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#99 : 世界観と個人観とときめき

「こんにちは!」

 約束の十分前なのにましろが先に来ていた。家近いのかな?


「おっす。早いね?」

「沿線沿いに住んでるので」

 近いらしいな。早起きさせちゃったかな。日差しが強くなり春が近づいているのを感じる。お昼寝したくなる。


「っしゃい!」

 大将は相変わらず威勢が良い。ましろも飲み方を知っているようなので蕎麦前と行きますか。

「俺はビール。ましろは?」

「私も同じのを」

 ましろはビール党のようだ。この後仕事なのに大丈夫か?


「かんぱーい!」

 昼からカウンターで良い気なもんだ。オマケに可愛いいコを連れてやがる。反対側の競馬新聞を持っているオジ様の視線がアツイ。次のレース、当たると良いデスネ。


「そう言えばましろって幾つなの?」

 なんと無いしに聞いてみる。話題を提供できる人ってスゴいよな。

「24歳です。今年で25」

 板わさのわさびが辛かったのか涙目で答える。無理するなよ。


「マジか。俺が今年40だから、15の時に産んでたらパパの年だよ」

「えっ!?見えない…!」

 涙を溜めた目で驚きを伝えてくる。溢れちゃうぞ。

「多く見積もっても30いってるかいってないかくらいだと思ってました!」

「自慢じゃ無いが良く言われる」

 苦笑いしながらおかわりのビールを頼む。


「あのお店は長いの?」

「芸大出た後にモデルしながらアソコでバイトしてます」

「モデルって、グラビアとか?」

「個人撮影です。たまにコスしたりとかして楽しいんです!カズさんも撮ってみます?」

「俺はカメラ音痴だから遠慮しておくよ」

「高級な機材でなくても、インスタントカメラとかも味があって良いですよ!」


 そう言えば観光地でインスタントカメラを久しぶりに見てテンション上がったな。あの小さなファインダーで覗いて撮る。そんで手巻きでフィルムをギチギチと送る。現在のようにデジタルでないからその場で確認が出来ない。現像するまでの時間がお楽しみだったな。


「撮影ったってスタジオ持って無いし」

「スタジオで撮る時もありますが、殆どが指定された場所で撮影が多いですね」

「知らない所とか一人で危なくないの?」

「たまに、デス」

 はにかみながら伝えるが、そんなに優しいモンじゃなさそうだ。彼氏でも何でも無いのにこんな事を聞いている。オッさんだな。


 だし巻き卵が湯気を立てている。ここのだし巻き卵のダシは蕎麦と同じのを使ってカツオだ。蕎麦焼酎にしようか。今日は蕎麦茶で割ることにする。ましろもイケるようだ。類友なのか俺の周りは酒強いのばかりだな。


「モデルになりたいの?」

「大学時代からなんとなく続けてきたんですけど、将来とか何も考えてなくて」

「俺も昔はそんなモンだったよ。適当に働いてブラブラして。それで良いと思ってたし、いつか結婚もするんだろうなって」

「今はされてないのですか?」

「してたらましろのお店に行かないよ」

「してても皆さんいらっしゃいますよ!」

 優とかも別扱いしてたよな。そんなモンなのかな?俺が考え過ぎなのか?


 俺は今まで個人的に行ったことは無かったし、彼女がいる時はもちろん行かないし近づかない。付き合いとかでどうしてもな時は事前に報告してから行く。そんな事を伝えたらましろに笑われた。


「今時そんなカタイ人いませんよ!」

「ココにいるんだけどね…。そういや何で声かけてきたの?」

「お昼から楽しそうだな、って思って」

 そんなに楽しそうだったかね。まだ麻生ショックの前で、瑠海と四ツ谷とも仲直りできたってのもあったのかな。ほんで優にもアヤシイけど春が来た。めでてーじゃねーかって気分だったな。


「このままずっと同じこと続けるワケにもいかないし、この先どうしようって悩んでるんです」

「社会に出てみてどうだったの?」

「大人ってつまらないな、って」

「仕事が?人生が?」

「どっちもです」

 なんだか上手く行ってない様だな。流石に女子なましろは蕎麦が入らなくなりそうなのでツマミをセーブする。俺もたくさん食べる方では無いからちょうど良い。


「今度、私のこと撮って下さいよ!」

「ええっ?やったことないからなぁ」

「カズさんが見てる世界の私を見てみたい!」

 俺が見てる世界のましろ…。今日こうやって話すまで年齢も何やってるのかも知らなかった。そりゃそうだ。そんな話をしていない。


 じゃあ麻生は?ましろよりも会う機会も話す機会もあったクセに何一つ知らない。瑠海は?向こうから話してくれたことしか知らないぞ?四ツ谷は?沙埜ちゃんは?なお君は?


 俺はちゃんと見ているのか?人のことを、興味を持って。

 今は…ましろに興味を持って接すれば、ましろも楽しいのかな?


 昔こんなゲームやってたな。勉強や部活、容姿といったパラメータを上げ、数いる美少女達から卒業時に伝説の木の下で告白を受けるヤツ。アレのおかげで彼女作れたんだよな。それでスゴいハマってしまい、先輩の呼び出しをシカトしてまでゲームやってたのバレて後からシメられたな。


 俺の恋愛観はゲームの選択肢と同程度しか持ち合わせてなかった。

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