#126 : 有言実行
和田と四ツ谷に頼んでおいた声かけは終わったようだ。集金も2、3人を除いて集まったようだ。昨日の今日だ、大丈夫だろう。本部長室へ死出の旅に向かうか。気付にウイスキーでも飲みたいくらいだ。
「おう、昨日の件か?金なら貸さんぞ?」
「無心ではありませんよ。急なお誘いで申し訳ないのですが、今週末のご予定はいかがでしょうか?」
「なんだ、俺も呼んでくれるのか⁉︎」
「来月は新しいのも来ますし、今年は送迎も無かったですし、今いるメンバーを労いたくてでして」
「お前はいつも下に甘いな。いちいち出張ってケツを拭いてやる。去年俺が森の退職の時に言ったことを忘れるなよ?」
「はい。肝に銘じております」
「下を使うのも上の仕事。いつまでも甘やかさずにドンドン仕事を振るんだ。そして来季も達成だ。良いな?」
「畏まりましたっ!」
「よし!詳細はメールだと見逃すから予定表に反映しておいてくれ」
「ありがとうございます!後ほど反映させておきます!」
なんだ?このトントン拍子は?優しい世界にでも迷い込んだか?
何はともあれ2トップを押さえたぞ!俺も課長だから多めに出さないとだけど、大宮の方がたくさん出してくれるから予約の料理をランクアップさせよう!
えーと、一課からは俺を含めて九人、二課は麻生を入れて十人。麻生はお疲れ様なので頭数にいれていない。ここに大宮が来てマイナス麻生=二十人!ピッタリんこ〜!昨日のましろの言葉を思い出すが、私事はテキトーでも後から何とかすりゃ良いんだよ。他人に迷惑かけなければ。
「あ、お忙しいところ申し訳ありません。先日電話で予約したオバタと申しますけど…、はい、週末の二十人で。間に合えば、で良いのですが、料理のコースを一つ上げられますでしょうか?ええ、大丈夫ですか!では、改めて一つ上のでお願いします」
どうだ。この速さ。もうキャンセルできないぞ。キャン料もしっかりいただくからな。
時間は十八時になり営業が帰社し始め、集まりだしたところで皆んなを社内の会議室へと連行する。足取りが重そうだ。達成したとは言えこれから死刑宣告されるみたいな顔つきになっている。死にゃあしないよ!
「あ、さて。お疲れのところお時間を頂きありがとう。手短に。お陰様を持ちまして、今期も一課、二課共に達成しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!」
深々と頭を下げて心からの感謝を伝える。皆んなから拍手で返事をされる。課長になってから三連続の達成。コレは染みるなあ。
「え、ご存知のこととは思いますが、ここ最近まともな飲み会やってないのでささやかながら開催いたします。残念ながら全額は経費で切れないので少し負担してもらったけど、満足はさせるのでたらふく飲んで食べて勝利を祝おう!」
「さっすがかちょー!」
「煽てても何も出ませんよってば!あ、あとこの場のメンバーにしか声掛けしてないから、他言無用で願います。スグ歓迎会とかあるから他の皆んなとはちょっと我慢してねー」
俺の部下たちは俺に似てか調子が良いメンバーが揃っている。
営業からはリーダーの山岸。年上の部下はお互いやり辛いが、山さんは気にせず上司と部下の立場をキッチリ弁えてくれる。一課のムードメーカーでもある。
歳の近い国枝はムッツリさん。仕事の段取りは俺が目を見張る程だ。チラッとスマホのロック画面を見てしまったことがあるが、公序良俗に反しないのか…?
林原は二十代後半のチャラいヤツ。良くサボり期限を守らない不届き者。そして瑠海を狙っている。減給処分にしてやりたいが、一課がピンチの時に必ず大口取って皆んなを助けるんだよなー!
小室は…キッチリこなすけど無口?シャイ?で私生活は良く知らない。線が細いのでスーツもシャツもブカブカで、入学したての中学生のようだ。
女性陣の井出は既婚者で子供は実家に預けている。本来なら二課が望ましいのだろうけど、本人たっての希望で一課にいる。わかるぞ。その気持ち。
大沢も女性だが、森とも違うクールと言うか排他的と言うか…。最低限の発言しかしないため、意図を間違えて捉えられインシデントになったことがあった。でも治らない。外部研修に出そうかな。
事務は一人で女性の柏木さん。去年の新卒だ。社内で俺の顔色を見ていつも怪訝な顔をしている人だ。締切過ぎた領収証も何とか処理してくれるスゴ腕事務さんなのだ!
社内ラウンダーは四ツ谷のみ。その他のラウンダーは外部委託している。費用対効果で見ると自社採用は採算が取れない。四ツ谷もこのままでいけば新卒のOJTが終われば営業になるだろう。
二課はまず田口。美味いメシにしたんだから、飲めない分食べて元を取ってくれ。
ほんでリーダーの長野。インテリなのにアクティブで地下アイドルにも精通している帰国子女。ヤローだけどな。酒飲めたっけ?
一課には置いていないが、サブリーダーと言う職責に吉岡がいる。確か一つ年上だったような?昼行燈と言った感じの人だが、田口の先回りをして仕事や問題定義を積極的に行うから一目置かれている。
麻生の後釜の仲村。まだ良く知らないが、翳のある笑顔が気になる。見透かされているような、品定めされているような…も、もしかしてベーコンレタスバーガーな人なの⁉︎
毎度お馴染み童貞の和田。今回の功労者だ。大宮の言う通り使ってやったぜ!あ、えっちじゃないけどそれに等しい本を買ってくれたお礼しなきゃ。
二課の女性は森しかいなかったが、瑠海が来てから営業に女性を積極的に取ることになった。クソ。
次いで麻生が入社し、一気に二課は天国となった。
事務の横山”お姉さん”の前で言ったら二課で使った経費を一課につけられそうだからやめておこう。
店も人も準備おけ。果報は寝て待てなんて言うが、歳末はやる事多くて忙しいのよ!仕事しよ。