22.微かな不穏
「あ、あんた……なんでここにいんの?」
「…………」
宿屋の一室、その出入り口の前でリゼリアは目の前に現れたひまるの姿に動揺を隠せないでいた。
「ザビメロがなんか変な指示でも出したの?というかなんで何も喋んないのよ」
リゼリアの問いかけに無言を貫くひまる、しかしよく見ると何かを言いたげなようで、マスク越しに口をもごもごと動かしている。
「一体なにやって……あ、端末が……」
その時、リゼリアの端末が鳴り響き、彼女は咄嗟に手に取って画面を見た。
『現在、隷下対象は解明者リゼリアの支配下にあります。対象が発言権を要求しています、許可する場合は「ギルド公式犯罪隷属者管理アプリ」からジェイルマスクの項目にある解除ボタンを押してください』
「あれ?なんでひまるの管理者が私になってんの?」
メッセージはリサーチャーズギルドからのものだった。蘇生院で管理をザビメロに任せていたにも関わらず、自分がまひるの管理者になっていることにリゼリアは首を傾げる。
「うーん……とりあえず話だけ聞いてみるか……」
通知に従い、リゼリアは「ギルド公認犯罪隷属者管理アプリ」を端末に入れると、ジェイルマスクの項目を選択して解除を押す。すると、まひるのマスクから駆動音が鳴り、口元だけが動かせるくらいに開いた。
「くはっ……!あ〜うーざっ、たらい回しにされて最悪なんだけど、あんたら無責任すぎない?」
「そんなの私に言われても知らないっての、というかなんであんた一人なの?無責任とか言ってたけどザビメロはどうしたの?」
「それこそウチに言われても知ったことじゃないよ、指示通りに動いてただけなんだから。でも一時的に管理をあんたに移したってことはギルドの連中から聞いたよ、おっさんがどこにいるのかは知らない」
「なによそれ……ちょっと探しに行くよ」
「え〜?ウチはこのクソ重い拘束具付けて区域中を歩かされてるから、今めっちゃ疲れてるんだけど〜?」
「そんなの知ったことじゃないわよ、ザビメロ見つけてあんたを押しつけてやるんだから、ついてきなさい」
「おマチなさい!the……客人!」
乗り気じゃないまひるを連れて、リゼリアが宿の廊下に出ようとした時、宿のベルボーイとコンシェルジュの役割をしているアンドロイドが彼女を引き留めた。
「うっさい、このオンボロカカシ、いきなりなによ」
このストレンジフィールドは、少ない資源でそれなりに人の曖昧な思考を再現した思考ルーチンを持つ、という条件でしかアンドロイドの大量生産が出来ない。
そしてその条件を満たしたアンドロイドの一つとして、とある科学技術が発達した世界で使い捨ての用途で使われるアンドロイド、Jury-rigged Unreliable Neoteric Kinetron……通称『J.U.N.K』がコロニー内でのシヴィリアンの生活をサポートする上で十分な機能を有していると判断され、運用されている。
しかし言語能力に違和感があるため、アンドロイドに馴染みのないリゼリアは、顔のパーツのバランスの悪さや様々な廃材で作られた身体から「オンボロカカシ」と呼んでいるのだ。
「ギルドはNowな通知で、コロニー内に住み着いてるモノどもはタテモノからデるな!……言うております。」
「仮に今、外出したらどうなるの?」
「タイホー!!!」
J.U.N.Kの言葉で今外に出ることは許されないと知ったリゼリアが呆れながらまひるを見ると、彼女は「だから言ったじゃん」とでも言いたそうに肩をすくめた。
「だとさ、というわけでウチは寝るね。あ、手錠外してくれれば寝首をかくから外してもいいよ」
「だれが外すか、この変態殺人鬼」
リゼリアはまひるを睨みつつも、外出が禁じられている以上どうすることもできないと諦めて部屋へと戻り、まひるが隣のベッドで寝息を立てているのを確認したのち、全ての拘束具をロックしてリゼリアも眠りについた。
本日のカード紹介コーナー
紫 悪意ある歓迎 4
スキル
自分の場のユニットを一体選び、その後相手は自分の場のユニットを選ぶ。
前者のコスト、またはバイタルが後者より高い場合、後者を除外する。後者のコストから−2した数値分、自分はデッキからチャージするかドローする。




