13.カダミアの洞窟
ごめんなさい、今年に入ってずっとサボってました……
今月から更新頑張ります。
「着いたな、ここが『カダミアの洞窟』だ、アルカネラを作った連中の世界にあるカダミアという国の一部の環境が再現されていることからこの名がついたらしい」
先頭に立つノルガマードが荒野の中にポツンと現れた穴を、松明で照らしながらリゼリアたちに説明を始める。
「はいはい、じゃあさっさと中に入ろう」
「ダンジョン調査はやっぱりワクワクしますね、あっ!ノルガマードさんも報酬先払いだからって回収をサボらないでくださいよ?」
「分かってる、リゼリアはおれの後ろにいろ、ひまるは背後を警戒していてくれ」
協調性のない二人に不安を感じながらノルガマードは腰に差した刀を構えて洞窟の中へと足を踏み入れた。
「さて、お前はマイスターカードとかいうとんでもないものを求めているらしいな」
「そ、だから多少の無茶は承知しているよ」
「ウチも話は聞いてますよー、すごいカードなんですよね?」
「狙って手に入る物じゃない、とりあえずはカードの収集を念頭に置け……そう伝えろとザビメロから言われている、だから無茶はするなよ」
「はいはい、でも300枚も必要?デッキなんて50枚で作るんだからそんなにいらないでしょ」
そう言ってリゼリアは、背中に背負った冒険用としては小さなバックパックにザビメロからプレゼントと称して押し込められた大量の紙束を、ポンポンと軽く叩いた。
「カードプレイヤーは所持しているカードの枚数が、そのままデッキ構築と戦略の幅に直結する。だから必ず倒した敵、変わった物や事象を見つけたら必ずカードにしろ。とザビメロから言われている、だからとりあえず今は片っ端から調査と回収を行うぞ」
一番経歴が長いということもあってパーティリーダーとなったノルガマードは、作戦を考えて松明を点けると、特に言うこともなくさっさとダンジョンに入っていった。
「うー、全然協調性が無いですねー、勝手に行っちゃうなんて。もしもの時はウチが守るのであんなの放っておきましょ」
そんなことを言いつつも、ひまるもリゼリアを置いてさっさとダンジョンへと入ってしまう。
「……ま、勝手にやってくれるなら私も勝手にやるだけだし別にいいけど」
リゼリアは呆れるように肩をすくめると、バックパックを背負って二人の後を追いかけた。
………………
ダンジョン内は、洞窟のイメージ写真として使えるほど特色の無い至って普通の洞窟だった。
「はぁ〜……ご大層な名前なのに、中身はthe普通って感じ」
なんだかんだ言っても異様な場所だと覚悟をしてダンジョンに入ったリゼリアは、思わず拍子抜けして大きく息を吐いた。
「そうか、お前の世界にはああいうのがいたのか」
先頭で松明を掲げ、周囲を観察していたノルガマードはすでに"何か"を見つけていたらしく、それを指しながら隙だらけのリゼリアに問いかけた。
「え?え……うわぁ」
指差した方向を見たリゼリアが思わずドン引きの声を出す。
そこにいたのは、背中に生えた触手と四肢に似た部位で天井を這い回るナメクジのような生物だった。
「アレは『パノマベ』というらしい、カダミアにも生息していた原生生物との事だが、中々奇怪な生物だ」
距離にして100m、何かを探すように不規則な動きで近づいてくる怪物を凝視しながらリゼリアが銃を構える。
「安心しろ、パノマベは岩肌に薄っすら生える苔類しか食わん」
そう言うと、ノルガマードはパノマベの真下まで行き、6mはあるだろう高さの洞窟を軽々と跳躍して天井に張り付くパノマベを掴んで、そのままリゼリアたちの前に華麗に着地した。
「見ろ、こんな風に緩やかな動きしかできん」
竜人に掴まれたパノマベは緩慢な動きで無意味な抵抗をしている、それを見てようやく落ち着いたリゼリアは銃を下ろし、その初めて見る異世界の生物をしげしげと観察した。
