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番外 : デセールのその後は

 食後のティータイム。


「乙葉、誕生日のお花なにか知ってる?」

「あまり気にした事無いな…」

「えっーと、11月の27日と…あっ、デンファレだって!」

「デンファレ?トランペットみたいなの?」

「デンドロビウム・ファレノプシス、でデンファレ、蘭の仲間みたいね」

「ファレノプシスってなんか催眠術みたい」

「蘭のガクジュツメイみたいよ?」

「花言葉はなに?」

「…わがままな美人。当たってる!」

「ちょっ、失礼ね!他には無いの?」

「”お似合いの二人”、”魅惑”、”有能”、良い事も書いてあるじゃん!」

「お似合いの二人、は良いとして他のはちょっと」

「乙葉は気付いてないだけで”魅惑”してる事あるからね」

「はる以外にそんな事しないわ」

「その”有能”な所もアヤシクて良い…」

「その顔はよしなさいな。はるの誕生花は?」


「私はー、スミレ。漢字で書きにくいヤツ!」

「菫?書きにくくは無いわ?」

「漢字苦手なのー!読めるけど書けない!」

「名前がひらがなで良かったわね」

「名前はmamieがつけてくれたのー!」

「マミー?お母さん?」

「フランス語でおばあちゃんだよ」

「ああ、Omaね。菫の花言葉は何?」

「んーと、”謙虚”、”誠実”、”小さな幸せ”」

「メルヘンな言葉がたくさんね」

「はるちゃんにぴったりなのです!」

「そこは認めるわ。はるのためのお花ね」


「理想の女性に求められる3つに例えられてるのだよ!美の薔薇、威厳の百合、謙虚なスミレ!百合は乙葉の事ね!」

「私が百合?はるが菫、薔薇は…」

「前に言ってた派遣さんが薔薇っぽい」

「それだ!江口さん!若いのに妖艶で自信家、なんでもそつなくこなして何よりも美人…」

「乙葉が言うなら本当に素敵なヒトなんだね」

「私は器用じゃ無い分ひたすらやるだけだけど」

「はるちゃんはそのヒト知らないからわからないけど、乙葉は威厳あり過ぎて男子が引くタイプだよ〜」

「引かれて光栄よ。江口さんは…フェロモン?で跪かせるイメージ」

「それって”女王様”ってヤツ?」

「そうね、しかも自分で何もしなくても、望んでいる事を相手が勝手にやってくれるタイプよ」

「人生勝ち組ってヤツじゃ〜ん!」


 2階のバルコニーを改装し四人までの席に二人だけで会話に花を咲かす。ティーポットが空になった頃、何も言わずにマスターがおかわりを淹れてくれる。アールグレイの爽やかな香りが暖色系の照明に溶け込み、乙葉とはるも居心地の良さにソファに溶け込んでしまう。

 料理はヌーベルキュイジーヌで勝負しているが、内装は多国籍でなかなか面白い。断熱材が施された床にロマを彷彿させる柄のカーペット、ローソファにコタツスタイルのテーブル、オイルヒーター完備の半バルコニーは、濁った東京の空を眺めながらおしゃべりするには最高の場所であった。


 “わがままな美人”とは褒められているやら、なんなのやら。

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