5話
保健室に着き心を椅子に座らせた。
俺は湿布を探し出し心が捻った右足に貼るために靴下を脱がそうとした。
「ごめんね、僕が怪我したせいで無駄に体力を使わせて。」
「いや、友達が怪我してたら助けるだろ普通。」
そういった俺に心は照れた顔でニコッと笑った。
初めて見たその笑顔に男だけど少しドキッとした。
いやいやいやと首を振り冷静に心の足に湿布を貼った。
「よし、心背中に乗って」
「えっ、歩けるから大丈夫だよ。」
「いやダメだ。早く乗れ」
「う、ん」
渋々俺の背中に乗っかった。
そのまま保健室を出て昇降口に向かおうとしたら階段の収納スペースの中がキラッと光った。
なんだと思い近づいて見てみるとそこには生徒会バッチがあった。
「やった!バッチだ!」
心をおぶっているのを忘れめちゃくちゃ喜んでいたら後ろから心が
「どうしたの?氷くん。」
はっと気が付き持ち前の冷静さを取り戻し
「いや、ちょっと嬉しいことがあっただけでなんでもない。」
そっとバッチを手に取りズボンのポケットに入れた。
「じゃあ、行くか。」
「うん!」
昇降口を出ると子奈と悠斗がいた。
「心くん大丈夫?」
「大丈夫だよ。」
「痛い…?痛いですよね!ごめんなさい」
「悠斗は落ち着け、大丈夫だから。それより椅子もらって来てくれないか?」
「わかった、私が借りてくるね」
今は借り物競争の真っ最中だ。
そんなことを思っていると前から同じクラスの女子が紙を持って走ってきた。
「借りていい?」
「えっ?」
心を指さし女の子は心をおんぶして走っていった。
「借り物競争じゃなくて借り人競走じゃん。」
心は驚きながらもすごい勢いで走る女の子の肩にしがみついていた。
1位にゴールしたのはあの女の子。
お題は
『かわいい子』です!
確かに心は中性的でかわいらしい顔立ちをしている。
いや、そんな場合じゃない心を取り戻さないとだった。
ゴールまで向かい女の子から心を返してもらうとちょうど子奈がパイプ椅子を持ってきた。
グラウンドがよく見える場所に置き、心を座らせた。
「本当にありがとう。優しいところ変わってないね。」
さっきの事もあり顔を隠しながら言われた。
「えっ?」
最後引っ掛かるような言い方だった。
また俺忘れてる?記憶喪失か?