「危害のない原生生物なら放っておいていいですね、ノルガさんもいつまでリゼリアさんにそんなの見せてるんですか」
新人に異世界講習をしている竜人に対し、ひまるはそれに関心を示す様子もなく、先に進みたそうにノルガマードに文句を言う。
「おれ達がここに来た目的には、この新米にカードを集めさせるというのも入っている、というわけでカードにしてみろ」
そんな彼女に本来の目的を諭しながら、ノルガマードはリゼリアにカード化を指示をする。
とりあえず先輩解明者の教えに従い、リゼリアはバックパックから紙切れと化しているユナゼラムを一枚取り出すと、そのパノマベに押し当てる。すると……
「うわ……あの時と同じだ……」
当てた紙は仄かに光を放ち、パノマベと密着している所から絵柄を発生させていく。
「おお、確かにコレは不思議ですね」
先ほどまで興味が無さそうにしていたひまるも、これには流石に目を丸くして感嘆の声を上げる。
光が収まり、カードに絵柄がくっきりと描写されているのを確認してリゼリアがそれを見る。
緑 パノマベ 1
1/2 ユニット 貝
デッキチャージ+1
自分のチャージフェイズ終了時、自分は手札からカードを一枚墓地に置く。
「緑色のカード……色を混ぜるとデメリットがあるんだよね?じゃあ使えないな」
「おれも詳しくは知らんが、デッキチャージ+とついたカードはデメリットを補完してくれるからデッキがまとまっていないうちなら採用するのも手だとザビメロが言ってたぞ」
「へー、ザビメロから随分と入れ知恵されてるみいだね」
そう言いながらリゼリアはカードを大事そうにデッキケースにしまう。
「まあ私はザビメロのこと信用してるから彼の言うことなら素直に受け取るけど、どうせなら私に直接言って欲しかったよ」
「皆さーん!こっちになんか良さそうなのがありますよー!」
ザビメロへの愚痴を呟くリゼリアの背後から、ひまるが大声で呼ぶ声が聞こえ、二人が振り返る。
「おい!勝手に進むな!」
「ここにカードになりそうなものが見つかったんですよー!お二人とも来てくださーい!」
「お、それならさっさと行かないと、せっかくの獲物が逃げちゃうかも」
カード収集にノッてきたのか、リゼリアが楽しそうにひまるの元へ向かう。
「おい!バラバラに動くな!」
そう叫んで、近くの岩壁にパノマベを貼り付けてノルガマードが追いかける、が……
「え?きゃっ!?」
「うわっ!」
突然、二人の足元に大きく亀裂が入る、それは範囲を広げていき広がり切ると、そこから二人が立っていた岩場はバラバラに砕け散った。二人が短い悲鳴を叫んで暗闇へと落ちていく。
「なっ!?ちっ、油断した……!」
落下する二人に急いで駆けつけようとするが、ノルガマードが覗き込んだ時には二人の姿は既に消えていた。
「これくらいの崖なら駆け降りることが出来るな……待ってろ、すぐに見つけ……ぬっ!?」
突如背後から凄まじい敵意を感じてノルガマードが伏せる、すると頭上を何かが勢いよく通った。
「最悪のタイミングだな、パノマベに釣られて来たか」
ノルガマードは振り返り"それ"と向き合う。岩肌と同じ色合いで滑りのある皮膚は擬態に適しており、先が膨らんで棘のついた舌は獲物を確実に捕らえられるように進化している、それは大柄のノルガマードと比べても見劣りしないサイズの大型のカエルだった。
「『ジャイアントトード』か、異世界に来て美味いナメクジに出会えた嬉しさで興奮しているところ悪いが、おれもお前の相手をしている時間はないんだ」
そう言って、ノルガマードは静かに刀を構えた。
本日のカード紹介コーナー
黒 還元される死 3
インポート
自分のターン開始時、自分は墓地から一枚選んで裏向きにECゾーンに置く。
フレーバー:死ぬまで働く、ではない。死んでも働くのだ。