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異世界行旅人 ~猫の守護霊と行く異世界セカンドライフ~  作者: ぱつきんすきー
<第1章> はじまり編
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<第2話> ひとまず、とんずら! そして、



ここはエネミア帝国王都近郊の林の中。


先程姿をくらました渡里が一人佇んでいた。


これは高校生組との最後の会話の直前、タマにお願いした”仕込み”の結果だった。


渡里はタマに


”人目に付かず外敵に襲われる可能性か低い最寄りの場所に【地図上転移】する準備をお願い。場所はタマにお任せで。”


とお願いしていたのだ。


「タマ、ありがとね。ここはどの辺?」


『ここは王都の近くの林の中ニャン。』

『さっきまでいた”英雄神殿”から直線で8.2km離れたところニャン。』


「ありがとー、凄いねー、何でもできるんだねー。」


『もっと褒めていいニャンよ。』


タマのあごの下を指先でコショコショしつつ、お礼と賛辞を贈る。


(それにしても【地図上転移】は1日1回か、ジックリ考えて使わないとな。)


(この世界の危険度とかも分からないから、むやみやたらに歩き回れないしな。)


(とりあえずここはタマが安全と判断したところのようなので、明日までここにいればいいかな?)


『その方がいいニャン。』


「やっぱり! ってあれ? 今タマと念話した訳じゃないのに……。もしかして思ってたこと全てタマに筒抜け?」


『そうニャン。タマは何でも知ってるニャン。』


「それはちょっと違う気がするけど……。まあいいや。お返事ありがと。」


お礼とばかりに今度はタマのおでこを指先でコショコショする。


「そういえば、タマって触れるけど実体があるの? 電子心霊だっけ? よくわからないけど。」


『タマは守護対象者のみ触れられるニャン。』


「なるほどね。それじゃあ、タマはエサというか、食べ物とかは必要なの?」


『必要ないけど食べることはできるニャン。嗜好品扱いニャン。』


「ふぅ~ん。難しい言葉知ってるんだね。」


『タマは何でも知ってるニャン。』


「それじゃトイレとかは?」


『タマはトイレに行かにゃいニャン。』


「昭和のアイドルかよ! じゃあ食べたものはどうなるの?」


『完全消滅するニャン。』


「ふぅ~ん。とりあえずタマはメンテナンスフリーってこと?」


『時々ナデナデしたり、コショコショしたり、抱っこしてくれないとダメニャン。』


「そっか~、タマは”構ってちゃん”なんだねぇ~。」


タマの返答がことのほか可愛らしく、思わずにやけ顔でタマの耳の後ろやほっぺを両手でワシワシしてしまった。


タマも”ブルルルグルルル”とネコのご機嫌タイムに発せられる”鼻歌”を奏でていた。




しばしタマと戯れ、気持ちが落ち着いたので、今後のことを考える。


突然異世界召喚され、右も左も分からない状況の中、タマと思わぬ”再会”ができた。


直後、召喚の”ご同輩”である高校生組と決別し、トンズラすることになってしまったが、タマがいれば大丈夫。


与えられたスキル【誘掖の地図帳】でタマと一緒に異世界を色々楽しみたい。


年齢的にはちょっと早い気もするが、異世界でセカンドライフとシャレ込もう!


とりあえず最初はどう動くべきか。


まずはこの世界での生活拠点を見つけたい。


「タマ、今後の異世界生活の拠点をどこにしたらいいか考えたいんだけど。」


『どんなところがいいのかニャン?』


「そうだねぇ、まずは安全第一だよね。それと清潔な環境は大事だよね。病気とか怖いし。安全で綺麗な街が近くにある?」


『そんな街はこの世界にはにゃいニャン。』


「ん? ないって言った?」


『そうニャン。日本基準で考えれば、この世界の街は危険で汚いニャン。』


「なるほどね。確かに日本は安全で清潔だもんね。」


「この世界の街はいわゆる中世ヨーロッパ的な感じなの?」


『そうニャン。』


「そうなると、ゴミや糞尿は外に投げ捨て的な?」


『そうニャン。』


「うぇぇ。そりゃダメだ。街に住むのはNGだ。」


(人がいる街に住めないのか。村とか集落ならまだましか? うぅ~ん、これは悩ましい問題だな。)


「街以外で日本基準で安全清潔な環境ってある?」


『あるニャン。』


「どういうところ?」


『無人島や密林の奥地、ダンジョン内のセーフティエリアとかニャン。』


「おっ? ダンジョンとかあるの?」


『異世界といえばダンジョンなのニャン。』


「オヤクソクだね!」


(結局、人がいるところは危険で不衛生なのか。)


