#127 : バナナは課長に入りますか?
「えーっと山岸さんは当日の引率お願いします。一課が全員揃ったら店に向かってください。」
「引率は年寄りと相場が決まってますな!」
「国枝は簡単で良いから出欠席と領収リスト作成をお願い」
「二課の参加メンバーがわかりかねます…」
「林原は行きも帰りも店でもナンパしない!」
「何で俺だけナンパとか関係ない事でー⁉︎」
「小室は身分証を持ち歩くこと」
「確かに幼く見えますが私も三十なんでスけど」
「大沢さんは途中で消えないように」
「…これ出席しないと査定響きます?」
「井出さんは帰宅時間に注意してね」
「実家に預けるんで大丈夫デース!」
「柏木さんは会計係をお願いします」
「で、電卓持ってっても良いですか?」
「四ツ谷さんは二課と本部長と交流を持ち、見識を深めること」
「か、かしこまりた!」
遠足の説明をする先生の気分だ。今思うと教師という仕事はとても大変だよな。知識を覚えさせればそれで終わりでない。子供の人格形成にも大きな影響を与える。
「ヤマさんが一番頼もしいからね。あ、パワハラはダメですよ」
「合点承知の助のあたりき車力の車引きっ!」
「二課のリストは和田君から貰っておきます」
「早急に情報共有をお願いします」
「リンは見境ないから周りも注意してね」
「ゾーンが広いと言ってくれ〜!」
「俺も三十歳の時に身分証提示を求められたから大丈夫!」
「課長と私では顔の系統が違い過ぎます」
「査定云々よりチームでお祝いしようよ?」
「jawohl 、Seine Majestät」
「子供を預けてても当日中に帰るように!」
「何でバレたのっ⁉︎旦那には黙ってて!」
「そろばんでも割り勘アプリでも良いよ?」
「電卓の方が得意なので持っていきます」
「二課自体は怖くないから緊張しないで」
「は、はい!仲良くさせて頂きます!」
何だここは。保育園か。それと大沢は日本語で喋れ!主要メンバーへ伝わったし、和田にリスト貰いに行くかな。
「お疲れさん。進捗は如何かな?」
「もうっ!てんてこ舞いですよ!」
「踊れるだけ余裕があるじゃないか!」
「リスト渡しませんよっ⁉︎」
色々と押し付けたから珍しくプリプリしてる。二課はえーっと、全員参加だな。アレ?この人どちら様?
「神谷さんですよ!」
ああ、前々年度の新卒か。カミヤと呼んでイヤな顔されたっけかな。あの子も愛想が無いというか、無駄を嫌うと言うか排他的なんだよなぁ。二課に異動になったのか。組織図を見ない悪いクセだ。一人抜けてたけど人数は合ったな。冷や汗かいたぜ。
これで下準備はおけだ。後は模様し物の買い出しだが、連れて行く相手を間違えるとネタバレしてしまう。
「本当突然過ぎ!撮影が終わった後だから良かったものの!けーいーかーくーせー!」
「ごめんごめん。社内の人に見つかったらサプライズじゃなくなるじゃん?」
「あー、撮影終わったらお腹空いたな〜」
「わかったわかった!何が鬼平好きだ!肉ばっか食べるじゃ無いか!」
「このボディを維持するためだと思って♪」
沙埜ちゃんもなお君も仕事だし、瑠海と四ツ谷は当事者だからバレてしまう。和田はコキ使い過ぎてヘソ曲げてるからコレ以上頼んだら怒られそうだ。
こういう時、仕事にしがらみのない関係性は大切だ。無論、優は常識が無いので却下。どうせ買い物終わったらメシ喰ってましろの店で飲むんだ。腹の虫のクレーム・コーラスは放置する。
今回は『優秀営業賞』、最も売上た営業に贈る賞。『特別賞』、売上以外にも社に貢献した人物に贈る。『ラウンダー賞』、本当は外注のラウンダーさんも集めて全員で行うのだが、内々の余興みたいなモンだから良しとする。
『課長賞』、一課、二課の課長から個人に贈る。根拠は無い。そして控えおろう、『本部長賞』にござい!こちらは本部長のポケットマネーが入っている。指三本分との噂だ。俺ですら貰ったことがない。他はコンビニで使えるプリペイドカードをば。アレって、まだ使えるんだよな…。タバコは買えないみたいだけど。
ましろとウチの最寄駅の量販店で買い物をする。会社の商品じゃなかったらデ、デートみたいだな。
最優秀賞は予算一万円、特別賞は五千円、ラウンダー賞は今回はオマケなので五千円分。課長賞も五千円だ。このご時世でこの金額、たいした物は送れ無いが、その分気持ちを込めて選ばさせて貰う。あ、支払いは法人カードだからポイントつかないのよ。くすん。もし自分のカードにポイントつけたら横領だからな。
一通り買い集めてそのまま会社まで郵送してもらうか。持って帰るのも持ち出すのも面倒だ。費用対効果で送る方がはるかに良い。
「ありがとう!助かるよ…!」
「お肉のためなら♪ところで、コレって本当に送るの…?」
「ん?マッサージ機?デスクワークで肩凝り酷いって言ってたからさ」
「ずっとパソコンしてる人?」
「事務だからねー。24歳の女の子だよ」
「却下!」
「へ?」
「コレはダメ!」
「なんでよ?ベストじゃないか!」
「ダメなものはダメ!コッチに変更!」
ましろに押されて目元が暖かくなるアイ・マッサージャーに変更されてしまった。片手で持てて振動も強弱つけられ、ヘッド部分の丸みが色んなとこにフィットして良さそうなのにな。




