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14.暗闇の中の危機

「……ん、ここは……?」


リゼリアが暗闇の中で目を覚ます、地面の触れる感触でこの世界に来た時の事を思い出しながら彼女が顔を上げるが、視界に映るのは深い闇だけだった。


「あーそっか、私落ちたんだっけ……ッ!?いたた……」


全身が痛む中、特に痛みが酷い箇所を押さえながらふらふらと立ち上がり、自分が落ちてきたであろう上空に広がる闇を見上げる。


「どれくらいの深さまで落ちたのか分からないけど、我ながらよく生きてたなぁ」


呑気にそんな事を言いつつも、すぐに簡易松明を取り出して火を灯すと、銃を構えながら周囲を警戒する。


「しまった、こういう時こそアルカネラを展開するべきなのかもしれない、咄嗟に使えるようにならないと」


そう言って、リゼリアがタクティカルプレートに手を掛けようとした時、何か奥で動くものの気配を感じた。


「……ッ!」


そちらに銃を向けつつ、ゆっくりと近づいてその正体を確かめる。


「あれ?これって私の荷物?」


それは、リゼリアのバックパックからはみ出したのだろうロープや回収用の袋が詰められたサブバッグだった。


「なんで動いたの……?そうだあれを使おう」


懐からユナゼラムを取り出して押し当てる、するとすぐにカードに絵柄が描写されていく。


無色 解明者のサブバッグ 1

オブジェクト 

このオブジェクトを消費:RECを二つ追加する。

この効果はレスポンスブロック中のみ発動できる。この効果の起動はブロックに含まれず、即時発揮する。

リアル効果:コスト6:ギルドが販売する標準セットのサブバッグを出現させる。有料600SFc(払えない場合効果は不発となる。)

フレーバーテキスト

ロープや回収用の袋に懐中電灯、そして予備のナイフと弾薬が入ったサブバッグ。解明者がギルドから支給されるシンプルな道具セットであり、同時に最も多くの者の命を救ってきた道具たちだ。


「…………ん?さっき動いたのは気のせい?」


カードの内容も、下部に書かれた無駄な文も、全てがこの目の前のバッグを普通の荷物だと表現している。


「まあいいや、早くみんなと合流して……わっ!?」


リゼリアがバッグに手を掛けようとした瞬間、バッグがガタンと動いた。厳密には動いたのではなく、"浮いた"と言った方が正しい。


「な、なに!?……あ、よく見たらここ、ところどころ光ってる……」


落ちたことで気が動転していたからだろうか、リゼリアはずっと気が付かなかったが、浮いたバッグの下をよく見れば、地面が仄かに白く光模様を描いていた。


「上もよく見たら……この洞窟そのものの性質が荷物を浮かせてた……?そっか、それなら落ちた私が無事なのも説明できるね」


リゼリアは一人納得したように頷く、この白く光る岩が物を弾く、又は浮かせる性質を持っているならば、周囲が暗くなるほどの奈落まで落ちたリゼリアでも、行動出来る程度の怪我で済んでいることの理由付けになる。


「んじゃまあ、この不思議な岩もカード化してさっさと帰り道探そっと、さてさてどんなカードになるかな〜……ッ!?」


リゼリアが内心ウキウキしながら、ユナゼラムを光る地面に押し当てようとした時だった。突如、未熟なリゼリアでも感じられるほど、強烈な殺気が背後に現れる。それは、普段は感情の機微が少なく、ドライな彼女の全身に鳥肌を立たせ瞳孔を開かせる程だった。


リゼリアは反射的に横に飛んだ。すると、先程までいた場所に刃が振り下ろされ、地面とぶつかり硬い音を奏でる。


「あんた……!なんで……!?」


殺気の正体、それはパーティを組んで一緒にダンジョンに入った解明者、羽田原 ひまるだった。


「あー?なんで一丁前に避けてんの?うーっざ」


先程までのぶりっ子からは想像がつかないほど、荒んだ顔をしながら見下ろす彼女。その威圧感は凄まじく、リゼリアですら少し怯む程だった。


「もしかしてこれが目的だったの……?じゃああの崩落も……」


「そーそー!あれはウチのせいだよ!剣突き立てたらあっさり崩れそうだなーって思ってさ、そしたら本当に二人乗った時点でヒビ入れたところから崩れ去って、思わず笑っちゃったよぉ!」


ニタニタと笑いながら説明するひまるを、リゼリアが軽蔑の念を込めながら睨む。


「しっかしさー、あのうーっざいドラゴンがいなくなって清々するよぉ、マジで邪魔だったからね」


「助けてくれた人に随分な言いようね」


「まあ、あのカスども殺すの止めてくれたのは感謝してるよ。あいつら視界で騒いでてうーっざたくて仕方なかったからちょっかいかけちゃったけど、流石にあそこでヤるのはマズかったからね」


いけしゃあしゃあと言ってのけるひまる、そんな彼女をリゼリアはただじっと睨み続ける。


「お前も、面と向かってウチに弱いなんて言わなければ別のやつにしてやったのにさー、余計なこと言わない方がいいゾ⭐︎」


「いつもこんなことしてんの?ダンジョン内の行動は全部端末に記録されてんだから足がついちゃうでしょ」


リゼリア達の使うSFLA tabletには、ダンジョン内での所持者の行動の殆どが記録される機能が備わっている。これによりダンジョン内での犯罪についてある程度は把握出来るようにはなっているが、それでも完璧ではなくギルドとしても参照程度の扱いとなっている。


「知らないのー?あの記録ってその後に精査が入るくらいには完璧じゃないんだよー?まあ、ウチはそういうの関係なくギルドに近寄らないんだけど」


「……ッ!常習犯のイカれた殺人鬼ってことね、よくそんなんでこの世界を生きれるよ」


「ぶっ殺せば大体手に入るからね、というわけでお前の荷物も……あれ?あのでっかい板切れはどこに……って、うわっ!?」


話に夢中で気がつかなかったのか、ひまるが今になってリゼリアの違和感に気がつく。リゼリアの周囲には、カードプレイヤーの要である筈のタクティカルプレートが、何故かどこにも見当たらなかったのだ。


そして、その違和感に気が散っていたひまるは、洞窟が定期的に起こす反発に足を取られて転倒しそうになる。


「今だ……!」


今度はひまるの方が、背後から何かが迫る感覚に襲われる。風圧で位置を読み取りなんとか剣で塞ぎ、そして彼女が振り返ると、その襲撃者はリゼリアのタクティカルプレートだった。


「へぇ〜……やるねえ、そんな考えるタイプとは思わなかったぁ」


思わぬ不意打ちに気を良くしたのか、ひまるが殺意を更に増幅させながら満面の笑みを作る。


そんな彼女に対し、弾かれたタクティカルプレートを手元に引き寄せながら、リゼリアはナイフと銃を構えた。


「やる気マンマンじゃん!じゃあ……ちゃんと楽しませてよ!」


「上等……!デワース!」

        本日のカード紹介コーナー

紫 進行妨害 3

スキル

相手のコスト4までのスキルに対してレスポンスブロックを組んで発動出来る。

そのスキルを打ち消す。

フレーバー:敵の進軍を止めたいなら二つ方法がある。相手の進路を塞ぐか、道そのものを消すかだ。

別バージョン: もはやお前は、進むことも引き返すこともできない。

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