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#114 : 逃げ切れない高いカベ

 月曜日は誰にも等しくやってくる。


 もう週が明けてしまった。結局、瑠海にお返しを買う事はできず、駅チカのレストランで食事をして帰ってきた。瑠海の好みがわからないので、イタリア料理なら良いだろうと…トラット、なんだっけ?


『この辺だとTrattoria(トラットリア)しかないわ』

 そうそう、リアだ。瑠海の言葉を思い出す。

『このお店は南部がメインね。ナポリの郷土料理よ』

 デート中の会話を思い出せる、ちゃんと瑠海に向き合えた結果だ。ましろに感謝しないとな。


 瑠海のことを少しは知れたかな。焦らなくて良い。ゆっくり知って行けば良いんだ。


…言わなきゃわからないのかしら?


 不意打ちでキスするなんて…。タダでさえ目立つのに、目立つコトしちゃってもう。思い出したら顔が赤くなってきた。俺ってこんなウブだったっけか?


 週明けは朝礼から始まるが、繁忙期は飛ばしている。営業もそんなヒマがあるなら取引先へ行きたいのが本音だ。とは言え朝礼はヒマだからやっているワケではなく、一課として重要な伝達や意識の擦り合わせも兼ねている。


 しかしスマホが普及してから伝達はメールで、意識のすり合わせはグループチャットで代用できてしまう。時代の流れなのだろうか。

 ほんの十年くらい前まで俺はバキバキのアナログ人間だった。スマホにしたくなくてずっとパカパカケータイを探したモンだ。


 今の会社に就職してからデジタル化が一気に押し寄せた。ネットも引いたし、スマホに買い換えた。そうしなければ仕事にならなかったから。

 今となってはソレのお陰でメシが食えるし、寝床も確保できて、毎日酒が飲める環境にいる。あの頃と比べるとそれだけで天国だ。ゴールデン・ボーイに感謝を捧げる。


 三月も後半、数字との戦いになってくる。午後に週次会議があるのでそれまでに報告書に目を通す。一課のツラい所はコレだ。月曜に会議を行うのに、月曜に正確な数字の落とし込みがない状態で報告書を作り、不確定要素のまま会議へ挑まないとならない。しかも土日は休みだというのに。

 週末までの数字は一日遅れて火曜に上がってくる。今度はソレと報告書を照らし合わせて実測値に当て嵌める。

 こう言うこともあって麻生を二課にした。まあもうすぐサヨナラしてしまうのに。


 数字の取りまとめは部下にも頼むが、残念ながら俺がやった方が断然速い。ポカミスで数字が間違っていた時など、田口にこれでもかとツッコミを喰らう。そんな時に俺の気持ちの捌け口が見当たらなくなってしまう。営業本部全体で見ても俺がやる方が効率的だし、一課を最大限動かすことができる。


 何度も投げ出したくなり、嫌気がさし、目を背けて逃げ出しても定例会と言うカベが迫ってくる。営業として数字は大事だが、同じ社内で間違いをツメても仕方ないのではないか?それよりも上がった要因、下がった原因を確認して対策や水平展開した方が部として良い気がする。定例会は田口の気分次第で良くも悪くもなる。


 メールを整理しながら報告書を確認する。報告書は毎週毎にフォルダを作りまとめて保存してある。取り扱うファイル数も膨大になる。整理整頓はパソコンでも健在だ。デスクトップにはフォルダが五つしか置いてない。コレで事が足りる。


 ふむ。進捗は達成ペースだな。着地は目標を超えそうだ。よしよし。皆んなありがとうな!


『♫〜♫〜♩』

 気が緩んだ俺を引き締める電話が鳴った。大井さんかな?

 画面に表示された名前を見て背筋が伸びる。近藤さんだ…!

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