リゼリアはすぐに彼女の発言許可を出す、するとひまるの口部分が開きひまるが新鮮な空気を肺に入れる。

「ぷはっ、やっと目が覚めたみたいね、ずっとそいつがうるさくて迷惑してたんだけど」


「なんか無茶なことしたみたいだね、また蘇生しないといけなくなるから勝手なことしないで欲しいんだけど」


「はぁ?てめえだけでもウンザリなのに、こいつらにまで借りをつくれるかっての、それより行くの?」


「うん行くよ、でも先にギルドに行って換金してもらわないと、多分しっかり準備しないと本気のあいつには勝てない」


そう言って立ち上がり、支払いのためにカウンターに向かうリゼリア、そんな姿を「あっそ」とだけ言ってついていくひまる。


「なんでしょう、リゼリアさんって」「ええ、明らかに強くなっています、アピナ様と戦った時よりも」


そんなリゼリアの姿を見て、かのんとしのんは彼女の成長を感じていた。

        本日のカード紹介コーナー

青 双生従者 かのん&しのん 2

オンリー・ユニット ウィザード ヒューマン 従僕

自分のターン開始時、手札を一枚デッキの下に置いてもよい、そうしたらカードを二枚引く。

このユニットが場に存在する限り、自分のユニットのコストは+1される。

フレーバー:アピナに付き従う従者の双子。その心酔ぶりは元の世界からの付き合いのように見えるが、実際にはこの世界で孤児だった二人をアピナが拾ったのが馴れ初めだったりする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