5話
子奈を追いかけて走ったはいいものの曲がり角で見失ってしまった。
「俺、方向音痴だった。」
何も無い場所をただひたすら走った。
気づけば3時間も走ってる。
そんなことを思っていた時目の前に子奈が見えた。
子奈も無我夢中で走り続けていた。
でも、さすがに疲れて公園に入った子奈を追いかけ自動販売機で飲み物を買い子奈に渡した。
「はぁ、はぁ、…あり、がとう…。」
「はぁ、はぁ、はぁ、別に、はぁはぁ…えっと、さっきはあの…」
「はぁ…いえ、こちら、こそ…はぁ逃げてしまってすみません…。」
俺は子奈から少し離れて座った。
でも、子奈は俺との距離をつめ座りこちらを見る。
ゴクリと生唾をのみこむ。
「…子奈?」
子奈は俺の方に顔ごと近づくと俺の髪についていた葉っぱを取った。
その時近くから心の声が聞こえた。
「俺、帰る。」
誰かといるのか?と思いその場所に近づくとしゃがんでうつむいてる悠斗がいた。
「大丈夫か?」
ばっと顔を上げ口をパクパクさせる。
「悠斗、落ち着けって」
「…えっと、そのあの」
「ゆっくりでいいから説明して」
「ふぅ、えっと氷くんが子奈ちゃんの後を追って行ったあと僕と心くんは図書館で勉強しててその帰り道で2人を見かけてついて言ってここで見てた。」
「それで心は?」
「心くんはえっと、なんか雰囲気が変わってそのまま帰って言っちゃった。」
「そうか、じゃあ悠斗。子奈を家まで送って行ってくれないか?」
「いいよ。」
悠斗の返事を聞いてから心を追いかけに行く。
「心ー、心、どこだー!」
叫びながら心が行ったであろう方向を探す。
曲がり角で発見した。
いつもの雰囲気ではなく前にもあった人格。
「心!」
俺の方を見る。
「なんの用?」
「用って程じゃないけど心を探してた。」
「俺を?嘘だろ。」
「ほんとだ」
すると心の顔が緩んでいった。
「僕、あれ?子奈は?」
「子奈は悠斗に任せてきた。悠斗がお前の様子がおかしいって言ってたから探してたんだ!」
「僕が?」
「そうだよ、大丈夫そうなら良かったけど」
「あっと、いやなんでもないよ。」
「言いたいことあるなら言った方がいい。」
「えっと、氷くんとこ」
「氷くん、子奈ちゃん送ってきたよ。」
タイミング悪く悠斗が来てしまった。
「じゃあね、氷くん。」
そしてゆっくりと帰って行った。
俺は何も出来ずに心の後ろ姿を眺めていた。