5話
「ご、ごめん。」
心は急いで謝ってきたが俺は固まったまま体が動かなかった。
「…」
「えっと、トイレ借ります!」
心はこの空気に耐えられなかったのか俺の部屋から出ていった。
俺、ファーストキスなんだが。
いや、でもこれはカウントに入らないか。
柔らかかったな。
いや、なんだよ違ぇーよ。
どうすんだよ、これ。
とりあえずトイレに行くか。
「えっと、心…」
「…あ、こ、氷くん。さっきはごめん。」
「いや、俺も…ってかこれは罰ゲームだから、平気だろ?」
「続きは控えてもいいけど変な感じになるのは違くないか?」
「…そうだね」
――――――――――
氷くんはそう言ってたけど僕はファーストキスだよ!
しかも、氷くんと…
いや、これは別にだ。続きやろう!
「罰ゲームトランプやろう」
「結局やるのか?」
「僕が変な風にしちゃったけどゲームだもんね」
自分で言ってて少し傷つく。
「じゃあ、やるか」
氷くんは変わらない様子でトランプを引いた。
「あのさ、これはパスでもいい?」
「えっ?どんなの?」
また恐る恐るカードを見せてくれた。
「右隣にキス」
「…っ」
僕の顔が赤くなるのを感じる。
こ、氷くんとまたキスできるの…。
でも、これってほっぺとかだろうな。
「パスでいいか?」
「いや、ゲームだからやろうよ」
少し食い気味に答えてしまったが仕方ないと思う。
「えっ、まぁ、そうだな」
「…」
顔が赤くなるのを抑えるのはなかなか大変。
不意にほっぺに柔らかい感触が当たった。
「…っ」
ドキドキドキドキ
「ト、トイレ!」
僕はまたトイレに駆け込んだ。
「おい、心。ゲームが進まないぞ」
「…わ、わ、わかってるから少し待ってて少ししたら行く」
「わかった待ってる」
僕は手をほっぺに当てた。
ここに氷くんの唇が当たったんだ。
恥ずかしさと不意打ちと氷くんのカッコ良さにやられた。
「はぁあああ」
深いため息をつき自分を切り替える。
ゆっくりドアを開けて氷くんの部屋に向かった。
「じゃあ今度は僕の番だよね」
1番上のカードを引いた。
えっ、告白?
いや、これはでもゲームだし。でも、フラれたら…。
「どうした?」
「あっと、今日はもうおしまいにして寝ない?」
「なんだよ。カード見せろよ」
無理矢理カードを取られてしまった。
「えっ、告白?」
「このカードってこんな偏ってたっけ?」
「いや、そんなはずないけど。」
山札を全体的に見てみる。
変顔やビンタなど普通の罰ゲームだった。
混ざってなかっただけかな?
「おい。」
「なに?」
「罰ゲーム」
「えっ?」