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#17 : 休む事も仕事。

 昨日はなんとか終電で帰った。少しお残しがあったがなんとかなるだろう。いや、なる様にしかならないのか。


 昨日から本部長(大宮)の言葉が頭の中をリフレインする。

 ”任せておいて大丈夫か?”

 ”課長職如きで”


 俺だって四年も課長で甘んじているワケじゃあ無い。次長・部長・本部長を目指して精進してきた。その度に俺が上げた功績を田口が掻っ攫(かっさら)う。俺の評価はいつも『及第点』止まりで終了だ。俺の手柄は”田口がいたから達成出来た”と、田口の功績にすり替わる。

 どんなに主張しようとも、否、すればするほど俺への評価は下がる一方だった。


 そんな事が三年ほど続いた時、俺は戦うのを止めた。自分がすり減るだけだから。どんなに会社に尽くしても認められなければ何もしていない事と同意なのだ。田口と大宮のタッグは、俺を疲弊させるには十分過ぎる力を持っていた。

 気がつけば俺も四十手前。こんなハズじゃなかっただろ?俺が描いていた『大人の世界』ってヤツは…。


 そんな事を考えていたら業務携帯(ぎょうたん)が鳴った。大井さんだ。


「おはようございます。小畠でございます」

「いつも大変お世話になっております。大井でございます」

 森に言われてウラ取りをお願いしておいて”もう済みました”とは行かない。


「朝のお忙しい時間に申し訳ございません。先日、ご依頼頂いておりました麻生の件でご連絡差し上げました。只今お時間よろしいでしょうか」

「こちらこそお忙しい中、急なお願いで申し訳ございませんでした。どうぞ、宜しくお願い致します」

「お気遣いありがとうございます。麻生と()()、連絡がつきまして確認したのですが特に目立った事はなく、パソコン作業が苦手なので森さんにご迷惑をおかけしている事が心苦しいとの事でした。私も麻生から聞いた事なのですが、森さんが退職されたとか…」

「はい。つい昨日ですが、退職いたしました」

「麻生に問題があったのではと…」

「森と話しをし、本人の限界を超えて業務を続けており退職を考えておりました。そんな折、麻生さんのバディの任命を請けタイミングが被ってしまっただけのことなのでご心配なさらないでください。逆にお気を遣わせてしまい申し訳ございませんでした」

「そ、そうだったのですね…」

「私としても余計な詮索をお願いしてしまい、重ねて申し訳ございませんでした」

「とんでもないことです。今後も何かございましたらご連絡頂ければ幸いです」

 大井さんにも気を遣わせてしまった。申し訳無さが込み上げてくる。


 電話を切った後、大井さんからも森の私的な感情・行動に言及する内容が無かった事から、麻生は森の事を大井さんに話していない…?

 どちらかと言うと付き合いの長い森の話しの方が信憑性は高い。築いてきた信頼の数は麻生の比では無い。麻生はその逆で俺よりかは大井さん(担当営業)の方に信頼を置くだろう。大井さんに話しをしていないとなると、麻生は森の気持ちを汲んでいる…?

 森は”勘の良い女性(ひと)”と麻生を客観的に見ていた。和田も麻生を自分視点とは言え俺に説明出来る位のコミュニケーションを取っていた。俺だけが気付けないのか?麻生の事を知らないのは俺だけなのか?


 麻生の面接を俺が担当したってだけで、何でここまで責任追及される事に巻き込まれるのか。

 田口が厄介ごとを俺に回すとは言えここまでヘビーな事は無かった。いくらなんでも課の問題は課内で対応・処理していた。

 森が一課の出だとは言え所属は二課だ。俺の出番じゃあ無い。それこそ本部長の大宮に”逸脱している”と刺されるネタになるじゃないか。

 田口はそれを狙ってやっている?まさか、そこまで見通して無いだろうし底意地も悪くない、だろう。多分。


 俺の知らない間に俺の歯車が回り出している。望んでもいないのに。

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