「それじゃ【誘掖の地図帳】で最寄りのダンジョンを見せてくれる?」


『分かったニャン。』


タマのお返事と共に、目の前に半透明の画面が表示された。


どうやら【地図上プレビュー】機能になっているようで、洞窟の入り口みたいなものが目の前に表示されていた。


「これは【地図上プレビュー】機能でいい?」


『そうニャン。』


「これは凄いね。現地に行かなくても現場の様子がリアルタイムで分かるんでしょ?」


『そうニャン。』


画面を見ると、洞窟の入り口と思われる所に門があり、槍を持った兵士が数人並んで立っているのが分かる。


「ダンジョンの中の様子もわかる?」


『もちろんニャン。』


タマのお返事と同時に、画面はズンズンとダンジョン内に進んでいく。


人の歩く速さの数倍で進んでいく【地図上プレビュー】画面にかぶりついていると、車酔いのような状態になってしまった。


「うぷっ。タマ、悪いんだけど酔ったみたい。ちょっと画面を止めてくれる?」


『分かったニャン。』




酔い覚ましをするためしばし休憩。


タマを抱っこしながら拠点について考える。


(人がいないところに新たに自分だけの拠点を作っていくしかないのかな?)


そう考えると、特に難しいことはない。何もない所でいいからだ。


(いっその事、ダンジョンの一番奥とかでいいのかな?)


『ダンジョンの一番奥はダンジョンコアのある部屋ニャン。』


「ダンジョンコアとかあるんだ。」


『あるニャン。ダンジョンコアに触れるとダンジョンマスターになれるニャン。』


「ダンジョンマスターか、オヤクソクだね。」


「因みにダンジョンマスターになると、何か制約とか発生するの?」


『ダンジョンから出られなくなるニャン。』


「うぇ、それは勘弁。」


「制約なしにダンジョンを制御することってできる?」


『できるニャン。タマがダンジョンマスターになればいいニャン。』


「タマがダンジョンマスターになったら、タマがダンジョンの外に出られなくなるんじゃないの?」


『タマは電子心霊で実体がないので、問題にゃいニャン。』


「そっか、それはナイスだね。それじゃ、明日ダンジョンコアの部屋に行ってそこを僕らの拠点にしようか!」


『賛成ニャン。』


「因みにダンジョンコアの部屋を画面に出せる?」


『できるニャン。』


タマのお返事と共に、画面が真っ白に変わった。


よく見ると真っ白な部屋のようで、中央に虹色に光る水晶のような珠が浮いていた。


「この部屋の広さってどれくらいなのかな?」


『分からにゃいニャン。』


「タマがダンジョンマスターになったら、部屋を変更できるのかな?」


『分からにゃいニャン。』


「そうだよね、明日実際に行ってみるしかないよね。」


『そうニャン。』


「それじゃお楽しみは明日に取っておくとして、今日は明日の準備をすることにしようか!」


『何をするニャン?』


「日本に戻って買い物とか、買い物とか。あと、買い物かな。」


『買い物しかしにゃいニャン!』


「ふふっ。そうなるね。でも、日本に戻ると時間は何時になるんだろ? 真夜中だと買い物がしずらいな。」


『時間はこの世界と変わらにゃいニャン。』


「この世界と日本の時差はないの?」


『基本的にはにゃいニャン。』


「へぇ~、不思議っちゃぁ不思議だね。」


「太陽の位置的に今はお昼過ぎ辺りかな?」


『そうニャン。』


【地図上プレビュー】画面の右下を見ると【14:02】と時間が表示されていた。


(今から日本に帰れば、色々買い物ができるかな?)


(でも買った荷物をどうしよう。異世界のオヤクソク、無限収納的なスキルがあればよかったけど。)


(まぁ、焦ってもしょうがない。一旦落ち着いて考えよう。)


『それなら一度ホームポジションに戻ってジックリ腰を据えて考えるといいニャン。』


「日本に一時帰還する、か。そうだね、一旦落ち着こうか。」


(焦ってアレコレ動いても碌なことにならないしな。)


「それじゃタマ、ホームポジションへの帰還をお願いしていい?」


『了解ニャン。”ホームポジション帰還ニャン!”』


そう言ってタマが白手袋をした右手を上げ、キメ顔で招き猫ポーズをとると、風景が一変した。



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