#46 : 言いたい事
「こんにちは。小畠さんでしょうか?」
「そ、そうですがどちら様でしたっけ?」
「塚越、塚越はるです。乙葉…森の」
「ああ!森さんの!どうされました?」
「あの、女の子の描写が雑すぎると思っておりまして」
「見たままを伝えてるつもりなんだけど…」
「江口さんの烏羽色とかマニアックすぎです!」
「良い例えだと思うけど…」
「烏と読めた人が何人いたことやら!」
「同じ鳥の羽だから良いかと」
「それと日南さんの”ブリーチにショートヘア”表記は神経を疑います!」
「何でっ!?」
「日南さんは”ダブル・カラー”の『ミルクティー・ベージュ』で、ショートヘアではなく『前下がりショート・ボブ』です!」
「ショートはショートじゃないですか!」
「前下がりボブは前髪を長めにして、後頭部に丸みを持たせるようにカットします。小説の表記のままだったら、読者のイメージの日南さんは頭髪3センチのパツキンパンク女子と思われちゃいますよ!」
「元気すぎる!」
「ボブの丸みを維持しつつ前髪をシースルーバングで軽めにし、ランダムに毛先の動きをつけて”抜け感”を出している辺り、20代前半とは思えない良いセンスとテクニックです」
「夜の仕事していたからオシャレなのかな」
「逆に麻生さんに関しては情報少なすぎです!」
「ちょ、照れや恥ずかしさもあってね…」
「そうやってご自分の好みの部分しか見ないで後から文句を言うクセに!」
「ドキィッ!」
「顔のパーツや仕草、言葉遣いだけで舞い上がって独りよがりすぎです!」
「…仰る通りかもです」
「麻生さんは黒髪ではなくブルー・アッシュで、青味がかったツヤに透明感あるアッシュが儚さを強調してます」
「黒にしか見えないけど!?」
「前髪を眉の辺りで揃え、ドル毛で若さを前面に出しています。小顔効果もあり童顔を最大限に生かした”さらに幼く見える”カットです」
「若づくりってこと?」
「そこまでは申しておりません…ストレートのセンター・パートですので、シュシュやリボン等でのアレンジや、コテで縦巻きしたりして楽しまれていますよ」
「何でアナタが俺より知っているんだ!?」
「あと乙葉!なんか海苔みたいに表現されてて可愛くないの!」
「青だかグレーだか良くわからなくて」
「ブルー・グレージュです!ブルー・グレー・ベージュの3色で麻生さんより深みのある青です。前髪無しのセミロングのストレート、縮毛かけてるので超サラサラです!」
「天パなの?」
「元々ストレートです!毛量が多いのと太くてボリュームが出るので、縮毛かけてサラツヤにしてスッキリさせてます。お家にいる時のツーサイド・アップは私だけの眼福なのでお見せしませんけど」
「乙葉、ツイン・テールになります?」
「耳の上辺りで結ぶ事をサイド・アップと言います。ツインテとは別なのです!」
「違いがわからん!」
「私に関しては番外で書かれてたので良いですが、ローサイドの三つ編みは楽だからとカットモデルのために伸ばしてます。本当はボブくらいの長さが好きです」
「アッシュ・ピンクってピンク色じゃ無いの…?」
「灰色がかった落ち着きのあるピンクのトーンです。男性の頭の中だとピンクは一色しか無いし、言葉で色味を表現出来ないし、イメージの具現化も出来ない!」
「ひどい言われ様だなぁ!」
「ベビー・ピンクとローズ・ピンクの違いがお分かりですか?もし彼女さんに”どっちが似合うかな?”と聞かれてちゃんと色の説明をし、望んでいる正解を導けますか!?」
「…細かい所に目を向ける様に尽力します」
「宜しくお願い致します。それでは私はこれで」
「って、コレで一話分使ったのかよ!?」