2話
次の日の朝。
「はぁー、眠。」
ベットから起き上がり、背伸びをしながら時計を見た。
時計はまだ6時を指していた。
俺が意図的に、妹のために!早く起きた訳では無い、自然と目覚めたのだ。
はぁー、機嫌直してくれるかな?
階段を降りていると、リビングから光が漏れていた。誰だ、おかんか?早起きだな。
いつも、7時くらいなのに。
洗面台で顔を洗ってから、ドアを開けるとおかんではなくソファに海が寝ていた。
ソファに近づくと海の目が赤く腫れていた。
ごめんな...。俺のせいだよな...。
洗面台でタオルを水で冷やし、海の目の上にそっと置いた。それから、俺の部屋にある毛布を1枚持ってきて、海にそっとかけた。
そんな顔を見た俺は、自分の財布の中身を確認、1000円札が5枚。
毎月のお小遣いが3000円だから5000円ぐらいなら...。うん、海のためだ...。
財布を閉じ全部使う覚悟を決めた。
海の近くに座り、スマホで今日行きそうな場所を確認した。
ファンシーショップとかおもちゃ売り場か?人形欲しがってたしな
必死に探してると急にドアが開き
「おはよー。早いね。海はいる?」
その声にびっくりして時計を見ると7時になっていた。1回呼吸を整え冷静をよそおい、
「ここで寝てる。おかんと寝たんじゃないのか?」
「一緒に寝てたわよ!でも、朝起きた時いなくて。」
「海、夜に泣いてたか?」
「まぁ、そうね。だいぶ泣いてたわ。」
「そうだよな、あやまらないと」
俺たちの声が大きかったのか、
「う、うん?ママ?お兄ちゃん?」
タオルをどかし、目を擦りながら起き上がった。
こちらを見た途端、俺に抱きついてきた。
「お兄ちゃん!買い物行こ!」
目は赤いままだか元気よく言った。
その言葉に返答しないと、とまた冷静をよそおい言った。
「ご飯食べてからな!」
みんなでご飯を食べ、着替え、準備が整ったところでお母さんに電話がかかってきた。相手の表示を見るなり、俺と海はもう靴を履いて玄関に突っ立っていたが、おかんは俺に「ちょっとまってて」と言うとリビングに入っていった。
リビングからかすかに聞こえるおかんの声を聞いた。
「もしもし、はい、そうです。」
「そんな...。本当ですか?」
「はい、わかりました。すぐ向かいます。」
声が聞こえなくなって数分後リビングから涙目のおかんが出てきた。
「どうしたの?」
不安そうにおかんを見つめる海。
「おとんか?」
俺の問いにこくんと頷いた。
「お母さんこれから病院に行ってくるから2人で買い物行ってきて!」
海を心配させないように明るく笑顔で言うおかんの目はとても不安に満ち溢れていた。
「うん!行こお兄ちゃん!」
「ああ。」
玄関でおかんに手を振ると、ドアを開き、外に出た。
海の手をしっかり握り、ショッピングモールへと向かった。
「海、欲しいものあるの!」
「何が欲しいんだ?」
「ウサちゃんのぬいぐるみ!」
「うん、わかった。ウサちゃん買おうな!」
朝調べた、ぬいぐるみが売ってるファンシーショップに入り、海にどのウサちゃんがいいか聞いていると後ろから声がかけられた。
「こ、お、り、くーん、可愛いぬいぐるみが好きなのか?」
「いや、俺じゃない!妹がな!」
後ろを向きつつ、ついツッコんでしまった。
「なんだ、ざーんねーん。」
この声どっかで、でも顔が全く知らない人。
「どなたですか?」
「会ったの2回目だぜ。覚えろや!まぁいい、俺は神並 心だ。」
悪そうな笑顔で言った。
「あれ?じゃあ、性格っていうか喋り方も違くね?」
まぁ、1回しか会ったことないけど...。
こんな感じだったっけ?
「お兄ちゃん、どうしたの?友達?」
今までぬいぐるみを見ていた妹が聞いてきた。
「あ、すまん。なんでもないから、買い物続けようか。」
「うん!このウサちゃんがいい!」
「わかった!これを買ってくるから、ここから離れるなよ!約束な」
「うん!」
ウサちゃんを買い、さっきの場所に戻ると妹がいなくなっていた。
誘拐?...。あいつ、ふざけんな!
いくら俺の妹が可愛いからって!
イラつきながらファンシーショップを見て周り、海がいないかを確認してからショップを出た。
すると、ショップのすぐ目の前のベンチに座り、飲み物を飲みながら話している2人がいた。
「お兄ちゃんね、海のことすっごい好きなんだよ!」
「そうなんだ、いいお兄ちゃんで羨ましいな」
さっきの心とは違く、優しい笑顔で妹の話を真剣に聞いているようだった。
いや、とりあえずそれは置いといて
「探したんだぞ、動くなって言っただろ!」
「ごめんなさい、喉乾いて、うう」
目を抑えて泣いてしまった。夜も泣かせてしまったのに...。
「違う、妹さんのせいじゃないんだ。僕が君について聞こうとして...。ごめんなさい。」
ベンチから立ち上がり、90度くらい頭を下げた。
俺は少し慌てたが
「いや、俺が妹のことしっかり見てなかったから、ごめん。頭、あげて!」
「でも、」
「いや、本当に俺の方が悪いから。海の様子をしっかり見てなかった。」
海の方へ近づき抱きしめた。
「う、うう、」
「海、ごめんなあそこで待てって言った俺も悪かった。一緒に行動すればよかったよな。」
「海、こそ、ごべん...。」
「海?」
俺におっかかって寝てしまった。
まぁ、早起きしたもんな。
そんな俺たちをまたあの優しい笑顔で見ていた心に
「悪ぃ、ほんとにごめん、ありがとな」
と言うとその笑顔のまま
「いや、ほんと僕のせいでもあるしプレゼントとか荷物持つよ!」
「本当にありがと」
自然とお礼が言えた。
まぁ、お礼は言わないとだけど。
「心、そういえばさっき雰囲気違かったんだけど」
「あ、あ、えっと、なんでもないよ!」
「本当か?ならいいけど。」
「うん、大丈夫大丈夫!」
そんなこんなで家に帰ってきて、心に鍵を開けてもらい、プレゼントとかも中に入れてもらった。
「心、ほんとありがとな。次会うときはなんかおごらせてな。」
「いや、僕は...。」
心がフリーズした。
「おい、心?大丈夫か?」
「あ、ああ、平気さ。心はお前の家に遊びに来たいと思っている。また、よろしくな!」
あれ?また、心と違う。けど...。
「わかった。じゃあ、またな」
「ああ、また。」
心が帰ったあと、ソファに海を寝かせておかんを探した。
小さな声で
「おかんいるかー?」
どこを見てもおかんはいなかった。
まだ帰ってきてないか。
そんな時玄関の方から音が聞こえた。
玄関に向かうと俺の荷物の中のケータイが鳴っていた。
表示を見ると
"おかん"
すぐに電話に出た。