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25.おっさん、かえるを帰す ※一部カエル視点

 フロッガーは元々おじさんの顔に似ている。むしろおじさんがフロッガーに近い気がする。


「カエルです」


 目の前にいるフロッガーもどこかその辺にいるおじさんそっくりだ。


「フロッガーって巷では会社では後輩に煙たがられて、家の中では厄介者になっているおじさんに似ているって言われてるんだ」


「カエルです……」


「たしかにくたびれて気持ち悪いですもんね」


「かえるです……」


「ああ、女性探索者の中でダントツで会いたくない魔物一位らしいよ。しかも、殿堂入りしてもまだ一位だからな」


 フロッガーは長い舌を使って、舐め回すように攻撃する。


 それが女性にとってさらに嫌われる。


 男にはあまり攻撃してこないため、こうやっておっさんである俺が引き寄せていたら問題ない。


「かえる……」


「私も視界に入れたくないぐらいです」


「帰る!」


「おっさんの俺もフロッガーにはなりたくないと思うぐらいだからな」


「早く倒して次に進みましょう」


 俺はフロッガーを倒そうと剣を抜いた頃には、目の前にいなくなっていた。


 周囲を警戒していたが、しばらくしてもフロッガーは出てこない。


「カエルは帰るってやつだな」


「有馬親父だね」


「うっ……」


 凛がガチャから出てきてから、年齢の差を気にするようになったが、直接言われると何か心に刺さるものがある。


「俺ももう少しオシャレでもしよう」


「落ち込んでないで、次に行きますよ」


 俺は凛に引っ張られながら次の階層を目指した。



 俺の何がいけなかったのだろうか。


 探索者として努力して、銅色探索者までランクを上げることができた。


 ここまできたらある程度魔物を狩っていたら、ランクも下がることがない。


 俺がこの階層で手に入れたアーティファクトはここで力を発揮する。


 いつものようにアーティファクト"カエルスーツ"のスキルを使って泥沼に潜む。


 このスキルを使えばフロッガーを瞬時に倒すことができる。


 ここを通る女性探索者を助けることができるため、俺にとってはカエル(・・・)スーツはヒーロー(・・・・)スーツだ。


「おっ、声が聞こえたぞ」


 誰かが悲鳴をあげているように感じた。


 泥沼にいるから聞き取れないが、ここは憧れのヒーローのようにカッコよく登場するほうが良いだろう。


 悩んだ挙句、フロッガーに間違えられるといけないと思いこの言葉を選んだ。


「カエルです!」


 それなのに顔を出したら誰も襲われていなかった。


 むしろ目の前にいたのは男だった。


 どうやら俺は出てくるタイミングを間違えたようだ。


 再び泥沼に戻ろうとしたら、後ろの女性に見覚えがあった。


 それは最近ハマって見ている"ガチャ配信"で、ガチャから出てきた女性だった。


 俺は嬉しくなって握手を求めようとしたが、今はカエルスーツを着ているため握手はできない。


 手がカエルのようになっているため、握ることができないのだ。


 握手をするにはカエルスーツを脱がないといけない。


 ただ、そうすると女性の目の前で裸にならないといけない。


 おじさんの裸を見ても、誰も喜ばないだろう。


 いや、ガチャ配信をしている男も俺とそんなに変わらない年齢のはずならいけるかもしれない。


 俺はそう思ったが、聞こえる言葉に驚いた。


「フロッガーって巷では会社では後輩に煙たがられて、家の中では厄介者になっているおじさんに似ているって言われてるんだ」


「カエルです……」


「たしかにくたびれて気持ち悪いですもんね」


「かえるです……」


 応援している奴らにこんなに貶されるとは思わなかった。


 俺はただ助けようと泥沼から出てきただけだ。


「ああ、女性探索者の中でダントツで会いたくない魔物一位らしいよ。しかも、殿堂入りしてもまだ一位だからな」


 あまりにも酷い言葉に俺の心は折れてしまった。


 ここにいたらきっと俺は病気になるだろう。


「かえる……」


「私も視界に入れたくないぐらいです」


「帰る!」


「おっさんの俺もフロッガーにはなりたくないと思うぐらいだからな」


「早く倒して次に進みましょう」


 泥沼にいても俺の悪口は止まらない。


 ただ、考えてみたら今まで俺のことをちゃんと言ってくれる人は誰もいなかった。


 この時代、人と関わるのを避けるやつらばかりだ。


 知らない俺にあそこまで言ってくれるのは、俺のことが好きなんだろうか。


「俺も一緒にお前らに付いて行く……あれっ!?」


 勢いよく泥沼から飛び出すが、そこにはもう誰もいなかった。

「大変申し訳ないんですが、ガチャを引くには★★★★★が必要で……」


「それじゃあもらえないわよ?」


「ならどうすれば?」


「下僕達、私のために★を課金しなさい?」


 凛はアーティファクトである鞭を振り回した。


「凛がどんどん変わっていく……お前達のせいだからな! レビューも書けよ」


 俺は配信を終えた。

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