2話
アーチ状になった柵の左側にあるチャイムを押した。
しばらくたって
「はーい、どなたですか?もしかしてゆーくんの友達?今あげるね!」
という甲高くあざとい声…。そして疑問に思った。ゆーくん?
疑問を抑えとりあえず、柵の扉を開けてもらい、ドアから玄関に入れてもらった。
ゆまりのお母さんは俺たちを微笑みながら見た。
でも、そんなことを気にせずに話始めた。
「ゆまりは大丈夫ですか?今、あっても…。」
お母さんは遮るように言った。
「ごめんね、ゆーくゔん、ゆーちゃんはえっと」
ゆーくんと言いかけ咳払いをしてからゆーちゃんと続けたのに結局えっとで終わった。
なんか怪しいし、隠してるな。
「ゆまりは家ではくん呼びなんですか?」
疑問を聞いてみた。
心も疑問に思っていたのか
「確かにそうだね。」と俺の意見に乗ってきた。
子奈は首をかしげていたが、お母さんは目が泳いでいた。
「と、とりあえず今日は…。」
そう言っているお母さんの後ろから短髪で髪が濡れているのをタオルで拭きながら少年が降りてきた。
「母さん、ドライヤーどこ?」
少年は俺らを見るなりタオルで顔を隠し元来た道戻って行った。
どっかで見たんだよな、あの顔…。
「あ、あの子はゆーくんだよ。ゆーちゃんの弟。」
冷や汗をかきながらそういうお母さんにこれ以上責めたら可哀想だなと思いゆまりにプリントを渡してくださいと言って帰った。
「ゆまりちゃん部屋にいたのかな?」
子奈の言葉を聞き俺は
「そうだな。」とだけ言った。
次の日ゆまりが登校してきた。
「おはようゆまりちゃん。」
子奈が端の席からこっちまで来て言った。
「お、おはよう。」
いつものゆまりとは違い笑顔が引きつっていた。
すかさず俺も
「ゆまり、おはよう。」
と言うとまた引きつった顔で
「おは、よう」
と言った。
と、子奈が
「ゆまりちゃん、昨日弟くんいてびっくりしたよ!ゆまりちゃんは部屋にいたの?」
ゆまりが固まりロボットみたいな動きで教室を出ていってしまった。
その後、授業が始まったが戻ってくることはなく放課後。
「私、変なこと言っちゃった、かな…。」
と落ち込む子奈を心と俺で励ましながら部室である屋上に向かった。
ドアを開けると4つ向かいあわせで置いてある席の内の1番奥にゆまりが真剣な顔をして座っていた。
俺たちはみんなカバンを下に落とし空いてる席に座った。