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9.解明者としてのカードプレイヤー

薄明るい夜が明けて、顔を出す陽の光がカーテンの隙間から部屋の中に入ってくる。


「ん……ふわぁ〜、ほんと昨日は酷い目に遭ったよ……」


リゼリアが目を覚まし、ムクリと起き上がる。結局あの後、ランカーと熱い試合を繰り広げた謎のプレイヤーの詳細を聞こうとしたコロニーの住人たちに行く手を阻まれ、帰りが夜中になってしまった。


というより、ルールも録に把握していない初心者が、何故あそこまで練った戦略で戦えたのか、どこでカード同士のシナジーに気づいたのか、どのようなカードが肌にあったのか、というアルカネラの話で時間の大半を消費してしまっていた。


「ここの人たちってほんとにあの『アルカネラ』ってカードゲームが好きなんだね〜、結局その話ばっかで時間が潰れたよ」


リゼリアがそう愚痴りながら支度をし、部屋を出て下の食堂で朝食を食べてからギルドへと向かう。すっかり日が落ちてから二人で話し合った結果、宿を取ってそこで今日は寝泊まりすることになったのだ。


「お世話になりましたっと、よーし……早速ギルドに向かおう!」


リゼリアは宿を出ると、振り返って軽く会釈をしてギルドに向かう。


記憶を失った彼女だが、どうせ何も分からない状態でこの世界に慣れないといけないなら、記憶の有無を関係ないと割り切ってしまっているのだ。


そして、自分のやりたい事を見つけた彼女は目的を果たすためにギルドへと足早に向かった。


………………


「おい、もう来てたのか、随分と早かったな」


「いやいや、ザビメロが遅かったんだって、あんま遅いからもうこんなに射撃の腕も上がっちゃったよ」


「もうお昼過ぎですし、ザビメロさんは確かに遅すぎますが……それはそれとしてリゼリアさんは早すぎです!早朝すぎて常務受付時間より前に来てたじゃないですか!あんな時間によく食堂もご飯出してくれましたね!?」


ギルド内にある訓練施設、そこもやはりハイテクの塊のような場所だった。ホログラムの標的や、どれだけ傷つけても時間と共に再生する材質で作られたサンドバッグと木人など、充実した訓練器具が設置されている。


そんな場所の射撃場にて、ハンドガンの射撃訓練を受けていたリゼリアの前にザビメロがやってくるが……この時すでに時間は昼過ぎ、早朝に来たリゼリアから指摘されるが、それはそれとして来るのが早すぎたリゼリアのことも萌丹歌がテンション高くツッコミをいれる。


「確かにちょっと嫌な顔はされたかも、でも早起きしちゃったんだから仕方ないでしょ」


「全く、少しは人の立場を考えておけ、相手や仲間が何を考えているかを把握するのもカードプレイヤーには必要なスキルだぞ」


反省の素ぶりも見せないリゼリアをザビメロが少し叱る、リゼリアはそれに反論こそしなかったが、表情は少し膨れていた。


「まあ午前中のうちに解明者登録は済ませておきましたし、あとはザビメロさん指導の下でカードプレイヤーの基礎訓練をすれば完了ですね」


「お、そうか、もうナイフの使い方も学んだんだな」


「まあね、正直最初に見たような怪物相手にこんな武器が効くのか疑問だけど」


「ナイフとハンドガンは全ての解明者に支給される補助装備ですからね、カードプレイヤーは今からお渡しする『タクティカルプレート』という道具を使って戦うのが基本となります。ですので、ここからはザビメロさんの話を聞いて使い方を理解してくださいね」


「と、言うわけだ、早速トライアルルームに行くぞ」


ザビメロの先導で一行はトライアルルームへと向かった。


………………


やってきたのは、薄暗い部屋に様々な機器が設置してある部屋だった。壁や床から生えている機器の先端が、真ん中にある天井からぶら下がった球体に集まっている姿は、まるで儀式の祭壇のようだ。


「暗いね、ここでなにすんの?」


「今から実際の戦闘に近い状況を再現する、そこでお前一人で出現するグロブスタを撃破しろ」


「グロブスタ?なにそれ」


「この世界はいろんな世界から物や生き物がやってくると言っただろ?それらのうち、今現在ギルドに属している友好種族のどれもが把握していない敵対的な生物や物体をグロブスタと呼んでいる。まあ簡単に言えばどこからやってきたのかわかっていない敵のことだ、ちなみに分かっている生物は原生生物と呼んでいる」


「我々ギルドはそんなグロブスタやダンジョン内の物体を解明者の皆様から買い取ってこの世界の解明のために役立てているんです!グロブスタの討伐、又は捕獲と運搬も解明者のお仕事なんですよ!」


「ふーん、つまり今から出てくるやつをぶっ倒せば、私は解明者の資格ありってことで好きに生きれるってわけね」


「まあ、ものすごく極端に言えばそうなるな」


「分かったよ、それじゃ始めようか」


「はい!ではこちらのタクティカルプレートをお受け取りください、長年クレームの多かった重量を改善した新型ですので、リゼリアさんのような筋力のない方でも楽に扱えますよ!」


萠丹歌がリゼリアに機械のコンテナを手渡す。


(サイズ的にはアイロン台くらいだけど、鉄の塊みたいで重そうだな……)と思いながらリゼリアが受け取るが、その箱は見た目より遥かに軽く、片手で持っても問題ない程だった為、リゼリアは思わず目を丸くした。


「タイミングが良かったな、皆これを長時間所持しなければいけないから体力強化をしているというのに、アピナに至っては毎日トレーニングを欠かさずやっているらしいしな」


「そんなこと言われても知らないよ、それより早く戦闘の基礎を教えてください、ザビメロ先生?」


「分かった、始めてくれ」


ザビメロが手を挙げて合図すると、薄暗い照明も消えて一時的に完全な闇が部屋を包む。


そして、蒼白い光が下から湧き出し、それによって開かれた視界の先にあるのは、先ほどまでの薄暗い施設ではなく、リゼリアが最初にいたあの赤暗い洞窟の中だった。


「うわぁ……なにこれ……」


「これは仮想空間だ、実物ではないがある程度現場を再現するために脳を騙して五感で感じるものも似せてある、あまり無茶はするなよ」


仮想空間、そんなもの知識に無いリゼリアにとっては本物にしか見えず、戸惑って慣れるまで硬直して立ちすくんでしまった。


「大丈夫ですよリゼリアさん、このレベルの仮想空間は慣れてない人の方が多いですし、ザビメロさんも似たような感じでしたから」


「おい萠丹歌、それは言わなくてもいいだろ……」


萠丹歌のフォローも兼ねたカミングアウトにザビメロが動揺して頬を掻く、しかしリゼリア本人はそんな二人の会話はあまり耳に入っていないようだった。


「…………ふぅ〜……大丈夫落ち着いたよ、そうだったね……ここじゃなんでもありなんだから、この程度で驚いてられないよ」


そう言って、リゼリアは自分の腰に差しているデッキケースからデッキを抜いて構えた。


「さあ準備満タン!いつでも掛かってこい!」

        本日のカード紹介コーナー

青 魔素標べの盲目兵 1

3/3 ユニット ヒューマン 兵士

【停滞】

あなたがこのターンにスキルをプレイしていたら、このターン魔素標べの盲目兵は【停滞】を失う。

フレーバー:彼は魔術師との戦いで眼を失ったが、代わりにもっと純粋な視野を得た。

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