3話
「話がある。」
沈黙を破ったのはゆまりだった。
俺は生唾を飲み聞いた。
「…何?。」
「僕本当は男なんだ!…」
俺らは驚きすぎて声が出なかった。
男宣言をしたゆまりはとても真剣だった。
かろうじて出た声は
「男…?名前って本名?」
かろうじてでもなかった。
ゆまりは俺の言葉を聞き、また口を開いた。
「僕は悠斗、長達悠斗。」
「悠斗…っえ、もしかして同じ小学校だった…。」
「うん、そうだよ。あの時氷くんが助けてくれなかったら僕は…。」
「俺は助けられて良かったと思ってる。」
やっと思い出した。今まで感じていた大事なことってこれだったのか。
俺は小学生の時とても正義感が強く、警察官を目指していた。
そんなある日、みんなが帰ったあとの昇降口に3対1の人の影が見えた。
1人の方はしゃがみこみ震えていて、3人の方は寄ってたかって文句を言ってる。
「泣き虫、悠斗ちゃん。」
「弱虫だな。」
「バーカ!女みてぇ」
「や、やめてもう言わないで、やだ。」
「おい、何やってんだ!いじめは良くないぞ!」
俺は悠斗の前に立ち上級生のいじめっ子に言った。
「うわ、2年3組の正義感だ。」
「やべー、本当に正義感強いんだな。」
そう言って俺の左肩をドンッと押してきた。
上級生との力差があるからかいとも簡単に倒れ、尻もちをついた。
「そんなもんかよ、正義感くん。ハハハ」
「ハハハハ」
「フハハハハ」
3人揃って笑いながら俺を蹴ったり、殴ったりした。
それでも悠斗の前に立ち続けた。
「そこでわ何してるの!もう下校時間す、ぎて…。」
俺のクラスの担任の先生だった。
いじめっ子3人は酷く説教をされていた。
俺たちはというと保健室で傷の手当をしてもらっていた。
怪我は痛いけど誰かを守るヒーローみたいで好きだ!
保健の先生は「大丈夫?」と俺たちに問いかけた。
俺は大丈夫と答えたが悠斗はずっと泣いたままだった。
仕方がないと俺の家に悠斗を連れ、悠斗の親におかんから事情を説明してもらい泊めることにした。
それからというもの悠斗は俺のあとを付いて歩きまわった。
3年になり悠斗は転校してしまったがまさかゆまりが悠斗だったなんて。
「僕はその後違う小中学校でもいじめられた。僕の友達は氷くんがだけだったんだ。」
「そうだったのか。」
「この前、発作が出たのも昇降口でいじめられた時のことがフラッシュバックして…」
助けられてはいなかったのか。俺もその後色々あって陰キャになったけど。
「女装は氷くんにまた会いたかったから無理言って親から先生に伝えて貰った。話せたのは最近だけど、女の子ならって…。」
「普通に来れば良かったのに!俺絶対親友になれる自信あったのに。」
「…っ。」
ゆまりいや悠斗は下を向き少し傷付いた顔をしていた。子奈も。