#128 : ラウンド・ワン!
「いらっしゃいませー、ご予約は?」
「十九時にお願いしたオバタです」
「お待ちしてましたー、奥へどうぞー」
そうそう。このコだったな。やる気が無いと言うよりやる事が多くて参っているって感じだ。ドリンク作るの手伝ってあげたくなる。封印されし右手が疼くゼ…!
「課長、渋い所ご存知ですな!」
ヤマさんが嬉しそうになっている。このメンバーで一番この店が似合うな。カウンターで瓶ビール。
「おう、発起人!遅いぞ!」
「お待たせして申し訳ございません」
大宮が先に来ていた!十分前だぞ⁉︎待ち切れなかったのかな?可愛いところあるじゃ無いか。
奥の座敷は小上がりの右手に長テーブルを二つ並べた長方形の掘り炬燵式だ。大宮が一番奥の上座、お誕生日席に陣取る。大宮から見て右手、壁を背にして田口、その隣に長野。布陣は完璧だな。この分だと俺は大宮の左だな。二課が先に来てたのは壁側を陣取るためか!
仕方無しに大宮の左隣に腰をかける。俺の左はヤマさんだ。田口と長野が奥の壁側に座っているので、手前側は必然と一課が並ぶ。
二課側は奥から田口、長野、吉岡、元泉、仲村、和田、横山、麻生、神谷、瑠海。
瑠海が末席は似合わないが、馴れ合いを避けるために端にしたのだろう。
一課側は俺、ヤマさん、クニ、リン、ムロ、井出、柏木、大沢、四ツ谷。
大沢も瑠海に似た思いだろうが、一番下の四ツ谷が末席を譲らない。二課は派遣さん同士で並ぶかと思ったら間に神谷が挟まれてる。あすこだけ空気感が違う…。
席次表
「よし、全員揃ったな。飲み物も揃ってるか?」
大宮が音頭を取ってくれるらしい。こりゃ任せた方が楽だ。
「では改めて。今夜は軽めの前祝いだ。来月に本番があるのでそちらも楽しみにしててくれ。今年も皆よく頑張ってくれた。部を代表して心から感謝する。ありがとう。今年は余裕を持って着地となったが、コレに慢心せず次年度も達成、大きく飛躍して行こう!お疲れ!乾杯!」
『カンパーイ!』
堅苦しい挨拶もそこそこに酒宴が始まる。大宮と田口と飲むなんて、課長に就任して以来だから四年ぶりだ!まずは大宮に挨拶しに行く。
「本部長、今年もありがとうございました」
「なんだよ改まって。それに辞めるみたいな言い方はよせよ」
珍しく大宮が笑っている。皆んなの手前なのか、達成が嬉しいのか。
「田口さん、今年もお疲れ様でした」
「ああ。お疲れ。今年は人の入れ替えが多かった。面倒かけたな」
ウーロン茶の田口がかしこまっている!大宮とタッグを組んでイヤと言うほど潰しに来てたのに!
「長野もお疲れ。色々迷惑かけたね」
「いえ。森さんの穴埋めもできたと思ったらまた変わりましたけど。後任は使えるので良しとします」
ちぇっ。相変わらず可愛く無いヤツだ!
二課のメンバーそれぞれに挨拶をして行く。グラスを合わせ過ぎて割れないか心配になる。
「和田君!今年もお疲れ!」
「師匠!あんな猥雑な本買わせるのはもうごめんです!」
皆んなの前で何てこと言いやがる!後でシメたるかんな!麻生と瑠海がチラッと見たような気がする…。
Rika Aso
「大変お世話になりました。このような席にもご招待頂き、重ねてお礼を申し上げます」
「こちらこそ大変お世話になりました。新天地でのご活躍を祈念しております」
嗜む程度、と言っていたが子供さんのことがあるのかウーロン茶の麻生と乾杯する。ジャ、ジャズバーのこと本気にして良いのかな…?後でこっそり聞いちゃおうかな。
Rumi Eguchi
「私にもビールをいただけますでしょうか?」
麻生との空気を一刀両断する瑠海の呼びかけにそそくさと向かう。
「小畠課長自ら注いで頂けるなんて光栄ですわ」
「とんでも無い事です。今年もお世話になりました」
「あら、二課の私がどんなお世話をしました?」
クッ!信じてはいるがギリギリの線で瑠海が攻めてくる!負けるな!負けちゃダメだ!
Miki Yotsuya
「ビールのお代わりお待ちいたしました!」
甲斐甲斐しく動いていた四ツ谷がビールで瑠海と俺を遮る。瑠海は四ツ谷との関係を見抜いたけど、四ツ谷は俺と瑠海の関係は気づいているのか?
末恐ろしいことを払拭せんと一課のメンバーと乾杯する。くわばらくわばら。
Picrewの「シルエットメーカー」マサキ様のを利用させて頂きました。ありがとうございます。